俺達は、未来を与えた。
「皆様、ようこそいらっしゃいました!」
俺は今、町の中で死神の格好をしている。
「今宵は、皆様の奮闘をご期待しております。では早速・・・」
「「「「ちょっと待てコラ!!」」」」
俺が話している最中に、客のカツアゲ共が割り込んで来た。
「どうかしましたか?」
「どうしてお前は俺達を夜中に呼び出したんだ!?」
「僕は貴方達と競走で遊びたいだけですよ。」
「競走!?」
「とは言っても、走るのは僕の友達ですけど。」
友達と言うのはケンの事だ。
「そいつと俺達が競走するのか?」
「厳密に言えば貴方達は町を一キロずつ、僕の友達は四キロ走ります。」
「なるほど、それだけそいつは速いのか・・・」
「しかし、それだけ疲れますからハンデとしては丁度いいと思います。どうですか?気晴らしにはなると思いますけど・・・」
「分かった、死神の招待を断ったらどうなるか分からん・・・」
なるほど、俺を本物の死神として認めた様だな。
そして、お互いに走る準備が出来た。
「では、僕が鎌を下ろしたら走って下さい。」
そして俺は、鎌を上げて・・・
「始め!!」
思いっきり振り下ろした。
「何だあの速さ!?」
カツアゲ共の一人が、ケンの速さに驚いた。ケンは四人分を走るので最初から全力など出せない筈なのだが、カツアゲ共の第一走者は全力で走っているのにケンは前を走っているのだ。さすが旅人をやっているだけはあって脚力はある。
「おい、早くしろ!」
気が付けば、カツアゲ共の第二走者が準備をしていて、後ろからケンと第一走者が来た。
「良し、タッチ!あぁ疲れた・・・」
第一走者はクタクタだが、ケンの方は全然疲れていない。
「おい、死神。」
カツアゲ共のリーダー格が俺に話しかけて来た。
「俺達にこんな事をさせて、お前は何をやりたいんだよ。」
「僕は貴方達と遊びたいだけですけど・・・貴方達が勝てば何か変わるかもしれませんよ。」
「変わるって・・・」
「そんな事より、第二走者が戻って来たぞ。」
話を聞いていたリーダー格じゃない方は、慌てて走る準備をした。どうやらリーダー格はアンカーらしいな・・・
「タッチ!」
第三走者にタッチして、第二走者は疲れ切って横になった。ケンの方は少しスピードが落ちて来たが、まだまだ余裕そうだった。
「・・・」
何故かリーダー格がポケットに手を入れている。
そして、ケンの後ろを走っている第三走者がリーダー格にタッチした。
「おい、お前!」
「ん・・・?」
リーダー格の言葉に反応してケンが振り返った。
「うわ!!」
その時、リーダー格がポケットから何かを取り出し、その取り出した物が光った。ケンは光で目が眩んだ。
「あばよ!!」
その間にリーダー格が走り出した。
「ケン、大丈夫か?」
「大丈夫だ・・・あいつ、閃光玉を使ったな?」
「あいつは俺のいたずらの仕返しをしたって事にもなるな・・・ケン、ここからは本気で行け。」
「分かってる・・・ハッ!!」
俺は死神の口調を忘れるほど怒り、ケンに全力で走る事を指示した。
「おい、お前のダチが一瞬で見えなくなったぞ・・・?」
「お前ら、勝つのは困難と思え。俺達を本気にさせたら怖いぞ・・・?」
「と言うか、死神の演技を忘れているぞ。」
「あ、すいません。我を忘れていました・・・そんな事よりアンカーが戻って来ましたね。」
カツアゲのリーダーは、笑っていた。大方、勝ちを確信しているのだろう。だけど・・・
「アァァァ!!」
あんな声で、俺の友達が全力で追いかけて来たらどうかな?リーダー格が俺が張ったゴールテープに着くまで十メートル位だが、ケンがあの気迫で走ったらどうなるかな?あ、リーダー格がゴールまで数メートルだ。だけど、ケンはすぐそこまで追い付いている。後少し、後少しで・・・
「よっしゃ!!俺達の勝ちだ!!」
勝てたのだが、あと一歩で俺とケンは負けてしまった・・・
「どうだ死神!俺達が勝ったぞ!」
「いやはや、怯ませるために使った閃光玉、最後の必死の振り切り、どちらも実に見事でした。」
俺は、閃光玉は反側だと思っていない。
「さてと、死神の挑戦に打ち勝った貴方達にはプレゼントを差し上げましょう。」
「死神からの報酬だから期待できるな。」
カツアゲ共は盛り上がっている。
「貴方達には・・・未来をプレゼントしましょう!」
「「「「・・・未来?」」」」
カツアゲ共はキョトンとした顔をしている。
「さてと、お別れの時間です。さようなら・・・」
そして俺とケンは、カツアゲ共の目の前から消えた。
翌日、街中にモンスターが現れた。モンスターは無事に討伐され、被害に遭った住民は保護されるらしい・・・
「これで、解決だな。」
「あぁ・・・カツアゲ共の親は兵士が全員、消した。それに保護されている身だったら虐めなんかやらないだろう。」
「しかし・・・やっぱりスッキリしないな。」
「当たり前だよ、未来を手に入れるには邪魔な物を排除しなければ話にならない・・・トラブルの原因を、世の中が排除してくれないんだったら俺達が排除するしかないだろ。その邪魔な物をスッキリ排除するなんて無理なんだよ・・・」
こうして、虐め問題は解決した。




