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彼女はボクを見るなり、にこやかな顔を見せた。
人気の少ないカフェに、彼女がゆっくりと近づいて来る。
ボクよりも少し肌の色が、茶色い。
肌の色は黄土系らしい。
「あなたも、このゲームに来たのね。初めまして、シエルです」
「シエル?」初めて聞く名前だ。だけど、なんか初めてという気がしない。
「あっ、そうそうこれを渡さないといけないですね」
そう言いながら、彼女が肩にかけてあったポーチから一枚の名刺をボクに見せてきた。
「これは?」
「『タマドル名刺』よ。アイドルを紹介するのに使うのですよ。
あなたはないの?」
シエルは笑顔で、ボクに手渡してきた。
「イースター、ボクのも?」
「あるに決まっておろう。右のポケットを探ってみよ」
そう言いながら、ポケットの中には何枚かのカードが出てきた。
「はい、じゃあこれ」
ボクは出てきたカードを、目の前のシエルに手渡した。
「ありがとうです」
「いえ、初めてなので」
「メグッポちゃんですね」
「うん」ボクが言うと、ボクからもらった名刺を見ていたシエルがボクの顔を見返す。
ボクもまた、シエルの名刺を見ていた。
「アイドルランク『メジャーアイドル』かぁ。すごいなぁ」
「そんなことないよ、シエルの知っている人はもっと上げているのです」
「シエルちゃん、結構友達いるんだ」
「そんなことない、シエルは初めて名刺を交換したのですよ」
「その割には、慣れているなぁ」
「何を言っているの、タマドルの魅力の一つ。
『あたしはタマドル、トモダチもタマドル』というゲームだと、シエルはそう思いますよ。
日本のゲームはやっぱりかわいいです」
「かわいい、日本のゲーム?まさか」
「そう、ちょっと話をしませんか?シエルのトモダチとして」
シエルは怪しく微笑んでいた。
そして、ボクは彼女の正体が理解できた。
急いで、ボクはログアウトをしていた。
ボクがゲームの世界から出る。
出た先は、学校近くのゲームセンター『SOGO』。
三階建てのゲームセンターの、三階にタマゴアイドル筺体があるからだ。
ゲーム筐体のそばには、一人の少女がいた。
それは、ブロンズ髪のポニーテール。
真っ白な肌に女性としては明らかに高い身長。
セーラー服を着ていて、胸の校章は『采女第三高校』のものだ。
青いスカーフの少女は、紛れもないオランダ人だ。そして、ボクは知っていた。
「あっ、生徒会長」
「お久しぶりです、メグちゃん。シエルはお願いがあってあなたに会いに来ました」
そこには、日本人ではない生徒会長がにこやかな顔で立っていた。




