死神との旅はいかがですか?
「うーん・・・」
あ、目を覚ましたみたいですね。
「・・・グゥ。」
と思ったらフェイントでしたか・・・良し、笛を吹いて起こしましょう。
「スゥ・・・良い音色だな・・・」
良かった、優しい目覚ましになった。
「こんばんは、賢い少年君。」
「なんだ?これは夢か・・・?」
「夢でも幻でも、今宵は僕から旅をプレゼントします。」
「旅・・・?」
少年は眠ったままだが、僕は笛を吹いた。
「うわぁ・・・綺麗な海だな・・・」
僕が笛を吹けば、海を映し出す事は容易い。その気になれば世界の終わりも出せるが・・・そんな事よりも、旅にはサプライズが必要だよな。
「うわ!モンスターが来た!私、戦えないのに・・・」
「おっと、旅の邪魔をしないでください。」
僕は、鎌を振り回して海のモンスターを退治した。
「大丈夫ですよ、今宵は僕が貴方を守ります。」
「・・・そうか、頼もしいな。」
そして僕はまた、笛を吹いた。
「おぉ!今度は月が昇ったぞ!」
「今日は満月ですから、見応えがありますよ。ほら、あっちから流れ星が降って来ました!」
「・・・」
少年は、手を合わせて願い事をしている。
「何を願っていますか?」
「私を虐める奴が滅びますようにと願った。」
「フフフ・・・」
「何がおかしいんだよ?」
「嘘ですね、貴方はそんな事を願っていません。」
「何を証拠に・・・」
「証拠なら、あの流れ星です。」
僕は、落ちて来る流れ星を指さした。
「流れ星がどうした・・・あれは!」
その流れ星を良く見ると、こっちに向かって来ていた。しかも中に人らしき物も見える。
「「ウェンディー!ウェンディー!」」
中にいる人は、何故か女の子の名前を呼んだ。
「お母さん!お父さん!」
「・・・こりゃ驚きですね、てっきり少年かと思ってました。」
「お母さん、お父さん、久しぶりだな!!」
やはりこの少年・・・いや、この子の親は亡くなっていたらしい。だから誰にでも知識で喧嘩を売る様な性格になったのだ。
「ウェンディ、学校生活はどうだ?辛くは無いか?」
「お父さん、私は豆腐の心なんか持ってないぞ。」
「友達は出来た?もしかして、あの人は彼氏?」
「お母さんのバカ野郎!あんな格好した変人が彼氏だったら私は自殺するぞ!」
「失礼ですね、この格好は死神の間じゃ制服なんですよ。後、僕は発育の遅い女は全くタイプじゃ無いので。」
「テメェ!やっぱり死神じゃ無くて蝶繭店でRPGをやった奴だろ!?」
「はて、何の事でしょうか?」
「畜生!!あいつ、いつか倒す!!」
ウェンディさんは、その後も楽しく親と話をしたのだが、そろそろ別れる時間になった。
「すいませんが、そろそろ別れの時間です。」
「そうか・・・すまんなウェンディ、もっと話をしたかったのだが・・・」
「お父さん、私はもう大丈夫だ!」
「しっかりご飯は食べるんだよ、学校に迷惑をかけないようにね。」
「何を言ってるんだ、迷惑なのは周りの方・・・あ、お父さんとお母さんが消えた。」
「死者があの世に戻る時は、全員そうなるんですよ・・・」
「それで、結局お前は何がやりたかったんだ?」
「貴方を、旅にご招待しただけです・・・」
「まぁ、そう言う事にしておくか・・・」
僕は、旅のフィナーレの曲を演奏する事にした。
「あれ?この曲はあの時の・・・」
「憶えてましたか、でもあれは単なるリハーサルに過ぎません。」
演奏を再開すると、周りの海や空が消えていった。
「確かに、あれとは比べ物にならないな・・・眠くなって来る。」
「さてと・・・そろそろ目が覚める頃ですね。」
そして海と空が完全に消え、死神との旅は終了した。
「イッサ、あいつがまた虐められるぞ。」
「あれはラースファリー学校の生徒のウェンディさん!助けに行きましょう!」
寮までファンナを迎えに行って、ギルドへ向かう最中に、この前俺と賭けをした奴が虐められていた。俺はすぐに向かい、虐めている奴の肩に手を掛けた。
「なに!?あっちへ行って・・・って貴方は!!」
「ようお前ら、久しぶりだな。」
「貴方達、帰りますわよ!!」
良く見たら、虐めている奴よりも前に賭けをした奴らだった。そいつらは俺に負けた記憶が蘇ったのか、虐めていた奴らは退散した。その中にはミーヤもいた。
「おい、大丈夫か?」
「・・・なんだよ、音楽の感想を聞きに来たんじゃないのか?」
「何を言ってるんだ?」
「まぁ、とにかくありがとよ。」
そして・・・ウェンディは立ち去った。
「イッサ、今回はそんなに過激じゃなかったな。」
「たまにはそんな夜も良いだろ。そんな事より、ギルドまで競争だ!」
「良し、よーい・・・スタート!!」
「最初から最後まで何の話ですか・・・と言うより待ってくださ~い!!」




