ヒーローの見る街
また、
ヴィランが出た。
通信が鳴る。
……くそ。
今日は、
デート中だったのに。
「ごめん、
ちょっと用事できた」
彼女は、
呆れた顔で言う。
「えー、
またー?」
「……また」
その言葉に、
俺は、
少しだけ苦笑して、
空へ飛んだ。
ヴィランは、
電気を食う。
それは、
もう、
わかっている。
だが、
いつ出るか。
どこを狙うか。
それだけは、
誰にも、
わからない。
それが、
一番、
きついところだ。
現場は、
すでに暗かった。
送電が切れている。
やはりな。
あいつは、
いつもそうだ。
“電気がある場所”を、
喰いに来る。
俺は、
構え、
突っ込む。
激しい衝突。
衝撃。
視界が、
一瞬、
白くなった。
吹き飛ばされる。
……くそ、
派手だな。
そのとき、
見えた。
そこに、
あいつがいた。
発電機の横で、
淡々と、
ケーブルを繋いでいる。
まるで、
いつもの作業みたいに。
……またか。
救助者を、
助けてもらうこともある。
正直、
言えば、
避難してほしい。
ここは、
戦場だ。
だが、
あいつの
「いつもありがとう!」
その言葉に、
助けられているのは、
確かだった。
この前、
個人的に、
聞いたことがある。
「なんで、
こんな危険なとこに来るんだ?」
あいつは、
一瞬、
きょとんとしてから――
人差し指と、
親指をつけて、
金のマークを作った。
「金だよ、金」
「お前が倒してくれるから、
稼げる」
「マジで、
感謝してる」
……いい笑顔で、
そう言いやがった。
なんだ、それ。
最初は、
そう思った。
だが――
「あなたの奉仕の精神に共感しました!」
とか言うやつより、
よっぽど、
信用できる。
そういう連中は、
大体、
都合が悪くなると、
唾を吐きかけてくる。
「なんで助けてくれなかった!」
ってな。
……うんざりだ。
こいつは、
俺を使って、
金を稼いでいる。
だから、
俺を裏切らない。
その方が、
ずっと、
楽だ。
再び、
ヴィランに向かう。
発電機の音が、
背中から、
聞こえる。
……よし。
街は、
まだ、
死なない。
俺は、
拳を握り、
突っ込んだ。




