039
なんとか曲は、サビまで持たせた。
サビの攻撃が激しすぎて、私の顔がゆがむ。
魔法少女の衣装は、左足のブーツとドレスのスカートがボロボロになっていた。
ドレスの上半身は、残っているけどかなり破けていた。
間奏になると、口が勝手に動かなくなって喋ることができる。
私は肩で息をしながら、カクイドリを見ていた。
数は半分に減っただろうか。だけど私の衣装はボロボロだ。
「もたないっ……はああっ、はあっ」
「こいつは数が多すぎだ。数を見誤ったようだ。
こういう時こそ、友達とデュオでも組めば楽なのだろうが」
「次のサビで総攻撃をくらったら、衣装持たないです」
「わかっておる。おそらくそこまでは仕掛けないはずだ」
喋るカード、イースターもじっとカクイドリを見ていた。
「サビまで持つのだよな」
「うん、サビまではさっきと同じならなんとかなりそうです」
「なら、勝機はある」
「あるって?どういうことですか?」
「『アイドルアピール』だ。これにかけるしかない」
「『アイドルアピール』?ライブモードでも、あるやつですか?」
「そう。特定のポーズのシルエットが出るから、それに合わせてポーズを取るアレじゃ。
サビの時に空間を描けば、目の前にでるポーズがあるから……」
(でるポーズを……)
私が喋ろうとした瞬間に間奏が終わり、曲が始まった。
すぐに玉が出てくる。私はタッチして、カクイドリを沈める。
確かに、二番も最初は玉が出てくる数は少ない。
「そのポーズと同じポーズを取ればいい。うまく成功すれば……」
イースターが、いいながらも私はダンスを踊る。
踊りながら、玉を弾く。
曲のテンポが上がり、激しくなる。
「そろそろサビじゃ。四角を描けっ!」
そういうと、私の前には玉がやはり四つ一気に現れた。
(四角を描くですっ!)
玉を無視して、私は四角を描く。玉が消えると同時に、カクイドリが襲いかかる。
宙に四角を描くと、鏡のようなものが出てきてカクイドリを押さえつけていた。
その鏡がポーズを取っていた。
立ったまま、右手でピースをするポーズ。左手は腰に手を当てて、足を開くシルエット。
そのシルエットが、そのまま私の方に迫って来る。
私はポーズをとった、が、逆だった。
「逆じゃっ!」
イースターの言葉で、慌ててポーズを直そうとしたが間に合わない。
シルエットが私を突き抜け、カクイドリが私の衣装を切り裂いていく。
(ううっ!)顔を歪めて声にならない悲鳴を上げた。
「チャンスは三回、あと二回できる」
イースターの言葉を、私は返事することなく四角を描く。
今度は床に座って足を組んでいるポーズか。
私はその場に座って、同じようにポーズを取る。
(これでっ!)
足の位置を見た目から、反対にして位置も変えた。
迫って来るシルエット、私の体にポーズがしっかり重なった。
「よくやったのじゃ!」
すると、『だいせいこう』の文字が見えて、私の体が光に包まれた。
そして、損傷していたドレスのスカートが修復されていく。
心なしか、私の体にあった痛みも和らぐような気がした。
「よし、後一回。成功させるのじゃ」
私は再び立ち上がって、指で四角を描いた。
すると、そこに出てきたポーズを見て私は嬉しい驚きがあった。
(このポーズは、アレですねっ!)
私はダブルピースをして、笑顔を作っていた。




