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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
二話:『詰草 恵』のタマゴアイドル:後編
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027

隆聖の家の打ち上げ後に、ボクは家に帰っていた。

ボクの家は、ちょっとだけ大きな木の一軒家。

隆聖とは同じ中学だったから、わりと近所だ。


ボクの上の兄は、既に大阪で一人暮らしをしている。

ボクの下の弟は、今日はお泊まり会で家にいない。

両親は一階で、テレビでも見ているだろうか。


そんな家に帰ると、僕はそのままベッドに体を投げ出した。

セーラー服を着たまま、疲れた顔を見せていた。

どちらかというとシンプルな部屋の作り。

それでも、ベッドにはクマやネコのぬいぐるみが飾られていた。


「なんで、ボクだけなんだろ」

ボクはつぶやいていた。あのライブで、評価をされたのはボクだけだ。


「それは、お主は神衣装で変身したのだ。当然だろう。

みんな、未知のものに興味を持つ。可愛いものなら人気が、出るのは当然」

「イースターっ!」

ボクはスカートのポケットから、カードを取り出した。

いつもボクのそばで、じっとしていたイースターという名の喋るカード。

この声は、ボクにしか聞こえないらしい。


「イースターとは朕らの総称じゃ。朕には……」

「はいはい、ちゃんと名前があるんでしょ。いいから」

ボクはカードをじっと見ていた。

カードにはボクの変身後『タマドル』姿のアバターのボクが、描かれていた。

相変わらずのセクシーポーズで、やはり可愛い。

キラキラ輝いていて、自分ではないみたいだ。


「こんなに可愛いんだね、ボクって」

「それが、お主の望んだなりたい自分だろ」

「うん」

ボクは『タマゴアイドル』のゲーム筐体があれば、いつでも変身できる。

変身することで、冴えないバンド『ノットシステム』を変えた。

だけど、変身することで『ノットシステム』がバラバラになっていた。


「ねー、イースター」

「なんだ?」

「ボクはどうしらいい?」

「その前にどうしたい、自分の気持ちが見えていない」

「見えていないのかな?」

「それを聞こうとするだから、見えていないのだろう。

前から思ったのだが、お主はあのバンドに、何を求めている?」

「求めている?」

「何かあるのだろう、変身したい理由と」

イースターの言葉を聞いて、ベッドから立ち上がった。

そのまま窓側にある学習机の引き出しを取り出す。

そこには、三人で写っているプリクラの写真。


「ボクが『ノットシステム』に参加したのは、二人と音楽がしたい。

音楽と興味があったけど、それ以上に隆聖と、虎太郎と一緒にやりたかった」

「ならば、答えは出ているのだろう。ソロのアイドルデビューの話は、断るのだな」

「それは、断るよ」ボクはそこに、迷いがなかった。

だけど話が、ボクの知らないところで大きくなっていた。

まさか、昨日の今日でここまで話が膨らんでいたとは思わなかったから。


「なら、何に迷っている?」

「ボクが変身をすることで、初めから二つの感覚があった」

「二つの感覚?」

「すごく変われて嬉しかったこと、周りの注目を集めたこと。

それが一つ、ボクにとって嬉しかった変化。

だけどもう一つの変化が、ボクを迷わせるんだ」

「迷わせる?」

「バンドと少し違うイメージ。

あの派手で可愛い女の子的なイメージが、ボクらのバンドに合わないっていうか。

一応ほら、ボクのバンドって音楽性がパンクな方面だし。

『タマドル』の衣装でパンクな衣装はないの?」

「一応あるが、ガチャで」

「でも、一週間回っているけど何も出てこないよ」

「『ファストフローラル』では出てこんよ。ガーリィ系の衣装じゃない。

『ブルーストリート』のガチャだ」

「『ブル-ストリート』?なにそれ」

「ブランドの名前じゃ、前にも話しただろ。

ブランドごとに出るアイテムが決まっている。

確かR(レア)だから数十回で出るかもしれぬな」

「ええっ、あれ一回百円でしょ。一日五回までしかできないし」

「そうじゃよ、カード一枚あたり一日五回制限かけておる。

そうでないと、お小遣いを無駄に使うお子様もいるからな」

「むうっ、ボク子供じゃない」

「お主はまだ、未成年だろ」

「一応バイトだってしているし」

「まあ、気長に引くしかないだろう」

「うん、しょうがないね」

ボクは落胆の表情を見せた。


「衣装はいいとしても、今のお主が変身していることで注目を集めている。

やめてしまえば、お主たちのバンドはたちまち無名に逆戻りだ」

「うん」ボクは難しい顔で、カードを見つけた。


「どうしたらいいんだろう」

ボクはずっと迷っていた。

「どうしても聞きたいことがあるが」

「なに?」

「なんであの二人と組んだのだ?」

「それは……あのメンバーに入ったのは、ボクが三人目だからだよ」

そう言いながら、ボクは昔のことを思い出していた。



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