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土曜日なので、授業が午前しかない。
ボクらは校門で、三人『ノットシステム』が集まっていた。
そして、着いた先はとあるマンション。
その部屋は、とても大きい子ども部屋だった。
大きなベッドと、真ん中にテーブル。
立派な机の隣にはなぜかピアノが置いてあった。
さらには、楽器をしまっているクローゼットが見えた。
「相変わらず、すごい家だな」
「さすが隆聖の家だね。いつ来ても、ビックリだよ」
「あまり片づいていないが」
部屋の主である隆聖は、テーブルを囲んでボクと虎太郎と座っていた。
すぐに隆聖は、ジュースをコップについでいた。
このジュースは、途中のスーパーで買ったものだ。
「さて、今日は打ち上げってことで」
「そうだな、ライブ成功の祝いってことで」
「乾杯っ!」ボクら三人で、ジュースで乾杯をしていた。
いつもどおりボクはコーラを飲む。
「炭酸好きだな、ボーカルだろ」
「ボーカルだって炭酸が好きなの」
「へいへい」虎太郎は、やや納得いかないみたいだ。
「まあ、今回のライブは大成功だったわけだし。
ようやく『ノットシステム』が結束して一年になるけど。
ここまで成功したのははじめだ。観客も二百人は入ったみたいだ」
「うおっ、すげーじゃん」
「チケットノルマをクリアしたし、人気も急浮上。ほら、これ見てみろよ」
そう言いながら、虎太郎が見せたスマホの動画はボクらの路上ライブが映っていた。
「これって路上ライブのだよね」
「この動画が今、ツイッターでフォロワー数が急増しているんだぜ」
「すごいな、どんどん人気出ていくし」
「ねー」ボクも純粋に喜んでいた。
そんな時、さらに隆聖が机の引き出しを開けていた。
「そこで、だ」
「ん?」
「さらに大きなライブをやろうと思う」
「場所は……名古屋?『名古屋スペシャルサウンドクラブ』」
「ああ、略して『NSSC』だ。まだ早いが、いずれここで大規模なライブをやる」
「すごい、野望だ」
「だろ、ここは東海地区でも有数規模のライブ会場だ」
胸を張った隆聖が、とてもたくましく見えた。
こんだけ綺麗な場所なら、ボクもやってみたい。
ボクの声が、どれだけ多くの観客を魅了させられるか試したい。
そんな好奇心を掻き立てていた。
「でも、そこは超有名なアイドルや全国的に有名なバンドがやる会場だろ」
「ああ、それも考えている。人気のあるうちに、どんどんライブをやるんだ」
「NSSCでライブかぁ」
「路上ライブをやって感じたんだ、あれだけの音楽をあれだけの人間の前でできた。
僕らならできる、もっと観客が増えてもできるんだって」
「そのことだけどよ」虎太郎が、難しい顔を見せていた。
「あっ、電話か」
そんな時、隆聖のスマホが鳴っていた。
隆聖はスマホをとって、電話応対をしていた。
「はい、わかりました」そう言いながら、スマホをいきなりボクに向けてきた。
「え?」
「あの、支配人の佐藤さんから」
そう言いながら、隆聖はボクにスマホを渡してきた。




