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祖母と人魂と私と。

作者: 夜の雨の

若干、ホラーかもしれません。

 _____それは新月の晩のことだ。



 その日、近所のお婆さんが亡くなった。その人とは良く話していたため、とても悲しかった。葬式に出られない、ということも悲しかった。今日の

夕飯のことを考え、中学校から帰宅した私に伝えられた、悲しい出来事である。


 そして、問題の夜のことである。帰宅後から放心した状態で泣き続けていた。そのお婆さんの家を眺めながら。

 だからだろうか。私は気づいてしまった。


「え……。あ、れは人魂……?」


 掠れた声が出た。

 彼女の家の上に人魂、あるいは鬼火ともとれるものが浮いていた。綺麗な緑色だった。それが彼女の魂だとすれば、これほど似合うものは他にないだろうと思えた。

 だが、やはり中学生とはいえ子供である。怖かった。どれだけ綺麗で悪いものだと思えなかったとしても。すぐに涙は引っ込み、体はガタガタと震え、指先は冷えきった。きっと、顔も真っ青であろう。


 そして、私はすぐに寝た。怖いものを見たり、思い出したときは、目を瞑り、寝ることが一番だと思っているためだ。勿論、それは現実逃避のようなものだが。



 朝が来た。眠って、私は落ち着いた。感情が整理されたというわけではないが、落ち着いた。そして、考える余裕ができた。



 だから、思い出したのか。祖母の昔話を。


『私はね。小さい頃は人魂が視えたんだよ。

その日亡くなった人の家に光るものが浮かぶんだ。色は違うが、どれも綺麗だったよ。どんなに性格が悪かった人であろうと、例外なくね。これが魂の輝きなのかと思ったさ。

だがね。一晩立つと消えるんだ。きっと、成仏したんだろうよ。だから、私はそれを見つけると冥福を祈るんだ。

まぁ、今は視えないんだけどね』


 そう、苦笑しつつ懐かしそうに語っていた。



 それを思い出してからは早かった。土曜日だったため、早速祖母にこのことを話に向かった。人魂が視えたのは、遺伝のようなものだろう。そう答えは出ていたも同然だが、誰かに話したかった。この不思議な体験を。そして、信じてほしかった。だから、確実に信じてくれそうな祖母を選んだ。


 祖母は比較的近い場所にいる。だが、徒歩では少し遠い。そのため、私は自転車を飛ばした。



 ……お婆さんの冥福を祈ると共に、祖母との特殊な共通点に心を少し躍らせながら。



 そして、着いたのはお墓。そう、祖母は亡くなっているのだ。


 _____おばあちゃん、私にも人魂が視えたよ。あれ、本当だったんだね。今まで、疑ってごめんね。本当に、魂は綺麗だったよ。


 そして、私は祖母に謝った。

祖母が小さい頃に人魂が視えた、と言っていたのを思い出したので。幽霊などはあまり信じませんが、人魂は信じてます。

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