第1話 ありがとう
一言コメントお願いしますね~♪
俺はマサト=オルネオ。今日で15歳になる。
家族はカリアとリカの二人で三人家族だ。ベルネトスっていう町に住んでて(これがまたでっけぇ町で、町じゃなくて都市って感じだ)、海に近いせいか、結構賑わってるんだ。そしてそのせいか、なんとか三人でも暮らしていける。
周りと比べたら家も畑も小さいし市場からも結構離れてて。でも結構気に入ってるんだわ、この家族。
んで、俺はこれから俺の姉さんにイタズラしに行くってわけだ。
(今頃は畑にいるな。)
そう予想をつけて家から出てみれば、薬草の手入れをしている姉さんの姿が。
「なぁ、おばさん。」
ゴンッ
どこから持ち出したかわからねぇフライパンでたたきやがって。頭が凹んだらどうすんだ。
「いてっ。何すんだよ!」
「だ・れ・が、おばさんだ!」
こいつが俺の姉のカリアだ。全くいい歳して結婚でもしてくりゃもう少し生活が楽になるのによ。
「いいじゃんかおばさんでも。」
「良くねぇよ!まだ25だ!」
(……足す5で三十路じゃねぇか……。)
「てめぇ…。晩飯抜くぞ!」
「へーだ!みーそー」
バチッ!!
次の言葉をいい終えない内に身体中に電流が走り、そのまま目の前が真っ暗になっていく。毎回毎回やり過ぎって言葉知らねーのかよ。
「うっ。」
(いってぇ。ここは……なんだ、俺のベッドか。)
まだ痛む頭を抑えながら体を起こすと、そこにはカリア姉が…。
外はもう夕方だ。あぁ、夕日が眩しいな。
「やっと起きたか、ガキ。」
「ガキじゃねぇ!」
頭を強く打ったせいか、まだ目が眩む。
「マサト、大丈夫?」
隣で心配そうな顔をしているのはこの家の次女で姉のクロッテ。優しい優しいクロッテ姉さんだ。
「あぁ。なんてことない。ありがとうな、クロッテ姉さん。」
あぁ、なんて優しいんだクロッテ姉さん。
一応ここで述べておくと、カリアは黒髪ショートでストレート、先がはねてるからカールと言った方が当っているのかな。
スタイルは……これは認めざろうおえないが、残念ながらすらっとした体型だ。顔は俺に似てイカついがな!
そして、隣に座って心配そうな顔をしているのがクロッテ姉さん。
黒髪のロングで正真正銘のストレート。とはいかず、遺伝子が同じせいか最後だけはクルリと曲がっている。高貴なオーラが出てて、容姿も少し幼さを伴った清楚で上品な姿である。ただし家族の中で一番背が高い。そりゃもう、女神像かと思うくらいにはな。
性格は見ての通りだ。カリアは乱暴、暴力、暴言の象徴で、クロッテはその逆。とっても優しくて、怒るときは怖いけど、でも最後には優しくなるいい奴だ。ここが似てなくて本当に助かっている。
「もう、お姉ちゃんやりすぎよ。」
お、クロッテ姉さんが援護してくれた。しめしめ。
「私は悪くないわ。こいつが悪い。」
すかさず言い返す。
「俺も悪くねぇ!」
「「……。」」
こえぇよ、二人して俺を見るなよ。
「マサト。今回はあなたが一番悪いのよ。反省しなさい。」
くっ、今回のクロッテ姉さん作戦は失敗か。
「あははっ!」
カリア姉が突然笑い出した。
「笑うな!」
「だからいつになってもガキなのよ。」
俺たちはずっとこんな毎日を過ごしていたかった。
だけど、もう無理かもしれない。
「なぁ、カリア姉さん。」
「何?改まって。」
「俺、戦争行ってくる。」
「知ってる。マサト、死んだらだめだからな。帰ってこいよ。」
カリア姉もクロッテ姉さんも、顔にはださねぇけど泣いてるように見える。俺だってそうかもしんないな。でも仕方ない。
今朝方に徴兵の知らせがあって15歳以上の男は強制参加って話だ。この家には男が俺しかいないから隠すにも隠せないって話だ。
「分かってる。絶対帰ってくる。でも心配だからって扉の鍵開けたままにしとくなよ。」
今夜は家族とゆっくり過ごそう。明日を生きて帰るために。
翌日。慌ただしい音と剣戟の音が鳴り響く中で目が覚めた。
「なんなんだ、うるさいな。」
音の正体を突き止めるため、兵士の演習の音かとあたりをつけながら扉を開く、と。
「なんだよ、これ。」
辺り一面。赤色だった。
あまり考えたくない、想像を絶する光景だった。通路では兵士達の怒声と叫び声が聞こえ始め、敵の侵入を知らせる鐘が鳴り響く。
再度辺りを見渡すと、町の東側の外壁から家の屋根づたいに見慣れない兵士が跳んでくる。敵の魔術兵かもしれない。
一人一人が次々と違う家に入っていく。
そして、赤く染まった剣が家から出てくる。
(やばいっ!)
断片的だが、明確な危機を感じた俺は急いで家に戻り、二階で寝ていたカリアとクロッテを一階の物置に隠す。それで、物置はいっぱいになった。どうにもここら辺りでは隠れられそうにはない。
「ちょっと、マサト!どうした。」
「マサト、どうしたの。」
二人がしつこく聞いてくるがそんなの無視。
返事してる場合じゃない。
「いいか、絶対しゃべっちゃダメだ。何があっても。」
だけど諦めきれるか。
(まだ、やれることは。)
台所から鉈と包丁を取り出す。それから物置部屋へ通じる一本の廊下に立つ。
そして。
来た。
赤黒い影が。
「はぁ!!」
声と同時に相手が短刀を引き抜き、俺の生き残りがかかった戦闘が始まった。
左、右下、上、真ん中、下……
一本の短刀と二本の鉈と包丁が打ち合う。
剣の動きならなんとか目で追える。
グサッ
バキッ
ゴンッ
スパンッ
でも俺には無いものがあった。それはいくらこっちの手数が多くても抗えないもの。
魔法。
姉さんが使うときは魔方陣が出るから避けられるのだが相手は玄人。最小のサイズの魔法を空いている左手で最速最短のスピードで打ってくる。
ドンッ
パリッ
ピキッ
バリンッ
それは徐々に俺の体力を削り 、次第に体が動かなくなっていった。
ズバッ
やがて一本の短刀が俺の胸を貫く。
意識が一瞬遠退く。
(まだだ!)
俺はその腕を掴み、そして相手ののどを貫いた。
すぐに腕はふりほどかされ、俺は(おそらく黒い影も)床に倒れた。
消えゆく視界に二つの顔が見える。
「おい!しっかりしろ!」
「カ……リ……」
「喋んな!」
「…ク…………ロ…」
「マサト、無理はダメ!」
「…………あ……り…」
「言うこと聞けよ!!」
「が………………と……。」
「マサト!!」
「マサト!」
もう目には何も写っていない。
でも、不思議といろんな景色が見える。
あぁ、カリア姉さんだ。
『どうしたの?』
『おウチもお父さんもお母さんもお日さまが!』
『お日さまが?』
『みんな黒くなって……。』
『……燃えちゃったのね……。ねぇ、名前は?』
『マサト。』
『そう、マサトくん。今日からうちに来なさい。』
『でもお父さんが!お母さんが!』
『……もう死んじゃったのよ。』
『嘘だ!帰ってくるもん。お父さんも……お母さんも……』
『二人は帰ってこないわ。』
『嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。』
『何をしても帰ってこないの!!』
『うわーん』
『そう、今はいっぱい泣いて。泣き終わるまで待ってあげる。』
『うわーん、お姉ちゃんー。』
『そしてスッキリしたら、ウチに行こ。きみは一人じゃない。今のきみには私と妹の二人の家族がいるもの。』
あぁ、あの日、カリア姉ちゃんは俺を家族にしてくれたんだ。あの時は夕方だっけか。
夕方…。そういやまだカリア姉ちゃんと喧嘩したまんまだったな。クロッテ姉さんも怒っていたし。
ごめんな、カリア姉ちゃん
ごめんな、クロッテ姉さん
あんなに心配してくれたのに……
もうすぐ死んじまう。
でも、だからこそ、もう少し生きて話したい
カリア姉ちゃん
クロッテ姉さん
家族になってくれてーーーーーー
「ありがとう」
以前一話だけ投稿していたのを改めて投稿しました。このまま続くか分かりませんが、感想をいただけると幸いです。以前のプロットが残っているか心配です。