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ライブを終えると、三人は疲れていた。
息を切らした三人が、両膝をついて呼吸を整えた。
このライブは、メグッポのAランク昇格がかかっていた。
トリオで一定のグッド数を稼げばAランクになる。
そして、グッド数が表示された。
「グッドの数は……やったっ!」
「メグッポ、おめでとう」
「ありがとう、シエル、ナデシコ」
二人と抱き合ったメグッポ。喜びが爆発していた。
「だねっ、これで五人全員Aランク以上だね」
「うんうん、長かった」
メグッポは、始めた時期が一か月にも満たない。
そんな彼女が、ランクAまで上げたのは快挙だ。
「ハコベ、全員Aになりましたよ。これなら……」
「しかし、グッドの数が若干少ないですね。一番多いのがメグッポです」
自分が正直に言うと、お嬢様の顔が曇った。
「うん、そうですね。確かにメグッポとシエルのグッドは高いです」
「でも、ナデシコお嬢様の……」
「練習、まだしてもいいですか?」
「あの……ちょっとまってくださいです」
そこに割って入ったのがシエルだ。
「シエル?」
「二人とも……いやハコベもどうやったらERコーデを手に入れているんですか?」
「うーん、ガチャしかないよ。シエルは持っていないの?」
メグッポの問いに、こちらも表情を曇らせたシエル。
「うん、ないんだ。もう少しでそろいそうなのがあるんだけど」
シエルが衣装のカードを見ながら、難しい顔を見せていた。
「ERのコアクマドレスですね」
そばにいたナデシコは、シエルのカードを覗き込む。
「ERのコアクマドレス、何がないのですか?」
「シューズだけが……」
「それならありますよ」
「えっ、ほんとに?」
ナデシコの申し出に、目を輝かせたシエル。
「はい、私はコアクマドレスを使いませんので。よかったらどうぞ」
「でも、ERだよ。一番レア度が高い……」
「私は大丈夫です。それにERを完成させたほうが、シエルのためにも私のためにもなりますから」
「あ、ありがとう……日本人優しい」
シエルは感謝しながら、お嬢様からカードを受け取っていた。
「じゃあ、レストランに行きましょう。
メグッポも、これでフリッタータにひとりで行けますし」
「だねっ、ボクも報酬をもらってくる」
そういいながら、メグッポとシエルの二人はその場を出た。
ステージに残ったのは、ナデシコ。
「お嬢様?」
「うん、これでシエルもERが手に入ったね。
シエルが、ERを手に入れたことでエッグアピールできます」
「ですね、エッグアピールは必要不可欠です」
「メグッポも、無事にAランクになりました。
Aランクが五人そろうと、あのスキルも使えるんですよね」
「ええ、あのスキルも使えますはずです」
それは、自分たちの切り札でもある。
五人そろったことはないから使ったことはない。
だけど、五人そろって初めて使えるスキルだ。
「だけど、私は……」
撫子はやはり浮かない表情だった。
「大丈夫です、練習あるのみです。二人も付き合ってくれますよ」
「ハコベはやらないのですか?」
「はい、自分はランク上なので一緒にライブをするとグッドが下がることがあります。
同じランクで練習したほうがいいと思います」
「だけど……」
「大丈夫ですよ、自分は調べないといけないです。
『チェンジワールド』を……」
自分はそういいながら、タマドルカードを取り出していた。