城下町と言うからには、お城があり姫もいる。
「いやはや、あのボスはきつかったです・・・」
「ファンナ、あれ位の敵で情けないぞ。」
「たった一週間でダンジョンのボスと渡り合えるお前が凄すぎるんだよ・・・」
こんな感じで、俺達は今日もダンジョンへ潜った。どうやらダンジョンのボスを一度でも倒すと自動的に外に送られて、そのダンジョンは無くなるらしい。無くなると言っても世界中でダンジョンは増え続けているからほとんど問題は無いだろうけど。
「では、私はこれで失礼します。」
そしていつもの様に、ファンナと別れた。俺達も宿に戻ろうと道を歩いていたが・・・
「・・・?ケン、あれなんだ?」
だが、途中で何かが落ちているのを見かけた。
「どれどれ・・・?」
ケンが落ちている物を調べ始めた。
「イッサ、これは王族の印の指輪だ!!」
「なんでそんな物が道に落ちているんだよ・・・」
「歩いている時に落としたか、泥棒に盗まれたかだろ。」
「なるほど、だったら落ちてた所にまた置いておこう。」
「分かっているじゃないか。」
何故、また置いておくのかと言われれば答えは泥棒と間違われたく無いからだ。故に国の人間が拾えば全てが丸く収まる。だからケンは指輪を道に置こうとしたのだが・・・
「あ、見つけました!」
「「うひゃい!!」」
俺とケンは、こんな言葉が出るほど驚いた。
「あのね、これは誤解だ!俺達はただ面倒な事にしたく無かっただけだ!!」
「と言うかイッサ!お前こんな時に口が悪いんだよ!死神になっている時の様に丁寧な言葉を使え!!」
「あの、私はただお礼が言いたいだけです。」
「「何のお礼をですか!?」」
「指輪を見つけてくれたお礼をです。」
「「本当ですか!?あぁ、良かった・・・」」
俺とケンはその言葉に心底ホッとした。
「それにしても、お美しい方ですね・・・貴方は姫様ですか?」
「はい!私の名前はリア・ライガ・ラースファリーと申します!この度は私の指輪を見つけて貰って、本当にありがとうございます。」
リアは、少し顔を赤くして感謝の言葉を述べた。
「それでは、指輪をお返しします。」
ケンはリアに指輪を渡した。
「本当にありがとうございました・・・それでは、ごきげんよう。」
そう言って、リアは立ち去った。
「ところでイッサ、さっきのは当然・・・」
「社交辞令だ。」
「そうだよな、分かっていても聞いちゃうんだよな・・・」
「姫と言う存在は、出会う奴からの社交辞令で食っている様な物だからな。こんな口だけの社交辞令なんて何とも思ってないだろうよ。」
「そうだったのですか・・・私って社交辞令が食事なんですね・・・」
「「うひゃい!!」」
リアが戻って来たのだと思い、俺とケンはまた驚いた。
「ハハハ!!お前らビビり過ぎだ。」
「「その声は・・・ウェンディ!!」」
俺とケンが、さっき喋ったのはリアだと思っていたら、声の主はウェンディだった。
「全く、本当にビビった・・・これがリアだったら僕たちは処刑だぞ!処刑!」
「そいつは良いや、全世界の溜飲が下がる。」
「このチビ!ダンジョンに連れて行ってモンスターの餌にしてやる!」
「洒落にならない事を言うな!!」
ケンとウェンディが、こんなやり取りをしているが俺には気になる事がある。
「なぁ、二人とも・・・何で一国の姫がこんな夜中に町の中を歩けたんだ?」
「そう言えば・・・」
「何でだろうな?」
二人も気付いた様だ。
「明日、リアの事を調べるぞ。過去の出来事とか・・・」
「畜生、あと一歩で勇者が倒せたのに、口惜しや・・・」
誰かの夢の中で、誰かが寝言を言っている。
「ん・・・ここは・・・?」
そして、誰かが目を覚ました。
「ケンさん、久しぶりですね。」
「おぉ、イッサ・・・もう朝か?」
「僕はイッサではありません・・・死神です。」
「そうか、じゃあ死神。もう一度聞くが、もう朝か?」
「いえ、今は夜中では無いかと・・・」
「だったら起こすんじゃねえよ、朝まで寝かせて・・・」
「君は、あの姫を昔から知ってるだろ?」
僕はケンに向かって、こう言い放った。
「・・・まさか、僕は旅人だぞ?」
「本当に、君はただの旅人なのか?」
「当たり前じゃないか・・・僕はもう寝る。」
それだけ言って、ケンは眠ってしまった。
「だったら何でお前は、あれが王族の印の指輪だってすぐ分かったのかな・・・?あれと同じ種類の物はどこにでもあるのに・・・」




