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あたしはこのイースターの仕組みを理解するのに時間がかかっていた。
そもそも、あたしと彼女たちではタマドルになる理由が違う。
あたしは生まれた時に、そこにしか選択肢がなかった。
だけど、彼女たちは違う。
タマドルにならなくても、よかったのだから。
「あたしは、緑子が変わりたがっていたのを知っていた」
「それは初めて聞いたわ」
「緑子が、もともとこのゲームを始めていた。
自分は、秘密にやっていた緑子を見つけたのは中三のころ。
ちょうど受験のあたりだわ」
「受験の時にやっていたんだ」
「うん、だけど……緑子は落ちたの」
「落ちた?」
「受験、志望校に入れなかったの。あたしが受かって彼女は落ちた」
「えっ?」恵は驚いた。
そういえば、霞は学年で一番の成績らしい。
「緑子は、そういうものを抱えていたのかもしれない」
「霞……そうだったんだ」
「ふむ、なるほど。これが彼女の挫折?」
「そう、彼女は中学の時よりさらに明るくなったと思う。
それが緑子の一番の変化、彼女は変わったきっかけ」
霞が言葉を言うと、辛そうな表情に変わる。
緑子が本当に好きなのだと、はっきりわかった。
「霞にとって大事な人なのですね」
「だから、あの子の……」
「ごめんなさい」ふすまが急に空いて、そこには撫子がいつものピンクの浴衣を着ていた。
そばで聞いていたのだろうか、目にはうっすら涙を浮かべていた。
「あなたには……」
「私は、もっと頑張りたいです。絶対に力になりたい」
胸に手を当てて、そのまま部屋を出て行った。
そんな撫子を、心配して自分はすぐに追いかけていた。