040
冷たい風を感じる、この世界。
ここは河川敷だ、だけど私の魔法少女の衣装はボロボロだ。
それだけに、余計に冷たい風を感じていた。
私の三回目の『アイドルアピール』も成功した。
アイドルアピールの成功で、衣装が回復すれば厳しいサビの攻撃もなんとかしのげた。
ライブ終了と同時に、ライブにいたカクイドリは全て消滅する。
これがタマドルの力だと、イースターは力説していた。
ライブが終わった河川敷、私は両膝をついて呼吸を整えた。
「はあっ、はあっ、疲れたですっ」
「お疲れ、地方アイドル」
「地方アイドルって、シエルのアイドルランクですね」
「左様、だがまだ終わっておらぬ」
「ええっ、まだいるのですか?」
「奴がいる」
「奴とは?」
私は周囲を見回すが、カクイドリの姿は確認できない。
「いないですよ、カクイドリ」
「カクイドリではない、あれは間違いなく……」
「誰かいるです」
私は気配を感じて、上を見た。河川敷の上には砂利道がある。
そこの砂利道を走っていく少女が見えた。
「あれは?まさか……」
「追うぞ」
「うん」私は呼吸乱れたまま、ゆっくりと走ろうとした。
だけど、次の瞬間起き上がった体を針で刺されてかのような痛みがあった。
「いやああああっ!」
足を一歩前に出しただけで、体に痛みが走った。
思わず声を上げて、顔を歪ませた。体を走らせることができない。
外傷はないのに、全身が痛い。
「これだからライブは……したくない」
走れない私は追いかけるのをやめて歩くしかなかった。
顔を歪め、ようやく河川敷から階段を登る。
「追いかけぬのか?」
「とにかく、ダメージが大きい。一回帰るしか……」
私は近くに置いた自転車まで、なんとかたどり着いた。
「あら、あなたは?」
そんなとき、私は聴き慣れた声を聞いた。
その声の方に振り返ると、真っ黒い髪の清楚な少女がピンクの着物姿で立っていた。
そして、彼女の背後には一台の長くて黒い車が止まっていた。




