016
~~カフェ『MENEMEN』~~
ここは、タマゴ王国のカフェらしい。
背景がカフェの様子だ。
ちゃんとテーブルに椅子も用意されていて、凝った作りになっていた。
が、いかんせん人はいない。
ボクは、霞と別れて筐体にカードを読み込ませた。
読み込ませると、ここに飛ばされた。
普段はカードのイースターが、青と黄色の斑点模様の卵に変わる。
「さて、変身を解くのだな」
「待って!」
「ん?」イースターが不思議そうな顔で聞いてくる。
「ねえ、あのライブでボクは負けたらどうなるの?」
「お主は負けた時の事を聞くのか」
「うん、それにボクが襲われたとき後ろの主婦がいなくなったし」
「神隠し……この世界ではそう表現するらしいな」
「え?」ボクは驚いた。
「その主婦は、神隠しにあった。お主の世界では、そう言われるだろう。
負けた場合……つまり神衣装の『トップス』『ボトムス』『ブーツ』全て破壊されてもそうなる」
「だから、カクイドリは衣装を破壊するのか。
で、ボクも負けたら神隠しなの?」
「そういうことだ。まあ、それ以外で説明が全くつかんしな。
このタマゴ王国にいけるのは、タマドル契約をした者だけ」
「契約って僕は……」
「変わりたいと願っただろ、そう願った少女だけが入れる世界だ」
イースターの言葉に、不安があった。
「でも、神隠しなら……」
「助け出す方法はない。あのカスミンと同じ事を言うのだな」
「あっ」ボクは驚いた。
「まあ、それでもタマゴ王国自体があやふやな存在だ。
これでも人は選んでいるつもりだ。朕も命懸けでやっているからな」
「なんだよ、それは?」
「一つ言えることは、カクイドリに絡まれたものはどんな人間でも消えるということ。
それが、敵ということだ」
「それを倒すための変身なの?」
「変身は二つの恩恵がある。
一つは、カクイドリを倒せる力。カクイドリはライブによって倒すことが出来る。
それ以外は無理だ、そして変身をしなければカクイドリを倒す術がない。
もう一つは、カクイドリから守る力。
本来普通の人が、見ることができないのがカクイドリ。
カクイドリに襲われたら最後、この世から消されてしまう。
それを守る鎧こそが、変身で身につく神衣装だ。
神衣装にはさらに、いくつもの恩恵もある。
普通の人間が見れば、魅力を増強させることもある。
変身とは、人が変わりたいと願う心の結晶。その衣装は心なのだ」
イースターは、淡々と語っていた。
「だったら、ボクは……」
「逃げても無駄だ、どのみちお主には選ばないといけない二つの道が出てこよう。
今はごくわずかのカクイドリだが、門が開けば人類は滅びる」
「いきなりそんなの言われても、ボクには分かんないよ」
ボクは何故か叫んでいた。
「だが、どちらかの道は選ぶ時期は迫ってきておる。
預言書にもこう書いてある、『七の月、門が開きカクイドリが現れ、人類を滅ぼすだろう』
カクイドリを見られる人間はごく一部。そのなかで変身できるのはさらに一部。
言いたいことはわかるな」
「わからないよ」
「わからなくても、頭の隅には入れておけ」
イースターはそう言いながら、右手に持った星の杖をボクに振りかざしていた。