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カスミンに見せるライブが始まった。
自分は最近は見てばっかりだ。
それでも自分が、いや自分のイースターが、選らんだナデシコを信じるしかない。
いつも試験の合間に練習をしていたんだ。
ライブを順調にこなす。
ナデシコのミスはだいぶなくなっていた。
これだけでもずいぶん進歩である。
間もなくして、三人のライブが終わった。
自分は、カスミンの隣でずっとライブを見ていた。
カスミンは微動だにしないで、真剣な表情だ。
「終わりました」中腰になったナデシコが呼吸を整える。
ライブのダンスの振り付けは、かなり激しい。
カスミンが指定した曲は、Aランクでもかなり難しいものだ。
「やりきったね」
「ですね、やりきったです」
メグッポとシエルが達成感に満ちた表情を見せていた。
「だけど……」
「問題はグッドの数」
カスミンの言葉の後、グッドの数が表示される。
「グッドの数……目標は9000はほしいところ」
「8721ですね」
出てきた結果に、ナデシコは喜んだ。
これはお嬢様の中では、最高の結果だ。
「やったね、やったよ」
「メグッポは12003か、すごいね」
「シエルも11829ってやはりすごいです」
三人は喜びを示すが、難しい顔を見せたカスミン。
「でも、ナデシコの数値は低い」カスミンの一言で三人が一気に固まる。
自分もまた難しい顔で三人を見ていた。
「ダメなのか?」
「五人で100万グッド、イースターライブの数値。
ハコベが言った話だろ」
「うん。だけど前の緑魔女との戦いで、6000グッドのお嬢様が2000も上げたってことは……」
「技術が足りない」
カスミンは厳しく言い放った。
ステージのお嬢様が、カスミンのほうに近づく。
「なぜ、私と一緒に組んでくれないのですか?」
「技術が足りない、それだけ」
「そんなのはわかっています」
ナデシコはカスミンをにらんでいた。
「わかっていて……」
「求めるものが大きいだけ」
「でも、今のメンバーでやるしかいけないです。
あなただって、わかっているはずです」
ナデシコははっきりとカスミンに言い切った。
「お願い、ナデシコを認めてあげて」
「そうです、ナデシコは頑張ったです」
メグッポとシエルがカスミンに必死に説得する。
それを、よどんだ目でカスミンが見ていた。
「まだ、彼女のことを認めるわけにはいかない。とりあえず追試ということで」
「はい、それでもかまいません。私はあなたに認められたいです。
私たちはタマドルで、やるべきことは同じなのです」
「とりあえず、そろそろ話をしたいのですが。
あのスキル『チェンジワールド』の話です」
自分はそういいながら一冊の本を取り出した。