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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
一話:『詰草 恵』のタマゴアイドル:前編
12/159

012

ボクは夜になって歩いていた。

正しくはスーパーを探していた。

夜九時になって、スーパーがほとんどしまっていたからだ。


(郊外を外れると、なかなかないなぁ)

ボクはそれでも街を走り回っていた。

もちろん探し回っているのは、『タマゴアイドル』の筐体。

これがなければ、ボクは元に戻ることができない。

元に戻れなければ、家に帰るときに説明が大変だ。

なにより学校をこのまま通うのもできない。


(あっ、こっちか)

家からだいぶ離れたところに、ようやくいつものスーパー東友を見つけた。


(たしか、ここにはあったよな)

ボクはまだ明るいスーパーに近づく。

そんなときだった。


「とまれっ、危険だ!」ボクのポケットから声が聞こえた。

それはイースター、いきなり声がして驚く。

ボクがそのまま胸にしまったカードを取り出していた。


「何が危険なの?」

「奴の気配を感じる」

イースターが言うと、闇に紛れて上空から黒い小さな渦らしきものが見えた。


「鳥?」

「あれはカクイドリだ」

「カクイドリ?なにそれ?」

「タマゴ王国に生息するコウモリだ。だが……」

「えっ」上空を飛んでいたコウモリが、いきなりボクを見かけて飛びかかってきた。


「こっちに来るっ」

「ヤツはお主の衣装を狙う敵なのだ」

「ええっ!」

ボクは走りながら、スーパーの中に入ろうとする。

だけど、カクイドリが前を阻んでいた。

それはまるで黒い壁。だけど、ほかの人には見えないのか、普通に主婦が歩いていく。


「ライブをするのじゃ!」

「ライブって?」

「くるぞっ!」カードのイースターが叫ぶ。

同時にボクのほうに、カクイドリの群れが飛びかかってきた。


「えっ!」あわてて、しゃがむボク。

低空飛行で、カクイドリがボクをめがけて飛びかかる。

そして、背中のナース服が破れる音がした。


「いたっ!」背中にはっきりとした痛みがあった。

顔を歪めて、それでもカクイドリの襲撃をかろうじて避けた。


だが、後ろには買い物帰りの主婦がいた。

その主婦めがけて、カクイドリの群れが飛びかかった。

見えていないのか、全く逃げる素振りすら見せない。

それは、黒い小さなドームのようなものができた。


「え?」

駐車場に這いつくばったボクは、主婦の周りを取り囲んだカクイドリを見ていた。

そして、次の瞬間目を疑った。


「消えた……」主婦が持っていた買い物袋を残して消えたのだ。

「むうっ、カクイドリがやはりここまで出回っているとは」

「ええっ、なに?カクイドリって?コウモリっぽいけど」

「見た目はそうじゃが、カクイドリは恐ろしいモンスターだ。

なにせ、奴らは神衣装を着ていないものを全て連れ去る」

「『神衣装』?」

「お主が着ているその衣装のことだ。

もし着ていなければ今頃、お主もあのものと同じ……」

「なに、分けわかんないけど」

ボクはうろたえながらも、背中の痛みをはっきりと感じた。

裂けたピンクのナース服。天使の羽が切れていた。


「とにかく、カードを掲げよ。ライブをするのだ」

「でも……」

「もたついたら、死ぬぞ」

イースターの言葉に、ボクは持っていたカードを上につきだした。


「お願いっ!」

すると、ボクの体が急に軽くなったのを感じた。



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