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自分が、撫子お嬢様の部屋に来ていた。
朝、この屋敷の自分の主人でもある撫子お嬢様を起こすのも自分の仕事だ。
この仕事を、自分は嫌いではない。
襖を開けると、広い和室が広がっていた。
髪が長い、撫子お嬢様が起きていた。
ピンク色の浴衣を着て、立って庭を見ていた。
「お嬢様、起きていたのですか」
「はい、今日はあまり眠れなくて」
「そうですか」
「日曜日は、いつもハコベがいませんから」
「申し訳ありません」
寂しそうな撫子お嬢様に対し、自分は深く頭を下げていた。
撫子お嬢様と、自分は年齢的にも近い。
撫子お嬢様にとって、自分が最近は話し相手になっていた。
本当のところ、お嬢様は寂しがりやなのかもしれない。
もしかしたら、変身して変わったのかもしれない。
自分が抱き抱えたイースターは、お嬢様の変身に手助けをしていた。
変わりたい少女の願いを叶えるイースターならば、当然だ。
「お嬢様には、あの方がいるではありませんか」
「奥津先輩は違います」
明らかに顔を赤くしていた、お嬢様。
奥津先輩は、お嬢様が大好きな男子のことだ。
「それにしても、ハコベは好きな人がいますか?」
「お嬢様が好きですよ」偽りのない、自分の言葉。
「そうじゃないです、好きな殿方」
「殿方……うーん、自分には必要ないですね。
タマゴ王国は、女しかいませんから」
「まあ、それは大変ですね。どうやって増えていくのですか?」
「変身したいみなさんの願望です。
それに自分たちタマドルは本来、タマゴで生まれますから女性だけいればいいのです」
「まあ、そうでしたか。それはつまらないですね。
そういえば、前に食事をとらなくても大丈夫とか」
「レストランとかあるのですが、食事はしなくても大丈夫です。
タマドルはみんな生理現象が起きないですし、睡眠も食事も不要です」
「それはすごいですね」
お嬢様がいつも自分の話で、驚いていた。
「ですが、お嬢様食事をお持ちします」
「はい」そう言いながら自分は、布団をたたみ始めた。