052
あれから三十分、私は駅前近くのハンバーガーチェーンにいた。
私とテーブルを囲んで、前には恵がいた。
ゲームの後、変身をしていないので私も恵もセーラー服姿。
同じ青いスカーフをして、テーブルを囲む。
夕方という時間から、賑わう店内。
『タマゴアイドル』を二人でかなり遊んだ。
「シエルは、こういう所によくくるの?」
「同性の友達があまりいないです」
「そっか、ボクも同じだよ。でもすごかったね」
「グッド3200とか、ソロじゃ全然でないですね」
「おめでとう、シエル……だっけ?『メジャーアイドル』」
「はい、タマドル名はシエルです」
私はにこやかに言っていた。
「でも、シエルってそのままだよね」
「シエルはやっぱりこの名前が大好きです」
「まあ、小学生向けだから」
「それでも、日本という文化は大好きです。恵もメグッポですね」
「そうかな、へへっ」
私の言葉に、恵は恥ずかしそうに頭をかいていた。
「それにしても、こうして話すとシエルは日本語上手だね」
「うん、アニメで学んできました。幼い頃から日本語のアニメも見ています。
それに、ママも日本で暮らしていたからかなり詳しいですよ」
「なるほどね~、ボクは外国行ったことないから憧れるな」
「シエルのところは、日本に少し近いかな。アムステルダムだし」
「アムステルダム?」恵には、どうやら名前がピンと来ていない様子だ。
「一応、オランダの首都なのです」
「おお、すごいね」
「そうですよ、地元はすごいです」
私は胸を張って威張ってみせた。
「自慢?」
「オランダも、アムステルダムの街も大好きですから」
「いいな、単純に自分の故郷に自信が持てて」
「恵はこの街が嫌いですか?」
「ボクの出身、となりの鈴鹿だよ」
苦笑いをしながら、恵はジュースを飲んでいた。
「アムステルダムと鈴鹿、全く違うところで生まれた私と恵がこうやって友達ですよ。
世の中は広いですね」
「だねっ。シエルがいい子でよかったよ」
「私たちはトモダチ、タマドルトモダチですよ」
「そうだね。仲良くなれそうだよ」
恵は私の前で笑ってくれた。私もそんな恵と仲良くなれそうだ。
「シエルは、どうして日本に来たの?」
「それはアニメを学ぶため……です」
言っておきながら、私は大事なことを思い出した。
私の表情はダイレクトに、曇っていた。
「ん?どうしたの?」私の顔が曇ったのを、恵は見逃さなかった。
「いやっ、その……」
「何かあったの?話ぐらいは聞けると思うけど」
「あの……」私は意を決っして自分に置かれた現状を、口に出した。
「私、今度の期末試験で成績が低かったら退学させられるのです」
「え?そう」悲しげな表情を見せたメグッポ。
「それで今、勉強しているんだけど。全然……成績が上がらないです。
頭の悪い生徒会長って、おかしいですね」
自虐的に、私ははにかんでいた。
それを見ていた恵が、急に私の手を掴んできた。
「ねえ、一緒に勉強をしない?一応ボクは頭がそれなりにいいと思うから」
恵が一言、私に言葉を投げかけた。




