僕も彼女もいずれは戦地に赴く。それでも恋をして、戦争が終わったら結婚するために再会を約束した。そんな僕たちの末路
僕が彼女と出会ったのは、空のない町だった。
僕たちの祖国、アルヴェリア王国のその地下四百メートルにある分厚い岩盤をくり抜いて造られた学徒兵訓練地下都市グランツには、朝も夜もない。
午前六時になると、天井を這う魔導灯が白く灯り、午後十時になるとそれが消え、僕たちに一日の始まりと終わりを教えてくれるのは、それだけだった。
地下都市には学校があった。食堂にカフェテリアも、商店も、小さな広場もあった。笑い声だって聞こえる。一瞬、戦争時中であることを昨夜に見た悪夢だと思うこともあった。
けれど周りは僕と同い年の人しかいない。ここで暮らすのは十六歳から十九歳までの若者だ。僕らは元は学生であったが、今は学生ではない。
僕たちは兵士だ。
戦争が始まって、八年。僕たちの国、アルヴェリア王国は東部でも西部でも敗走を続け、とうとう男女問わず、十七歳以上の学生まで徴兵するようになった。
僕、ノア・エルフィンもその一人だ。
人々の病を癒す薬草学の研究に励んでいた僕にとってはもっとも不本意なことであった。
「ノア・エルフィン!射撃訓練がまたしても最下位とはいかがなものか!」
「……はい」
「魔力操作テストも不可だと……全く!貴様、本当に生き残る気があるのか!」
「あります……」
「気合いが、根性が、覚悟が足らんのだ!」
教官の怒鳴り声を浴び、体罰を受けながらも僕は訓練に励んだ。
生き残りたいのはもちろんだ。僕は死にたくないし、できることなら戦いたくもない。
でも才能がないものは、どうしようもないじゃないか。
毎晩、消灯時間ぎりぎりまで教本を読んで、魔力操作や射撃訓練だって、人より多く残って練習している。それでも弾は的を外れるし、術式は途中で崩れる。精神論でなんとかなるのなら、僕はとっくに優等生だよ。
そうは言っても、戦地に駆り出されば、劣等生である僕は、やはり死ななければならないのか。
──こんな時代に生まれたくなかった。
心の中での口癖になっていた。
でもそれは僕が彼女に出会うまでの話である。
⭐︎⭐︎
地下都市に来て三ヶ月が経った休日、僕は魔力操作の補習の帰り道、不意に後ろから声をかけられた。
「あのっ」
振り返ると白銀色の髪を肩まで伸ばした大きな丸目の美少女が立っていた。
その少女の胸元には青い徽章が付いていた。
それは首席候補生だけに与えられるもので、僕とは違って、戦地で活躍し、何より戦地での生存率の高さを証明できるものだ。
高嶺の花とはまさしく彼女のような人を言うのだろう。僕なんて人々や動物に踏んづけられまくって、いつの間にいなくなっている雑草。
そんな雑草に高嶺の花の彼女は笑顔を浮かべた。
「これ、落としましたよ」
彼女が差し出した手には、僕の学生証があった。慌ててポケットを探る。
「あれ……あっ、ない」
「これ無くしたらめちゃくちゃ怒られますよ?気をつけてくださいね」
「ありがとうございます。全然気づかなかったです」
「どういたしまして」
学生証を受け取った瞬間、彼女は僕の顔を見てくすりと笑った。
「あの…なんか変ですか?」
「あっ、いや!違くて!」
彼女は勢いよくかぶりを振って、逡巡を見せた。
「そ…その…嬉しくて……」
「何がですか?」
「学生証見ちゃって……その……同じ村出身だったので」
「え?」
戸惑いの声を零す僕に、彼女は学生服の胸ポケットから学生証を取り出した。
学生証には、リシア・アーベルという彼女の名前と出身地の欄に僕の故郷の村の名前が書かれていた。
「ルーネ村出身!?」
「はいっ!」
満面の笑みを浮かべる彼女と僕は同じ村の出身だった。だけど今日が初対面だった。
中心に大きな湖を抱えたルーネ村は山と森に囲まれた小さな村である。半日もあれば村を一周できるくらい小さな村に、生まれてから十七年間も住んでいて、一度も会ったことがなかったというのは数奇な運命だと思った。
同じ故郷で生まれた二人が、その故郷から何千キロも離れた地下都市で初めて出会ったのだから。
「ノアくんは何歳ですか?」
「今年で十八です」
リシアは目を見開く。
「わお!私も今年十八だよ!てか同い年じゃん!タメじゃん!」
よほど喜んでもらえたのか、リシアは僕の両手を握り、ぶんぶんと振り回す。
「そんなに嬉しいことかな?」
「当たり前じゃん!あぁ、これを運命の出会いっ言うんだよ!きっと!」
「そんな大袈裟な」
「そもそもさ、私たち会ったことないよね?」
「ないね」
「あんな小さな村なのにどうしてこのタイミングで出会ったんだろうね。全く、神様はいたずらが好きなんだね」
そう言って、リシアは無邪気に頬を赤くして無邪気に笑う。
『このタイミング』か。確かに、今はの際に同郷で同い年の女子と初めて知り合うなんて、神様が僕たちに対する侮辱行為だとさえ思える。
行き場のない憤りを感じる中、彼女は相変わらず笑顔だった。
そんな彼女の笑顔はさっきまでネガティブ思考だった僕の心の曇天を晴らす太陽のようで、不思議と僕にも彼女のような笑顔が伝染した。
「確かに。神様なんて糞喰らえだ」
「糞は喰らえないよ。神様はお米が主食なんだよって、おじいちゃんが言ってたもん」
「米食ったって、僕たちは理不尽な仕打ちを受けてるじゃないか!不公平だ!だからいつか糞を喰らわしてやるんだ!」
「神様ー!逃げなきゃ糞をお見舞いされるよー!」
僕たちは顔を見合わせて笑った。
お腹を抱えながらシルクのように美しい白銀の髪を揺らして笑うリシアはどんな女神様よりも美しいと思った。
ここに来て初めて、僕の人生が少しだけ救われた気がした。
⭐︎⭐︎
それから僕たちは、休日になるたびに会うようになって、友達になった。友達から親友になって、ついには恋人になった。
この地下都市では、学徒兵同士の交際は禁止されていない。
ただし結婚は禁止。もちろん子供をつくることも禁止。性行為すら禁止で、犯せば男女ともに重大な軍規違反として、処刑されることもある。
僕たちの場合は、その規則の意味を深く考えるよりも、よく口を揃えて言った。
「「戦争なんて大っ嫌い」」
訓練で怒られたり、嫌なことがあったら、僕たちは合言葉のように小さく言って、くすくすと笑う。
とはいえ、リシアは僕とは正反対だった。
魔力操作、射撃訓練、筆記試験すら首席だった。
さらに出征までに会得困難とされる飛行魔法さえも会得し、近接戦闘技術も実戦経験者の指揮官と渡り合えるくらいだった。
「どうしてそんなに何でもできるんだよ」
休日デートの散歩中に僕が尋ねると、リシアはふふっと笑みを浮かべながら胸を張って答えた。
「努力してるからですかね」
「僕もしてるんですけど」
「じゃあ最近はどうなの?」
「最下位に決まってるじゃないすか」
「知ってる」
「なっ!ちょいと、それはひどくないかっ?」
「まあ確かに!ごめんごめん」
「はあ…どうもすいませんね。ゴミカス兵士彼氏で」
「いやそこまで言ってないしっ!」
どうかな。と自嘲気味に笑みを零すと、突然両方の頬を柔らかい手が包み込んだ。かと思えば無理矢理、僕の顔は隣にいるリシアに向けられた。
視界いっぱいに頬を赤くしながら、潤んだ瞳を左右に彷徨わせる彼女の顔が映る。
「大好きだよ……ノアくんのこと」
心臓が早鐘を打つようにうるさくなる。
「お…おう」
「言葉だけじゃ、わかってもらえない……よね」
「いや、十分わかったよ」
「嘘だよ」
「嘘じゃないって」
「んーん、信じられない」
「じゃあどうしろと?」
そう言った瞬間、瞳を閉じたリシアと唇が重なった。
柔らかい唇を密着させながら、お互いの愛を確立させるようにその温もりを享受した。
何度も、何度も……。
今この瞬間が永遠に続けば良いと懸命に願った。神様は当てにならないとわかっていても、都合の良い愚行だとわかっていても、ただただこの時間が少しでも永く続くことを願った。願ったけれど、僕たちの別れの日は足音を立てずにすぐそこまで迫っていたのだ。
⭐︎⭐︎
その日は、付き合ってちょうど半年が経った休日だった。
中央広場の掲示板に、派遣命令が貼り出された。
リシアと手を握り、人だかりを掻き分け、掲示板に目を向けた。
僕たちの名前がないことを祈りながら、名簿を順番に確認していく。
そして、見つてしまった。
【東部戦線、第三学徒魔導大隊 リシア・アーベル】
【西部戦線、第十一学徒歩兵大隊 ノア・エルフィン】
何度も見直した。悪夢だと願ったが、もちろんそんなはずはない。
残酷にも現実だと理解するやいなや、僕は今この瞬間、自分が生きているのかわからないくらい感覚が散漫になって、その後のしばらくの記憶が飛んだ。
気がつけば、僕たちは意味もなく人気の少ない高台へと向かって歩いていることと、手が力強くリシアに握られていることに気づく。
高台に着き、ベンチに腰掛けて眼下に広がる地下都市の建物を眺めながら無意識に呟いた。
「逃げようか」
「え……」
「二人で」
隣りに座るリシアに振り向くと、目を見開く彼女が視界に入る。
そうだ。僕たちは戦争なんて大嫌いなんだ。
国のためだとか、先人たちも戦ってきたのだから戦えとか、そんなこと知ったことじゃない。
国から出ていけと言うなら喜んで出て行ってやるくらいだ。
僕たちはまだやりたいことがたくさんあるんだ。それに最愛の人と天寿を全うし、時間が許す限り愛し合いたいんだ。
だから死ぬわけにはいかないんだ。
「ルーネ村まで逃げて、タマリ山に隠れよう。険しい山だけど、中腹あたりに洞窟があるんだ。湧き水があって、山菜も豊富だ。終戦まで二人で隠れればきっと──」
「ノア」
リシアはゆっくりと首を横に振る。
僕だってそれが所詮、絵空事になるのはわかっている。それでも、例えこの絵空事が無謀なことだとしても、その可能性を否定したくなかった。
「大丈夫。僕らならなんとかなるさ。全てうまくいく」
「無理だよ」
「そりゃあ、地下から地上への脱出は警備がきついのはわかっている。逃げたところで僕たちは咎人になることだってわかってる」
「家族も同罪よ」
「でもまだ一か月ある。僕はもう落ちこぼれじゃないし、可能性は低いかもしれないけど戦地に行くよりはマシだ。家族だって助けて、皆で山に籠もればいい」
「ノアくん…それは考えがあまいわよ」
「は?諦めるのか?やる前から尻尾を丸めて、わざわざ死に戦地へ向かうのか?いや、君は死なないよな。首席なんだし。怖くないよな。でも僕は──」
「私だって怖いよ!」
初めて、リシアが怒鳴って、歯を食い縛る。
「私だって、行きたくない!戦いたくない!ノアくんだけじゃないよ!……わかってよお……」
堰を切ったように涙を流しながら彼女は力のない拳を何度も僕の胸に叩きつける。
「離れたくない……」
震える声で彼女は呟く。そうしてまた小さく呟いた。
「ずっと一緒にいたい……」
「……ごめん」
「ノアくんに……死んでほしくない」
僕は彼女を抱きしめる。
「ごめん…ごめん…ごめんなあ」
僕も泣いた。
お互い、子どものように声を出しながら泣いた。
それでも僕は幸せ者だと思った。
この期に及んでも、僕を想ってくれている恋人が僕のために泣いてくれたのだから。
⭐︎⭐︎
出征前日。
リシアは僕を地下都市の外れにある、小さな礼拝堂へ連れていった。
婚約式をするためだった。まあ牧師はいないから、当然ごっこみたいなものだ。それでも僕たちにとっては大切な婚約式だった。
「帰ってきたら、戦争も終わってるはず。だからすぐに結婚しようね」
リシアは笑って言った。それでもいつもの笑顔とは違った。
泣きそうなのに、無理やり笑っているような顔だった。
そんな彼女に、僕は涙を堪えるために言葉が詰まり、何も言えなくなった。
頷き、涙を浮かべた目を細めて、彼女の手を握るしか出来なかった。
外の光がステンドグラス越しに差し込む礼拝堂の壇上で、僕たちは売店で買った、安い銀色の指輪を交換した。
結婚をしたわけでもないし、家族になったわけでもない。
明日になれば、僕たちはお互いに何千キロも離れた国境の戦場へ送られる。
それでも人生で一番、嬉しかった。
そして人生で一番、悲しかった。
⭐︎⭐︎
婚約式の後、僕たちは中央広場のベンチに並んで座った。
頭上には、相変わらず偽物の星空が広がっていた。
「約束しよう」
リシアが唐突に口を開いた。
「何を?」
「戦争から帰った後、外の世界で待ち合わせる約束」
「いつ?どこで?」
「戦争から帰ったら、私たちの故郷にある、私たちのお気に入りの場所、ルーネ湖で待ち合わせるの」
「ルーネ湖で再会かあ。うんうん。確かに絵になるな」
「でしょ?にへへ。シチュエーション大事だよねえ」
「あっ、でもあの湖、結構大きいし、目印になるような場所ないよ?」
「だから湖のほとりなら、どこでもいい」
「それ大雑把すぎない?」
「歩いて探せば、まあ一日あれば会えるでしょ」
「面倒だな」
「いいじゃない」
リシアは笑った。
「会えるまで歩けばいいんだから」
僕も笑った。
「確かに。簡単だな」
「でしょ!」
そう言った後、リシアは笑顔を引っ込めて、真剣な眼差しで僕を見つめた。
「だから絶対、生きて帰ってきて」
「リシアも」
「私は優秀だから大丈夫」
「また言う。言っとくけど、僕だってもう落ちこぼれじゃないんだぞ」
「それでも心配」
「ひどっ!てか最後くらい──」
言葉を止めるようにリシアの唇が僕の唇を塞ぐ。舌を絡めながら、僕たちは両手の指も絡める。彼女の右手のくすり指に、昨日買ったばかりの指輪の感触を感じる。
唇を離したあと、リシアは星空のようにきらきらと潤んだ大きな丸い瞳を向けて言った。
「生きて」
僕も握り返す。
「当たり前だ」
「英雄にならなくていい」
「うん」
「立派に戦わなくていい」
「うん」
「逃げてもいい。泣いてもいい。格好悪くてもいいから」
リシアの声が震える。
「お互い生きて帰ろ」
「約束する」
「……本当に?」
「本当に」
「絶対?」
「絶対」
「じゃあ、私も約束する」
「故郷の湖で会おう」
「うん」
「戦争が終わったら、僕は必ず行くから」
「私だって」
そうして僕たちはもう一度、唇を合わせた。
⭐︎⭐︎
翌朝。
久しぶりに地上へ出た僕たちは別々の列車に乗る。
東へ向かう列車。西へ向かう列車。
同じホームから出るのに、行き先は正反対だった。
僕たちはホームの端と端で、互いに手を振った。
先に汽車に乗ったの僕だった。
汽笛が鳴り、車輪が軋む車窓から僕は身を乗り出して、彼女に近づいていく。
「リシア!」
彼女が笑顔を涙で濡らしているのがわかったが、それでも僕は叫んだ。
「絶対、約束を守るから!だから、リシアも約束を守れよ!」
リシアは涙を乱暴に腕で拭い、大きく手を振り叫んだ。
「ノアくん!愛してるからああああ!ずっとずっと!愛してるうううう!!」
列車は無情にも加速していく。
小さくなる彼女へ、僕はずっと手を振り続けた。
やがて、見えなくなった。
それが僕が聞いた、彼女の最後の声になった。
⭐︎⭐︎
戦争は、僕たちが出征した翌年に終わった。
僕たちの国は負けた。
王都は陥落し、国王は退位した。アルヴェリア王国は事実上、消滅した。
それでも僕は生き残った。
もちろん英雄にはなれなかったし、立派にも戦えなかった。
怖くて泣いたし、逃げたこともあった。
何度も死ぬかと思った。
右腕だけは戦場に置いてきたけど、それでも生きた。
そして戦争が終わって三か月後、僕はルーネ村へ帰った。
片腕になった僕を、父さんと母さんは泣きながら抱きしめた。僕も泣いた。生きて帰ってこられたのだから。
そして約束を守るため、帰宅した翌朝、さっそく僕は湖へ行った。
リシアはいなかった。
次の日も行ったがいなかった。
一週間後も、一か月後も、一年後も。
リシアは湖に姿を見せなかった。
東部戦線の記録は、撤退時の混乱でほとんど失われていた。戦死者名簿にも、捕虜名簿にもリシア・アーベルの名前はなかった。彼女は行方不明扱いになっていた。
だけど僕は約束を守ってくれることをただ待つことにした。
だって彼女は首席のエリート兵士なんだ。
死んだ事実がないなら、それは生きているってことだ。だから必ず帰ってくる。
それで十分だった。
⭐︎⭐︎
そしてさらに五十年が経った。
今や僕と彼女を引き裂いた戦争は遠い昔話になった。
僕は六十八歳になり、白髪が増え、足腰もずいぶん弱くなった。
それでも気が早いかもしれないが、残った左手の薬指には、あの日交換した指輪がついている。
銀色だったはずなのに、今ではくすんでしまっているけど、約束はまだ覚えている。
「今日も、いないか」
今日も独り言を呟きながら僕は桜並木の湖畔を歩く。
遠くのピンク色に染まった山々を逆さに映しながら春のルーネ湖の湖面は相変わらず優しく凪いでいる。
そんな湖面を眺めつつ、リシアを探しながら一歩、また一歩と歩く。ゆっくりと若い頃よりも小さい歩幅で歩く。
急がなくて良い。
──湖のほとりなら、どこでもいい。
──それ大雑把すぎない?
──歩いて探せば、まあ一日あれば会えるでしょ
──面倒だな。
──いいじゃない。会えるまで歩けばいいんだから。
そう言ったのは、君だったから。
それにしても五十年か。あっという間だったよリシア。
戦争は終わり、僕たちを地下へ押し込めた国はもうないし、学生を戦場へ送る法律もない。
あの地下都市は、今では博物館になっているらしい。
結婚だって自由だし、誰と生きるのか、どこでどう暮らすのかも、もちろん自由だ。
今の若い子たちは、僕たちとは違って自分で決められる。
すごいなあ。僕たちがあの日、欲しかったものを、今の子たちは当たり前に持っている。
だから、僕たちだって誰にも怒られないし、命令だってない。赴かなければならない戦場もない。
だから帰ってきておくれリシア。
僕はまだ、湖のほとりを歩いて君を待っているから。
そう願った瞬間だった。
「………アくん!」
人通りが皆無な湖畔に、誰かの声が聞こえて、僕は足を止めた。
聞こえづらくなった耳をすませて、僕は声の主を探した。
「………ノアくん!」
やはりそうだ!
誰かが、僕を呼んだ!
「ノアくんっ!ノアくんだよね!」
僕を呼ぶ懐かしい声は背後から確かに聞こえた。僕は急ぎ振り返る。
その瞬間、五十年ぶりの涙が、渇いた頬を濡らした。
まだまだ未熟者で勉強中ですので、おかしい点や不明な点、また誤植、誤字、脱字があればぜひ教えてください!
あ、友達のように気軽に教えてくださいね!
もし仮に、上記に当てはまらず、純粋に良かったと思っていただいた場合はお星様★★★★★をお願いします。
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