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――ここは、オランダにある国際空港のロビー。
黄緑色のワンピースを着た私は、夢に満ちていた。
大きなスーツケースを持って、短くしたブロンドの髪。
それは十五歳の時の出来事だ。
「いいのか、シエル?」
私の前には、ブロンズの髪が長い男性。
ブロンズの髭を生やした大人の男性。
背が高い白人で、ねずみ色のスーツを着ていた。
「シエルはやはり日本に行くです」
「そうだな、決めたのだからもう何も言うまい。日本は随分と遠いぞ」
「日本には夢があります、シエルの夢」
「シエルの夢は応援する」
「はい、そうです」
私は前にいる父に、微笑んでいた。
「日本は私もよく知っているが、一人暮らしは初めてだろう。
家事とかは大丈夫なんだろうな」
「大丈夫です、ママに教わりました。ママは仕事?」
「午前中は残念ながら抜けられない仕事が入ったみたいだ。
それよりシエル、あとはわかっているな。日本に留学させる条件を」
「はい、もちろんです」
私は胸にとどめていた。
それでも、口惜しそうな顔でパパは私を見ていた。
「本来なら、シエルは地元の学校に入ってもらいたかった。
父としては、家業の農家も考えて欲しかったが、それでも日本に対する憧れがあるなら止めはせん」
「パパ」
「だが、当たり前のことだけはおそろかにするなよ」
「わかっています、私は頑張ってオランダで夢を叶えられるように日本で学んできます」
私は、笑顔を見せていた。
『まもなく14:30発の○○航空……』
アナウンスが流れ、私は航空チケットを照らし合わせた。
「時間だな」
「はい、では行ってきます。パパ」
「ああ、行ってこい」
パパと最後、私は抱き合っていた。
それは私が決めた初めての選択。私はこの日、日本に旅立った――




