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(MIDORIKO’S EYES)
私は暗闇の中でいつも、怖がっていた。
それは何もない場所。
カクイドリが自分の体を覆う。
私は暗い闇の中にいた。
ぽつんとひとりきりで、暑くも寒くも感じない宇宙のような空間。
私は何もないひとりの人間。
だから、何かが欲しかった。
霞は頭がいい、恵は声が綺麗、会長は美人だし、撫子はお嬢様だ。
だけど、私にはそれがない。
からっぽで、空虚で、何もない自分が生き残る術は少ない。
だから自分を変えていた。高校デビューと言えるかもしれない。
明るく人と話すことで、自分はみんなと対等だと思っていた。
私の周りのカクイドリが、こちらを見ていた。
何かを誘っているようだ。
(私を哀れむの?)
黒くて気味の悪いコウモリの群れ。
その場を飛んだまま、私を取り囲んでいた。
(そうよね、私は何もないから。カクイドリ)
私は近くのカクイドリに優しい目を見せた。
一匹のカクイドリが敵対心をむき出しに飛びかかる。
(私を消しても何も変わらないわ)
そんなカクイドリが、私の頭に噛み付いてきた。
(痛いけど……痛くない)
カクイドリは私の頭に噛み付いたまま、羽をバタバタさせていた。
カクイドリは、自分の思考を読んでいるみたいだ。
(わかった、私は何もない。変われなかったの)
私が頭の中で思うと、カクイドリに私の言いたかったことが伝わったらしい。
すぐさま私の頭から離れた。
「あなたたちも、変われなかったのね」
私は不敵な笑顔を見せた。