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(NADESHIKO’S EYES)
制服で私は、あの人を校門前で待っていた。
いつもながらに、私は待つ。
そして待つ人間は、一人だけ。
放課後、校門から出てくる生徒たち。
私はそれでも待ち続けていた。
この時間がたまらなく、長く切ない。
胸が張り裂けそうで、心臓の音がはっきり聞こえた。
校門にもたれかかって、私は待っていた。
「宇野中さん?」
「あっ」
私の背中にかかった声。
そこにいたのは、ひとりの男性。
私から見えた眩しい短髪の男性。
同じブレザーを着た、同じ学校の一年先輩。
「奥津先輩……」
「いこうか、今日はたまたま空いたし」
「はい」
私は、彼とこの日デートをした。
それは、最初で最後の放課後デート。
私は奥津先輩の隣で、ずっと微笑んでいた。