035
今日の私はご機嫌だ。
私は今、リアルの街を自転車で走っていた。
そして、変身していたので黒髪のツインテールだ。
童顔で、可愛らしい女の子シエルになっていた。
そして、ガチャでようやく揃ったコーデを着ていた。
「やっとキター、魔法少女っ!」
私はガチャで欲しかったアイテムが手に入った。
それはダイダイ色のドレスで、胸のあたりに大きな赤いリボン。
さらに、背中にも大きなリボン。ブーツは白くて翼がついていた。
頭にはティアラで飾られ、肩口が翼のように広がり、なんといっても卵が先端についた杖がセットだ。
杖は自転車の運転に邪魔になるから、背中に背負っているけど。
「SRの『魔法少女コーデ』です」
私の気分は自然と高揚していた。
なかなか揃わなかった衣装だけど、ようやく揃った。
周りの注目を集める派手な魔法少女で、街を走り回る。
「この時間が、シエルは大好きです」
魔法少女シエルになった私は、変身して自転車をこぐ。
派手なチェリーコーデを着て、四日市の街を走り回るのが好きだった。
私は、商店街を走っていた。
「あら、かわいいわね」
道行くおばさんが私に声をかけて、私が手を振っていた。
「今は散歩です」
「そう、今日もかわいいわね。シエルちゃん」
「シエルちゃん、今日は可愛い衣装だね。どこで買ったの?」
と、近くにいた別のおばさんが声をかけてきた。
「さっき、新しく手に入れました」
「そうかい、よく似合っているねぇ」
「ありがとうです」
私は笑顔を見せていた。そんな商店街の空気が、私は大好きだった。
(アニメで見た世界と同じ……)
私はいつもこの商店街でこの格好になると、感慨深くなった。
おばさんに話しかけられて、私は商店街をゆっくりと抜けていく。
「お主は、相変わらずここを歩くのが好きだな。目的を持っていないというか」
そんな時、声をかけてきたのはタマドルカードになったイースターだ。
「目的は果たしているよ」
「アニメの登場人物になりきる、だろ」
「うん、シエルはシエルのなりたい自分」
いつの間にか自転車を降りて、自転車を押しながら商店街を歩く。
そこは、私を可愛い女の子としてみてくれる周りの大人たち。
「神衣装の効果だろう。神衣装は八次元の力を用いて、着ている者の魅力を引き立たせる。
八次元のものは、人間がこの地球上に存在する限り可視化するのさえ難しい」
「でも、みんなには見えているよね」
「ああ、見えているのは八次元の中でも良いとされる部分だ。
モスキート音って知っているか?」
「なにそれ?」
「子供には聞こえて、大人には聞こえない音域。
つまりは八次元系の神衣装は見えるということだ。
そしてそれはとても可愛く、また美しく見える。
三次元で生きている人間が、絶対に作り得ない美しさ、造形美がここにある」
「おおっ、二次元っぽい設定ですね」
私は感心して、カードのイースターの言葉に耳を傾けた。
「だが、八次元の力も全てがいいものとは限らん」
「どういうこと?」
「朕は探さないといけないのだ、朕と同じイースターを」
「それは、あそこで話さない?祖国に一番近い場所で」
私はそう言いながら、商店街の奥を指差していた。




