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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
一話:『詰草 恵』のタマゴアイドル:前編
11/159

011

夜の帰り道、ボクは隆聖と一緒にいた。

一緒に帰るのは久しぶりだ。

帰りは、四日市の中心から少し離れた鈴鹿。

このあたりは、住宅街で家が立ち並んでいた。


線路沿いの住宅街に歩道がある。

ボクはこの姿のまま、夜道を歩く。そして、何度も隆聖が見てきた。


「すごいな、恵」

「へへっ、そうかな」ボクははにかんでいた。

「恵の印象が変わったよ、ちょっと幼く見える気もするけど。

単純にすごくかわいいよ。まるで妖精のような可愛らしさ」

「そりゃあ、女の子だし。ボク」

隆聖の隣で、ボクは得意げに胸を張っていた。


「でも、本当に恵が印象変わるとはね」

「ボクもびっくりだよ。いろいろ感じた、みんなの視線、みんなの声」

「ずっと見ているけど、やっぱり女なんだな」

「なんだよ、それ!ひどいっ」

隆聖の言葉にボクはふてくされた。

隆聖はいつもそうだ。ふてくされたボクに、頭を下げて謝ってきた。


「ごめん」

「隆聖もボクが男だと思っていたんでしょ」

「違うよ、恵は女だろ」

「うん」隆聖は、ボクを理解してくれた。

ボクはそんな隆聖を仕方なく許す。


「でも、すごかったよね。人もものすごく集まったし」

「うん……来週のライブも楽しみだね」

「そうだね。ライブも楽しみだね」

「人も集まったし、恵の声もかわいいし、今度もきっとうまくいくよ」

「そうだね」

ボクは自信が持てた。

変身して、多くの人が『ノットシステム』のバンドを聞いてくれたのだ。

おひねりをかなりもらえて、思わぬ収入も得た。

だけど、まだ納得できない部分があった。


「それでも……まだ音が湿っている気がするんだ」

「湿っているって、まだ何かあるのか?」

「うん。まだ、説明できないけど。

ボクらは、もっと上手く出来そうな気がするんだ」

「上手く……か。これでも練習はしているんだぞ」

「そうじゃなくて」

やっぱりボクは難しい顔を見せていた。


「ゴメン、なんか変なこと言ったか?恵」

「いや、別に」

それからちょっとだけ沈黙が続く。

まもなくして、隆聖の家があるマンション前にやってきた。


「じゃあ、また……その……」

「うん」

「……あのさ」

「ごめん、ボク。帰り、スーパーに寄らないといけないから」

そう言いながら、ボクははにかみつつも隆聖と分かれるのだった。



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