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緑魔女のいるそこは、商店街。
いつも買い物に行くここに、緑魔女がいた光景。
日曜の商店街は、それは賑わっていた。
だけど、姿だけで言ったら自分のほうが目立つ。
「ハコベ女王様、ここにいたのですか」
「カクイドリは……いないの?」
「まあ、知っているでしょ。私の目的は、カクイドリではないわ」
「緑子?」お嬢様が、いきなり緑魔女に話しかけた。
「緑子?そう呼ばれていたかもしれない」
「なぜ、あなたがこんなところに?」
「だが、今は違う」
そう言いながら、緑魔女は商店街を見回していた。
「何をしているの?」
「ここで決着をつけることもなかろう、どちらにしても今は普通の人間同士だ」
「お前の企みは……」
「私を捉えることはできない、ベーツァの門が許さないのは知っておろう」
「まさか、実態は……」
「タマゴ王国にある」
緑魔女は、不敵な笑みを浮かべていた。
確かに、前回もベーツァの門をくぐって彼女は消えていた。
実態がここになければ、時間が経てば消えてしまう。
「つまり、お前たちは何をしようが無駄だということだ」
「あの、緑子さん」
お嬢様の言葉に、緑魔女の動きが止まった。
「何を言っているのかしら?」
「緑子さんですよね、間違いなく緑子さんです」
「そう……あなたもタマドルかしら?宇野中 撫子?」
「はい」撫子お嬢様が凛として答えた。
「そう、ならひとつ言っておくわ。
この世界は変わらないといけないの、この世界はおかしいから」
「おかしいって、よく言いますね」
自分は緑魔女を睨んでいた。お嬢様の前に立ち、手を広げていた。
「何もわからないくせに」
緑魔女は、最後に商店街の路地に不意に走り出していた。
「お嬢様はここにいてください」
「待って!」
しかし自分は、お嬢様をおいてすぐに走り出していた。