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『6月15日』
あの日から、一週間以上が過ぎた。
文化祭のメイド喫茶は、虎太郎が用意してくれたメイド服で私は接客した。
二年C組のメイド喫茶は評判が良く、クラス部門で全クラス中二位の評価だ。
楽しい祭りが終わると、すぐに日常生活が戻ってきた。
そんな私は、いつもどおり二年C組の教室にいた。
そして数学の授業が行われていた。
(日本の授業はとても難しいです)
私は真剣な顔で、授業を聞いていた。
これでも私は、生徒会長だ。
無投票で決まった生徒会長だが、それでも学生の見本でなければいけない。
日本のアニメで、それも学んだことだ。
私は授業をまじめに聞きながら、女の先生が黒板に数式を書いていた。
一時間目の授業が、静かに行われていた。
「それじゃあ、次の計算を……カーネーションさん、行けますか?」
「はい」中年女性の数学教師に指名された私。
「ちょっと引っ掛けだから、気をつけて」
「はい」私は黒板の前に歩いていく。
ブロンドポニーは私だけなので、当然視線を集めた。
それに関しては、とっくになれているが。
「えと……この計算は。Yの値を代入してこの数字を二乗するから……」
「そうじゃないのよね」
私が書ききるまでに、数学教師は厳しい視線を私に投げかけた。
すぐさま、黒板で書いている私の方に近づく。
「さっきも言ったけど、ここはさっきの公式を使うの。
代入はその後、そういう引掛けなのよ。もう少し考えてね」
「はい、すいません」
私はしおらしい顔で、先生の言葉を聞いていた。
「もどっていいわ」
「はい」私は、ゆっくりと自分の席につこうとした。
そんな時、私は聞こえてしまったのだ。
何気ない一言を。
「カーネーション会長って、意外と頭が悪いのね」
それは、女の声でヒソヒソとした小さな声だった。
その言葉を聞いて、私の顔が引きつっていたのだ。
「うーん、そうだ。ひとつ、言い忘れたことがある」
そう言いながら数学教師は、急に教壇の上に紙の束を出してきた。
「これから抜き打ちテストだ」
不敵な笑みを浮かべて、テストという奇策を繰り出してきたのだ。




