055
そこにいたのは、見覚えのある少女だ。
黒い髪の少女は、穏やかな顔でこちらを向いていた。
穏やかな笑顔で、優雅にやって来る少女。
こんなオーラを出す少女は、この学校の中でも限られていた。
「宇野中さん?」
「はい、お久しぶりです。お二方」
宇野中 撫子とは何度も会っている。というより私のクラスメイトだ。
一年も二年も同じクラスメイトなので、私はよく知っていた。
そして、一年の時に同じクラスの恵も覚えているだろう。
「なんで、撫子が出てくるの?」
「ええ、あなたのことを調べさせてもらいましたから。
詰草さん、いえ……メグッポと読んだほうがよろしいですか?」
「えっ」いきなりそう言われて、恵は驚いた顔を見せた。
「撫子はどういうつもりなの?」
「はい、あなたがたには協力してほしいのです」
「協力って、これからシエルはバイトなので……」
「ファミレスのバイトですよね、『ケサト』の。
残念ながらバイトは今日、休んでください」
「な、なんで勝手に決めるのですか?」
「『ケサト』は、宇野中グループのファミレスです」
撫子は不敵に言っていた。そのままスマホを、取り出して電話をしている。
約一分電話をしていると、撫子がこちらを向いてきた。
「これで、あなたの用事はなくなりましたよ」
「シエルたちが、行くと決まったわけじゃないですよ」
「私は言いましたよ、ちゃんとあなた『がた』と」
「そうではないです、なぜ撫子がここに出てくるのですか?」
「昔のよしみですよ。それに、あなたたちは残念ながらゲームをやっていますから。
『タマゴアイドル』という名前のゲームを」
「あっ」撫子が不敵に笑いながら、こちらを見てきた。
その姿は優雅というより、悪女に近い。
「あなたもそうなのですか?撫子?」
「ええ、私もです。だからこそ、あなた方には協力して欲しいのです。
私はカクイドリが許せませんから」
ゆっくりと、私たちの前まで歩いてきた撫子。
「私の復讐に協力してくれませんか?『メグッポ』さんと『シエル』さん」
撫子は、そう言いながら私たちの前に手を差し出していた。
心配そうな顔で、恵がじっと私を見てきた。
「どうするの?」小声で聞いてくる恵。
「シエルに任せてください」
私は、そう言いながら顔を上げた。
恵は私の後ろに隠れて、撫子を見ていた。
「シエルと恵のことは、どうやら調べているみたいですね」
「ええ。まさかあの時、車に乗ってきたのがあなただとは思いませんですけどね。
シエルさん、あなたのことは苦労しましたよ」
「それはいいです、ただあなたたちのことをシエルたちは知りません」
「まあ、二年連続同じクラスだというのに知らないのは悲しいです」
「シエルが知りたいことは、あなたたちがどうして『タマゴアイドル』のことを知っているのか。
そのことを話してくれなければ、協力も何もできないわ」
「まあ、それもそうですね」
急に、驚いた顔で両手を合わせた。
「では、お話しましょう。私のこれまでを。
ですが場所は移しましょうか、ここでは目につきます。私の家に来てください」
そう言いながら、撫子は深々と一礼して玄関の方に歩いて行った。




