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~~スクランブル工業地帯:ソロ『シエル』~~
私は、イースターを拾って一ヶ月になる。
だからリアルライブはよく知っていた。
そして、ここはスクランブル工業地帯。
周りには工場のタンクや、パイプが無数に広がっていた。時間的には夕暮れだろうか。
夕日に、工場の煙突が赤く輝く。
私がいるのは、工場の中にあるパイプの上だ。
ここもライブ会場ってことだろうか。
かなり高いけど、落ちたらかなり痛そうだ。
「いかんな、多いぞ」
「うん、うかつだったですね」
「それでも、ライブが終われば全てを倒せる。なんとか衣装を死守するのじゃ」
私の前には、無数のカクイドリ。この数を見るの初めてだ。
羽を羽ばたかせて、こちらを伺っていた。
「でも、曲が流れたらやるしかないですね」
「その通りだ、理解が早くて助かる」
「シエルは踊りが得意な魔法少女だから、負けないっ!」
そう言いながら、工場の中にあるスピーカーから曲が流れていた。
自然と、私の口が動く。ライブモードは全て勝手に歌う仕様らしい。
そばにある玉を弾くことで、カクイドリを退治できた。
(シエルのコーデを、壊させたりしない)
玉を見ながら、私はダンスをしていた。
曲は初めてでも、この曲はスローテンポだ。
やることは、ダンスをしながら玉を触れることで何にも変わらない。
「しかし、シエル。気をつけろ。数が多い。
どこかで曲のテンポが上がるかもしれん」
イースターが声をかけながら、私は歌ったまま返事をした。
それでも、ダンスの手を止めない。
曲はサビに近づいていく、体をひねりながら私は踊る。
そんな私は一瞬、はっきり見えた。少し遠くの煙突に一人の人間が立っていた。
(人?)
「バカっ、遅れたぞ」
一瞬のことだ。私は初めてライブの中にいる見る人を見つけてひとつのダンスが遅れた。
すぐさま、カクイドリが一匹私のドレスのスカートに切り込んでいく。
(ううっ!)
ドレスのスカートが少し破けた。
足に痛みがあるけど、私はひるまずダンスを続けた。
「さあ、愚かなるアイドルにカクイドリの力を……見せるですっ!」
そして、声が聞こえた。煙突の人間が話した言葉だろうか。
それと同時に、曲がサビに変わった。
(えっ!)次の瞬間、同時に四つの玉が私の前に現れた。
私は必死に、全部を触ろうとするも触ることができない。
「まずいぞっ!」
イースターの叫び声も虚しく、カクイドリが次々と私に襲いかかる。
(いやああっ!)
悲鳴にならない声を上げた。
歌い続ける口は、衣装が切り裂かれても止まらない。
ドレスの前についていた赤いリボンが無残に、切り裂かれていた。
さらに私に追い討ちをかけるように、玉がどんどん出てきた。
出てきては触れられずに、次々と消えていく。
消える玉と同時に、カクイドリが襲ってきた。
「音符玉が集中している……まさか」
イースターが何かをつぶやいているが、私は踊るのに必死だ。
それでも、玉が消えるのに間に合う気配がない。
(早いっ!)
私の体が、さらに黒く覆われていく。カクイドリの爪が、私の衣装を容赦なく切りつけた。
そして、次の瞬間
(しまったっ!)私の右足のブーツが完全に破壊された。
素足があらわになり、私のダンスは完全に乱れていた。




