もうちょっと頭を使えよクソ豚ども!
「イッサさんとケンさんは旅をしてどれ位ですか?」
「一日と二十時間、つまり仲間になったばかりだ。」
「これからどこに行きますか?」
「そうですね、とりあえずギルドの依頼でも見に行きます。」
「・・・昼ご飯は美味しいですか?」
「「そりゃあもう、美味しくて美味しくて・・・」」
俺達は、昼ご飯を食べながら世間話をしていた。俺は吸収魔法のお陰で腹は減らないが、やっぱり飯が食いたいので注文した。そしたら美味しそうな料理が出て来て、口にしてみたらやっぱり美味しくてもう最高だった。でも今の俺以外の人間は、毎日食べなきゃ生きて行けないなんて不便だな。全員吸収魔法を使えたら食べられる物と食べられない物を区別せずに済むのに・・・
「ちょっと良いかしら?」
などと考えていたら、数人の女子が俺達のテーブルにやって来た。
「何だよ、俺達は食事をしているんだけど・・・」
「まぁ!その口の利き方は何ですの!?」
「悪かったな、俺の口の利き方が気に食わないんだったら他の二人にでも話をしてくれ。」
俺は面倒臭くなってケンとファンナに丸投げする事にした。
「すいません、ここからは僕が話を聞きます。」
「要件ですが、そこにいらっしゃる方を誰だと思っているんですの?」
「ラースファリー学校の生徒会長ですが・・・それが何か?」
「何故、我らが生徒会長があなた方の様な汚らしい旅人と昼食を共にしているのか・・・是非話を伺いたいですわね。」
「おい、随分失礼な事を言うんだな。旅人の中にも潔癖症な奴はいるのに勝手に汚らしいと言うなんて・・・俺はちゃんと風呂にも入ってるし体だって・・・」
「お前は黙ってろ!えっと、始まりは生徒会長が・・・」
「説明は不要ですわ。」
「・・・それは何故ですか?」
「旅人さん、今すぐ生徒会長から離れなさい。」
「それも何故ですか?」
「我らが生徒会長が、あなた方の様な程度の低くて、無礼で、身の程知らずで、汚らしい旅人と昼食など共にして良い訳が無いでしょう?理由は以上ですわ。」
俺は心底、このクソ豚どもが面倒臭いと感じた。何とかしてこいつらを追い返そうと考え、そしてある作戦を思い付いた。
「なぁ、クソ豚・・・じゃ無くてお嬢さん方、俺と賭けをしないか?」
「・・・賭け?」
「内容は、あの人がここで注文できる期間限定で福引券つきで一人につき一つの料理を頼むか頼まないかだ。」
こう言いながら俺は、いかにも貧乏そうな奴を指した。
「私達が勝ったらあなた方は生徒会長から離れて貰う訳ですね?」
「そう言う事だな。」
「貴方が勝ったら私達が手を引くと言う事ですか。」
「寝ぼけているのか?そんなので足りる訳ないだろ?」
「じゃあどうしろと?」
「そうだね・・・俺が勝ったら俺とケンとファンナの昼飯代を奢って貰う。」
「・・・その勝負を受けましょう。」
「じゃあ、あの人は頼むと思うか?それとも頼まないと思うか?」
そう言うとクソ豚どもは相談を始めた。
「私達は、頼まない方に賭けます。」
「じゃあ俺は頼む方だな。」
そして、貧乏そうな奴に店員が注文を伺いに向かった。
「ケンさん、あの人は頼むと思いますか?」
「あいつは如何にも貧乏そうだから・・・頼まないと思うけど、それ位イッサは気付いている筈だ。一体イッサの目的はなんだよ・・・」
俺はその言葉の直後に立ち上がり、貧乏そうな奴の元へ向かった。
「ご注文は?」
「パンとコーヒーを・・・」
「すいません、期間限定で福引券付きで一人につき一つのメニューをお願いして貰えないでしょうか?」
俺は貧乏そうな奴にこう頼んだ。
「金が無いので止めておく。」
貧乏そうだから当然、拒否の返事だったがこれ位は計算済みだ。
「大丈夫です、俺が奢りますから。その代わり、福引券は俺が貰いたいのですが・・・どうでしょうか?」
「・・・そう言うなら、頼もうかな。」
俺は小躍りしながら席に戻った。
「あの客は、期間限定の福引券付きの一人につき一つのメニューを頼んだので賭けは俺の勝ちだ。約束通り昼飯代を・・・」
「何を言っているのですか?こんなの無効に決まっているでしょう?」
「残念だけど、無効になるルールは定めていないからな・・・」
「貴方は、誘発して注文させたのですよ?」
「これは頼むか頼まないかの勝負だから誘発は関係ありませんよ?」
「イッサの言う通りです。気付けなかったあなた方が馬鹿なんです。」
ケンが俺のフォローをしてくれた。
「こんなのは無効です。無効ですから生徒会長から離れてください今すぐ!」
「本当に面倒くさいな・・・ケン、こいつら一度ボコボコにした方が良いんじゃないのか?」
「・・・そうだな、こんな自分勝手で話を聞かない迷惑な奴らはボコボコにした方が良い。ラースファリーから出て行く事になると思うが・・・」
「申し訳ありませんが、この二人の言う事を認めて貰えないでしょうか。」
そう言ったのは他でも無い、ファンナだ。
「私がこの二人と昼食を共にしている理由は、私が落とした学生証をこのイッサさんが届けたお礼としてこの二人が旅立つ間まで行動を共にする事にしたからです。」
「ですが・・・」
「あなた方が約束を反故にする意思を崩さないのであれば、私は生徒会長を辞めてラースファリー学校を去ります。」
俺とケン、そしてクソ豚どもは驚愕した。
「去ってどうするんだよ、まさか俺達と一緒に旅をするとでも言うのか?」
俺は冗談でファンナにそう聞いてみた。
「その通りです。」
だが、ファンナは本気だった様だ。
「なりません!生徒会長を止めてこんな汚らしい・・・」
「私は、本気です。」
ファンナの目は言葉の通り本気だ。
「・・・分かりました。」
クソ豚どもは昼飯代を奢る事にしたそうだ。
「じゃあ早速・・・俺が期間限定のメニューを奢りますので、どなたか福引券を俺に渡して貰えませんか?」
その言葉に反応して、大勢の奴が期間限定のメニューを注文した。
「ちょっと・・・」
「何だ?」
「いえ、何でもありません・・・」
クソ豚どもはぐうの音も出なくなった。
「お前・・・凄い奴だな。」
「褒めてくれてありがとよ、ケン!」