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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
五話:『宇野中 撫子』のタマゴアイドル:前編
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――私は好きな人がいる。

その人の事を考えると、私はすべての集中を失う。

これが、本物の恋だ。

私の心を奪う王子は、あの人が愛おしい。


私は『宇野中 撫子』、宇野中グループの令嬢として育ってきた。

生まれは名古屋、大きな屋敷で生まれた。

重化学工業にに、ショッピングセンター、携帯電話の会社や、ファミレス等を傘下に持つ東海地区屈指のグループ企業。だけど末っ子の私は、本社のある名古屋から三重の家に預けられた。

言ってしまえば、私は家督争いで弾かれた。


そんな私が通っているのは、普通の高校。

『采女第三高校』という四日市にある公立の高校。


通った理由は、単なる家督の問題だ。

私のことを家督争いに参加させないために、私はあえて普通の学校に通わせたのだ。

遠ざけられた私は家督を争う兄弟をよそ目に、あえて全く関係ない三重のこの学校に通っていた。


だけどそれが良かったのかもしれない。

私は、二学期に一人の男性と運命的な出会いをした。

最初の出会いは、一年の秋の体育祭。

私はそこで怪我をしてしまう。怪我をした時に、保健室に彼がいた。

彼は保健委員だ、だけど体育祭の保健室には保険の先生が常にいない。

彼が保険の先生の代わりに、私の看病にあたってくれた。


二回目の出会いは、一年の冬の終業式。

私は方向音痴で学校の中を迷っていた。

迷っていた私が、そこで彼に再び出会った。

彼に助けられて、私は終業式の体育館にたどり着けた。


三回目の出会いは、元日だ。

元日の初詣は、グループ総出で熱田神宮に行くのが宇野中家の決まりごと。

だけど、今年の元旦は父と母が海外ということで、初詣に家族が集まらなかった。

四日市に残っていた私は、近所の神社の初詣に向かう。

出かけた神社で、私は偶然にも彼に出会った。

そして、彼から写真を求められたのだ。


三度の出会いで、私は彼と少し話すことが出来た。


一年生も終わりに差しかかった一月のある日、私の登校の日。

セーラー服に黒く長い髪、私は後ろの座席でいつもどおり姿勢良く座っていた。


それから一ヶ月後、バレンタイン。

私は初めて、チョコレートを作った。

それは、彼のために作ったチョコレート。


私は、バレンタインの日に渡した。彼は受け取ってくれた。

これで、私は彼との恋が始まる。そう思っていた。

だけど三月のホワイトデーにはお返しはなかった。


それから二ヶ月後、私は二年生に、彼は三年生になった。

彼との距離は、相変わらず微妙なままだ。


四月の桜が散り始める桜道。この日は、晴れていた。

始業式も終えて、私はいつもどおり車で家に帰るところだ。

セーラー服姿で、私は車の窓から外を眺めていた。


「撫子お嬢様、家に帰れば空手の時間です。

更には夜六時から、学習塾になっています」

運転手が、前から声をかけてきた。


「わかりました」

いつものことだ、私は自分の予定を理解していた。


そんな時、私は車の窓からあるものが見えた。

「雷?」見えたのは雷。

だけど空は晴れ渡っていて、雨雲が見えない。

「どうかされましたか?」前の運転手が聞いてきた。

「いえ、少し止めてもらえますか?」

私がそう言うと、車がその場で止まった。


その場所はたまたま神社だった。

だけどその神社は、人の気配がない寂れた神社だ。


「お嬢様?」運転手が不安そうに顔を覗かせた。

「ちょっと行ってきます」

私は目についた、あの雷が気になって車を飛び出した。


廃神社に続く急勾配で、高い階段を登っていく。

私は一直線に、少し崩れた神社の階段を登っていく。

足場がかなり悪く、石の階段が崩れていた。


それでも私は走って登っていた。

そのまま、ようやく頂上にたどり着いた。

たどり着いた頂上を見て、私は驚いていた。


「女の子?」そこにいたのはひとりの女。

頭にヘッドドレスをつけた女は、裸で大きなタマゴを抱いていた。



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