前編
高橋「これが最後のチャンスだな……」
チームメイトの高橋はオレに話しかけた。確かに……これがオレにとっても最後のチャンスだ。
今は後半ロスタイム。もう時間は残りわずか。このフリーキックが最後のワンプレーとなるだろう。
この試合はOリーグの優勝決定戦。
我ら「大宝アベントス」と因縁のライバル「昭和ウンチクーズ」の対決だ。
両サポーター計4万人を迎え白熱した試合は、ついに両チーム得点を加えることなく後半ロスタイムを迎えてしまった。
この試合に延長戦はない。だからこそ我ら「大宝アベントス」には1点が必要なのだ。
そう…。引き分けでは得失点差で不利な我々の敗けが決まってしまうのだ。
このフリーキックは絶対に決めなければならない。
高橋「しかし内田が敵ディフェンダーから、張り手を喰らってくれたおかげだな。最後のワンチャンス、ものにしようぜ。あごが外れて緊急入院しちまった内田のためにもな…」
オレ「……なぁ、高橋。今日はなんの日かわかるか?」
高橋「今出、どうしたんだ? やぶからぼうに」
オレ「いいから…なんの日かわかるか?」
高橋「……そりゃ決まってんだろ。大宝アベントスの記念すべき初優勝の日さ」
オレ「…………全然違う」
オレは高橋に聞こえないぐらいの声で呟いた。もちろんその声は高橋に聞こえなかった。
オレはチームメイトに3つの隠しごとをしていた。
〜つづく〜




