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夕方になり、自分は家に戻っていた。
大きな屋敷の宇野中家、そこで自分はお嬢様の部屋に居た。
しかし、お嬢様の表情が優れない。
そんな自分は努めてそばに寄り添っていた。
「お嬢様……」
「ごめんなさい、足でまといですね」
「謝ることはないです」
「でも、私がグッドの数を稼げなかったのは事実です」
お嬢様の落胆した表情が、自分も辛い。
「ライブは苦手ですか?」
「私は、ハコベやカスミンのようにグッド数を稼げません。
前にも言いましたよね、日曜に緑魔女がやってくる。
今度やってきたら……」
「はい、次にあったらおそらくベーツァの門が開くでしょう」
自分は緑魔女に言われたことを思い出した。
緑魔女は、ベーツァの門を開けるために日曜に動いていた。
日曜限定で、カクイドリを放つことでベーツァの門を開こうとしていた。
次の活動で、ベーツァの門が開く。
そうなれば全てが終わりだ。
カクイドリが放たれ、瞬く間に人はいなくなるだろう。
「カクイドリに襲われたら……人は消滅する」
「そしてそれを操れるのは、おそらく緑魔女だけ」
「どうしようもないですね」
苦笑いを見せたお嬢様。
「せっかく、あの方を好きになってもこれでは意味がないですよ」
「お嬢様……」
「でも、それを変える力が自分にはない」
「そんなことはないです」
「ありますよ、カスミンの言うとおりです」
お嬢様が、元気なく俯いた。
広い部屋に、冷たい空気が支配する。
「私はずっと考えていました、なぜ自分なのかを」
「それは……」
「私なんかより、もっとライブにうまい子がいるんじゃないかと。
このタマドルをやっている他の子が、いいのではないかと」
「そうではありません、自分は違うと思います」
自分ははっきりとお嬢様を見ていた。
「何が違うのですか?」
「自分はお嬢様だから、イースターが選んだと思います」
「それは違いますよ、私はたまたまハコベを……」
「お嬢様は変わりたいと願っていますから。
あの時も、今だって。変わろうとする女の子の見方なんですよ、イースターは」
自分は笑顔で言っていた。
「変わろうとする……」
「ライブが苦手なら、やることはわかっているじゃないですか」
「どうしてそこまで言えるの?」
「お嬢様は、奥津様が好きなのでしょう。奥津様とこれからも」
「はいっ」顔が赤くなるお嬢様。
「ならば簡単です。やることはひとつしかないです」
そんなお嬢様に、最後まで笑顔を見せていた。