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大切なのは、福引かファンナか・・・

 「いやはや、閉店の時間まで粘って福引券が164枚も集まった!」


 「しかも、イッサが閉店時間まで料理を食べまくった物だから期間限定以外の金も掛かった。総額で・・・いくら位かな?」


 「えーと、あの店の四人テーブルは15個あったから・・・座る奴を平均3人として、食べ終わるのに10分だとして・・・一時間で・・・」


 「15×3×6で270人来る計算になります。」


 ファンナが計算をしてくれた。


 「一時間で270人と言う事は・・・あの店の閉店時間は10時だから・・・」


 「私達が昼の12時に来たので、270×10で2700人ですね。」


 またファンナが計算をしてくれた。


 「その2700人の内、半分が期間限定のメニューを頼んだから1350人。期間限定のメニューの値段が80Kで・・・」


 「108000Kです。」


 ファンナは計算が早いな。


 「更に俺が2分で一品を食べれるから・・・一品の平均を70Kだとして・・・」


 「1時間2100Kで、10時間で21000Kです。合計は約130000K」


 「それを数人程度で割り勘する事になったんだよな、あのクソ豚ども。」


 「闇討ちされなければ良いけどね、アハハハハ!!」


 「アハハハハ!!」


 俺もケンにつられて笑った。


 「もう夜中ですので、私は寮に帰ります。ではさようなら!」


 どうやらファンナの寮に門限は無いらしい。


 「さてと、宿でも探すか?」


 「その前に、気になっている所がある。」


 「何だよ、気になっている所って・・・」


 「それは・・・」




 「え?イッサさんは福引をやる?」


 「そうだ、昨日福引券が大量に手に入ったんでな、一気に消化するからファンナはケンと一緒にギルドの依頼でも受けてくれ。」


 「でもケンさん!」


 「僕だったら大丈夫ですから行きましょうよ。」


 「イッサさんと一緒に戦いたかったけど分かりましたよ・・・」


 こうしてファンナとケンはギルドへ向かった。


 僕は当然、福引所へ向かった。




 「おめでとう!六等の米だ!」


 俺は、大量にくじ引きが出来て心底嬉しい。それにしても普通はくじ引き券なんて何十枚も手に入らないのに100枚以上も手に入るとは・・・異世界って良いな。


 「もう一回お願い!」


 だが、俺はこのままくじ引きだけを楽しんで一日を過ごす気は無い。




 昨日、俺はケンとこんな会話をした。


 「それは・・・ファンナの事だ。」


 「もしかして、あいつに一目惚れとか?」


 「そう言う意味じゃ無くて、あの時ラースファリー学校とラースファリー学校の生徒会長を止めて俺達の旅に付いて行くと言った時・・・随分迷いの無い顔をしていた。」


 「・・・言われてみれば、まるで今の生活が嫌になっている様だったな。」


 「明日、ケンはファンナと一緒にギルドの依頼でも受けてろ。」


 「お前はどうするんだよ?」


 「福引を口実にしてファンナの事を調べてみる。」




 どうも引っ掛かる為、ファンナの事を調べようと思った。


 「十三等の、お菓子だ。」


 それにしても福引は本当に楽しいな・・・




 俺は福引券を全部使った後、泊まっている宿に景品を全部置いて情報収集に出かけた。


 「さてと、ファンナが泊まっている女子寮に着いた訳だが・・・まずは管理人にでも話を聞こうかな。」


 そして俺は女子寮の中に入ろうとしたのだが・・・


 「あんた!ここを男禁制の女子寮と知っての狼藉かい?」


 寮母と思われる老人に止められた。


 「そう言うあんたはここの寮母か?」


 「そうだよ、だからどうしたんだい?」


 「俺は用があって来たんだ。」


 「男が女子寮に何の用だい?」


 「その前に、話を円滑に進める為に身分証明になる物を見せる。」


 俺はポケットから身分証明になる物を取り出した。


 「あ、間違えた。」


 と思ったら、この前見つけた脱出の石だった。


 「今度こそ・・・これだ。」


 今度こそ、身分証明になるファンナの学生証を取り出した。


 「それは・・・何であんたが?」


 「こんな時の為に本人から預かったんだ。」


 「・・・どうやら、信頼して良いようだね。」


 「それで、用件だが・・・」


 俺はこれまでの経緯を寮母に話した。


 「なるほど・・・あの子について聞きたいと。」


 「そうだ、知っている事だけで良いから教えてくれないか?」


 「分かったよ・・・あの子の父親は昔、平民の生まれだった。父親は偉くなりたくて兵士に志願した。そしてある時、戦場で大きな手柄を立てたんだ。それから父親は偉くなって、今は領土や財産を持つほどになった・・・」


 「それだけ聞くと今の生活が嫌になる要素は見当たらないな・・・」


 「問題はこれからさ・・・その後、父親は結婚してあの子を授かった。父親はあの子を徹底的に厳しく鍛え、あのラースファリー学校の生徒会長になれるまでに育て上げた。でも、あの子は生徒会長なんて望んでいなかったんだよ・・・本当は教会のシスターになりたかったんだよ。」


 教会のシスターか、長生きしそうだな・・・


 「だけど、それを父親に言ったらどうなったと思うかい?」


 「・・・ふざけるな!シスターになって偉くなれるか!と言われて殴られたとか?」


 「教会を潰したんだよ・・・」


 なるほどね、根元から抜いたって訳か・・・


 「あたしの知っている情報はこれ位かね。」


 「ありがとな、ババア。」


 「ババアは余計だよ!!」


 「ごめんな、じゃあ婆ちゃんにしておく。」


 「あんたみたいな孫はいらないよ!!」


 寮母と喧嘩をして、俺は作戦を練る為に宿に戻ろうとした。


 「ちょっとお待ち、最後に一つ聞かせて貰えるかい?」


 だが、寮母に呼び止められた。


 「何だよ、俺は帰る所だけど・・・」


 「どうしてあの子をそこまで気に掛けるんだい?」


 「・・・可哀想だからだ。」


 「可哀想?」


 「今の地位や名誉を捨ててまで、俺がやっている旅人になりたいとか言う様な環境で育てられて可哀想だからだ。」


 それだけ言って、俺は女子寮を後にした。

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