表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
一話:『詰草 恵』のタマゴアイドル:前編
15/159

015

今のボクには輝きがない。

ボクは衣装がボロボロのまま、ようやくスーパーの筐体にたどり着いた。

ここの筐体は、近所のスーパーは二十四時間ではない。

もうすぐ閉まってしまう。急いでタマゴアイドルの筐体に向かう。


しかし、そこには先客がいた。

しかも、そこにいた先客はボクが知っている人だ。

黄緑のジャージに、ポニーテールの黒髪。さらには度がきつそうな眼鏡をかけていた。

見た目がかなり冴えない少女が、筐体に向き合っていた。


「えっ?もしかして霞なの?」

「そう……あたしは『奥津 霞』よ」

そこにいたのは、クラスメイトの霞だった。

クラス一の秀才で、学年トップの頭脳の持ち主。


成績に関しては、ボクといい勝負をいつもしている才女だ。

高校二年間同じクラスで、中学も隣の中学だ。

だけど、霞は学校に来ない生徒としても有名だ。

そして、ボクは彼女の声がある人物と重なる。


「霞がもしかして、カスミン?」

「そうよ」隠すことなく言ってきた。

「ちょっとどういうこと?どうしてボクのことがわかったの?」

「あなたがこのゲームをやるのを見ていたのよ。あたしの家が近いのはわかるでしょ」

「そっか……」

「それにしても、あなたの変身はくだらないわ」

霞は、じっとボクを見ていた。いつもながらに目つきが澱んでいた。

彼女は感情をあまり表に出さない。


「くだらないって」

「今日の路上ライブも見ていた、あなたのこと」

「見てくれたんだ、ボクのこと」

「あんな理由で変身するなんて、くだらないわ」

霞は睨んでいる。ボクはじっと彼女に向き合っていた。


「霞だって、逃げているんでしょ。あの頃から何も変わらない。

学校にも行っていないでしょ、ボクよりよっぽどくだらないんじゃない」

「あたしには、あそこに居場所はない。一番大事なものを失ったから」

「その件を、いつまでもひきずるの?」

「引きずっているに決まっているじゃない!

あの日、あなたたちと一緒にいなければあの子は……」

霞が右手拳を握って、目がさらに鋭くなった。


「でも、あれから一年たったし。ボクらはもう進まないといけないんじゃないかな?」

「ふざけないで、勝手に終わらせないでよ。あの子はまだ生きているのよ」

「じゃあ、どこで……」

「見たのよ、四日市で。帰ってきたのよ!」

霞がそう言いながら、背中を向けた。


「ひとつだけ忠告しておくわ」

「え?」

「ハコベというメイドに気をつけて。

あなたもタマドルなら、いずれ彼女に会うはずだわ。

彼女の言葉には、絶対に耳を傾けてはいけない」

そう言いながら、霞が東友を出て行くのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ