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『6月23日』
この日、自分の蔵には自分を含めて四人いた。
カラフルな赤と白の縞模様の壁、ピンクの床。
そこにいたのが自分と、撫子お嬢様。
それから、メグッポというタマドルと、シエルというタマドルだ。
ゲームの世界、タマゴ王国から戻った自分たちはタマドルの格好でそれぞれここにいた。
黄緑のロングヘアーのメグッポ。
ミドルの大きな黒いツインテールのシエル。
桃色のポニーテールの撫子お嬢様。
そして、いつもどおりの金ボブのメイド服の自分。
「カスミン、それは奥津 霞で間違いないのですか?」
先に声を上げたのは、お嬢様だ。
「うん、間違いなく霞だね」
「そうですか」メグッポの言葉に、シエルも頷く。
「奥津 霞とは誰ですか?」
「学校をいつも欠席しているけど、成績が一位の子よ」
撫子お嬢様が知らないあたしに説明した。
「それはカスミンですか?」
「はい、おそらくは……」
「ならば、自分も彼女に会っています。日曜日に彼女を目撃しましたから」
「それは聞きました」
自分がお嬢様に話した報告だ。
だけど、お嬢様の表情はおかしい。
それもそうだ、緑魔女は二箇所にカクイドリを放ってた。
放ったもう一箇所こそ、駅前でお嬢様が襲われた。
「イースターライブをするには、霞の協力が必要と」
「ですね、問題は彼女は自分たちの助けにならないことです」
霞はしっている、緑魔女の正体を。
お嬢様も知っているが、そこまでのダメージはない。
だけど霞は、あくまで緑魔女を救う方法を模索している。
彼女も、彼女なりに行動をしようとしているのだ。
「でも、五人集まらないとできないんでしょ。
タマドルはほかにいないの?」
「それは……いない」
自分ははっきりと言えた。
「イースターは、自分が助けたのを含めて四種類しかいないから」
「四種類」眉をひそめたのが、シエルとお嬢様。
「はい、自分はタマドルになるのにこの証があればいいのです」
「王女だからですか?」
お嬢様の言葉に、あたしは頷いた。
「もしかして、ハコベさんは王女様だったんですか?」シエルが羨望の眼差しを見せてきた。
「はい」
「タマゴ王国の?」
「はい、自分はそうです。信じてもらえなくても仕方ないですが」
「信じますよ」シエルが、笑顔を見せていた。
「信じるって」
「うん、ボクも信じるよ。それに……緑魔女だって」
「綴 緑子」撫子お嬢様の言葉に、シエルとメグッポの顔が変わった。
「うん、緑子はボクたちの友達だから」
メグッポの言葉に、シエルは黙って頷いていた。
「とにかく、まずはカスミンを何とかしましょう」
「はい、でも彼女は学校に来ないから」
「ですね、そこですね」お嬢様が、かなり困った顔を見せた。
「メグッポは、霞と知り合いよね」
「中学は一緒だった……けど」
シエルの言葉に、メグッポは表情が晴れない。
「霞はあの後から、おかしくなったから」
メグッポは、深いため息をついていた。