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10.侍女も戦えます

正直なところ、ラミナス様があんなに腕がたつとは思わなかった。

それは私だけじゃなく、会場にいる多くの人たちが感じただろう。

あろうことか、騎士団の団員の半数以上は減っている中に残っているのだ。

あれだけ注目の的だったのに、まるで隠してきたかのように強いなどの類いの噂ひとつなかった。

なぜ隠す必要があったのだろう?

そしてなぜ今回それを表に出そうと思ったのだろうか?


とにもかくにも、ラミナス様の次の相手はアラク兄さんだ。

アラク兄さんが負けることなんてないとは思うが、今までのラミナス様の戦いぶりを見ると万が一ということもある。

もちろんアラク兄さんを応援するに決まってるわ。

今はプライベートだし、仕事の主人を建てなくたって別に……。


「アラク兄さんなら、ラミナス様にだって簡単に勝てちゃうよ!」

「そんなことないわ!」


ハロルドの何の気なしに言ったことに思わず強く否定してしまい、自分で戸惑った。

ハロルドが目をぱちくりさせて私を見つめていたので、乾いた笑顔を顔に貼り付けた。


「か、簡単ってほどじゃないってことよ。それでもアラク兄さんが勝つに決まってるわ」


なんでこんな言い訳染みたようなことを言ってるんだか……。

少しでもラミナス様が勝つと思っているから?

それとも、少しでもラミナス様のことを勝つようにと応援してるから……?

そんなまさか!

アラク兄さん以上に、どうしてラミナス様を応援する必要があるっていうの!?

きっとまだ仕事感が抜けないんだわ!

そうに決まってる!


「……喉乾いちゃったわね。飲み物でも買ってくるわね」

「え?もう始まっちゃうよ」

「すぐ戻るわ」


一旦落ち着こうと、私は席を立った。


そもそもどうして私がこんなことで頭を抱えなきゃいけないの……。

プライベートまでラミナス様に振り回される必要なんかないんだ。

オンとオフの切り替えが十分できていない証拠に違いない。

私は人の間を縫うようにして、会場から抜け出した。


会場から少し遠くまでくると、温度は随分と下がってくる。

さっきまで火照っていた身体もすーっと温度を下げていった。

同じように熱を冷まそうと会場から出てきた人がちらほら見えており、しかし顔を興奮を隠しきれていない様子である。

会場への入り口は貴族と一般とでは別なため、ここには貴族らしい人しか見当たらない。


「そろそろお戻りになりませんか?次はラミナス様がお出になられますよ」


その会話につい反応してしまった自分を、少しだけ恨めしく思った。

しかしもう耳に入れてしまったので、気にしないようにすることが難しくなってしまう。

近くでベンチに腰を下ろした私と同じ年ぐらいの娘の貴族たちが、桃色と黄色のドレスに身を包みながら可愛らしく笑いあった。

根っからの貴族らしい仕草に、恐らく自分よりも身分が高いだろうと解釈する。


「お相手はあのアラク様でいらっしゃいますしね。クレア様はどちらを応援なさるんですか?」

「そうね。あのブレのないクールさと、でもどこか暖かみのあるアラク様はラミナス様のように魅力的だわ」


アラク兄さんってそんな風に噂されていたのね……。

慣れっこといえば慣れっこだけども。


「でもわたくしはラミナス様を応援するわ」

「クレア様はラミナス様一筋でいらっしゃいますものね」


やはりラミナス様人気は健在らしい。

顔はともかくとして、あの何を考えているのか分からない性格を間近で見ていると、とてもお薦めできる人物とは言えない。


「そういえば、カルノリア家の長女がラミナス様付きの侍女になったってあの噂、本当なの?」


ギクッ

なぜか肩がぴくりと反応する。


「えぇ、アマリリス様ですわ。ラミナス様のお近くにいらっしゃることが多く見掛けられておりますし、本当みたいですね」

「ふーん。カルノリア家の長女って、確か名前負けの子でしょ?ラミナス様も物好きよね。目ばっかり肥えちゃった子を傍に置いとくなんて」


散々言われ慣れていたことを、ラミナス様の侍女になったことでまた繰り返されている。

慣れてはいるけど、辛くないわけがない。


そういえば、クレアとはサンブリオ家の一人娘だ。

傍にいるのは、その侍女の人かもしれない。

家よりも確かに身分は上だ。


「でもアラク様やアレク様、メルダ様の妹でしょ?ほんっと、やりにくいわよね。調子に乗らなきゃいいけど」

「まぁ、クレア様ったら」


って、笑うところではないと思うのですが。

何がやりにくい?

何が調子に乗るだって?

言いたい人には言わせておけばいい。

こういう時には放っておくのが一番だ。


「ごきげんよう、クレア・サンブリオ様」


頭では分かっているが、どうも行動が伴わない時がある。

同じことを繰り返してもなくならないのは見に染みてわかってはいるが、このまま何もしないのはただの泣き寝入りだ。

私だって戦うときは戦える。

クレアとその侍女はぎょっと私を凝視しながら、少し焦った表情をした。

が、そんなのは一瞬で、次の瞬間にはにっこりと微笑んでいた。


「あら、ごきげんよう。確かアマリリス様でいらっしゃったかしら?」

「ご存知くださったのですね。嬉しいです」

「もちろんですわ。だってカルノリア家の長女でいらっしゃる方ですもの」


言ってくれる。

クレアはすっくと立ち上がり、同じ目線の高さから私を見つめた。

喧嘩を買ってやる、という挑戦的な目に見えなくもない。


「クレア様は次の試合はご覧にならないのですか?実は次の試合は私の兄が出るんです」

「存じておりますわ。ラミナス様と試合なさるんでしょう?」

「そうなのです。もうどちらを応援したらよいか悩んでしまって」


そこでフフフと笑えば、少しは相手が悔しい思いをするだろう。

アラク兄さんとラミナス様を使って姑息だとは思うが、こういう時は使えるモノは使うべきだ。

案の定クレアはぴくっと頬を一瞬歪めた。

そうとわかれば私の仕返しは終わりなので、早々に「では、これで」とその場を後にした。

ところがクルリと身を翻した先に、ドンと背の高い男性が立っていた。


「ひゃっ!」


驚いて声を上げると、男性はきょとんとした顔をすまなそうな顔にして身を引いた。

特に何をしようと思ったわけもないようで、男性のあけてくれた横を通りすぎた。

クレアの従者か何かかもしれない。

もしかしたらクレアともう少し何かあったら、彼に力付くで止められていた可能性もある。

そう思うと少しばかり危険なことをしていたようだ。




「あの」


しばらく歩いたところで、男性の声に振り返る。


「え!?」


先の男性が何を思ったのか、自分に着いてきていた。

やられるかめしれないと、背筋が凍った。



変なとこで区切ってしまってすみません。

あまりにも長くなりそうだったので、ラミナス様登場しないまま終わってしまいました…。

早くアラク様と戦っていただかないと、武道大会がいつまでたっても終わりません!


焦りを失礼いたしました。

ユニークアクセス三万突破です!

ありがとうございます!


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