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『6月12日』
この日、自分は街の中を一人で歩いていた。
それは、夕暮れの街。
いつものメイド姿で、自分は動いていた。
今の本業は、撫子お嬢様抱えの給仕。つまりメイドだ。
服装どおりの本業に、なっているから違和感もない。
そんな自分が歩くのが、町並みだ。
商店街を歩く、自分に向けられる視線はどこか羨望が見えた。
自分が行動するときは、いつも一人だ。
だけどそこに最近、お嬢様が来ていた。
「今日も平和ですね」
「はい、カクイドリの姿はありません」
四日市の商店街を二人で歩く。
二人で周囲を見回しながら、歩くだけだ。
それでも、緑魔女は神出鬼没。どこで現れるかわからない。
唯一の手がかりは、ひとつだけ。
「それで、前にハコベが言っていた緑魔女だけど……」
「日曜にしか出られないのです」
「日曜日?」
「七日に一度、ベーツァの門がわずかだけど開く。
そして、緑魔女は何かをするためにこの地球に来ている」
「何かって?」
「それはわかりませんが……彼女はカクイドリを操ります」
自分は緑魔女と何度か接触している。
彼女をなんとかしないと、自分はタマゴ王国に帰れない。
緑魔女がこちらに来ているのは、意味都合がいい。
それでも、ただこちらの都合できているわけではない。
「はい。カクイドリとは二度、対峙しましたが危険ですか?」
「人を消し去ります」
「それは危険ですね、でもどうなるのですか?」
「ベーツァの門が閉じられる以上、こちらから介入の術はありません」
「そう、介入は絶対にできない」
そして、自分の前には二度目の緑魔女が現れたのだ。
次の瞬間、撫子お嬢様が驚いた表情を見せた。