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図書館の中に入った自分は、驚いていた。
そこには緑魔女が、なに食わぬ顔で図書館の中央ホールで立っていた。
その背中を見ているのがカスミン。
だけど、前が黒く覆われていた。
この光景はカクイドリだ。受付のカウンターのところに人がいない。静かな図書館だ。
「ミーコ、どうして?」
「門は入口であり、出口である。つまり、この出口からも……」
緑魔女が示したのが、タマドル筐体だ。なんでこんなところにあるのだろうか。
「どういう意味?」
「ここに設置しておいたのよ」
「タマドル筐体をか?」
「いいえ、これはベーツァの門」
不敵に笑う緑魔女、筐体から次々と黒いカクイドリが現れた。
「なんだと……まさか」
「だけど、お前たちにこのベーツァの門を閉じることはできない」
「そっか、タマゴ王国から送っているのか?」
「そう、データと同じ。ここには実態はない。
実態はないが、人を消し去るには十分だ」
緑魔女の言葉に、歯を食いしばるカスミン。
「もうやめて、ミーコ。あなたはなんでそんなことを?」
「言ったでしょ、この世界を変身させるって」
そう言いながら、緑魔女はタマドル筐体のそばに近づく。
「次に会うときは、おそらく最後でしょう。門が開くでしょうから」
最後に一言を残して、緑魔女の体がゲーム筺体に吸い寄せられた。
「ミーコ、ミーコっ!」
カスミンの叫び声が静かに響く中、自分は筐体から出てくるカクイドリを相手にするしかなかった。