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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
三話:『シエル カーネーション』のタマゴアイドル:前編
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~~カフェ『MENEMEN』~~


ここは、小さなカフェだ。

といっても背景で、人の姿が全くない。

『デビルド大通り』という大通りに面しているこじゃれたカフェだ。

これはもちろん『タマゴアイドル』というゲームの中の世界。


私がこのゲームの中に入れるようになったのは、五月だ。

五月のある日、私は河川敷で大きなタマゴと出会った。

そのタマゴは、目の前にいる赤と紫の斑点模様のタマゴ。

手足が小さく伸びていて、つぶらな目と口がある『イースター』という名のタマゴだ。


「ようこそ、タマゴ王国へ」

イースターは、小さな卵の体を前に倒す。

一応日本版で言うところの、お辞儀をしているのだろうか。


「イースター、久しぶりっ」

私は大きなツインテールの少女になっていた。

黒髪の大きなツインテールに、真っ黒な瞳。背も低くて小さくて子供っぽい。

少し肌の色も、日本人に近づけてか黄土色だ。


着ている服は、白いブラウスに黄緑色のミニスカート。

茶色のブーツに透明な羽が、妖精っぽい衣装。

このコーデは『フェアリードレスコーデ』、『グミキャンディ』のレア度C(コモン)だ。

なんといっても、透明な羽が私のお気に入りだ。

ここに来ると、私は『シエル』という『タマゴアイドル』になるのだ。


「ふむ、『シエル』か」

「まあまあ、それよりシエルのランクは?」

「現在『地方アイドル』じゃ。あと、3000グットでBランクの『メジャーアイドル』じゃな」

「3000グット?すごい時間かかるんですけど」

私は不満そうな顔を見せていた。


「まだBランクは楽じゃが、Aランクになるともっと上がるのがきついぞ。

ソロでは、そろそろ限界を迎える頃じゃ」

「アイドルユニットを組むの?」

「そう。アイドルユニットは、ほかの人の『タマドル名刺』でユニットを作れる。

『みんなヘンシン、みんなトモダチ』それがタマゴアイドルを目指す、基本スタイルだ」

「なにそれ?」

「忘れたのか、これだから困るのぅ。

いいか、自分のコーディネートが完成するたびに、フォトを撮る話はしたよな」

「うん」

「コーディネートが完成すると、タマドルカードが更新されて新しい五枚のカードも出てくる。

それがタマドル名刺だ。その名刺は自分で使うことはできないが、他人が使うことができる」

「それじゃあ、そのカードは意味ないよね」

「いや、意味はある。

自分は使えなくとも他の人が使えるから、友達とタマドル名刺を交換すればいい。

自分のユニットに、友達のアイドルが使える。

友達のアイドルとユニットを組めば……グッドをより稼ぎやすくなる」

「そんなシステムあっても……このゲームをやっている人は、見たことないけど。

それに、シエルたちと同じようなイースターつきのタマドル名刺じゃないと使えないんでしょ」

「そういうことになる。なにせ朕らは選ばれしタマゴなのだ?」

「ふーん、日本のタマゴのエリートなのですね」

「違うっ、タマゴ王国の卵だ」

「日本のタマゴ王国ですね」

私の言葉に、イースターはピョンピョン飛び跳ねて怒りを見せていた。


「おほん、とにかく友達を探すことが目的になるが……」

「そのうち、見つかるでしょう。気長に待つしかないですね。

日本のことわざでこんなのがあります。タマゴの上にも三週間」

「は?」イースターが困った顔を見せていた。

微妙な空気が流れたところで、イースターが最後に一言告げていた。

「そういえば、ガチャは引くのか?」と。



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