rの音が聞こえる
倉庫の扉を開けると、
低い唸り音が、
静かに迎えてくる。
並んでいるのは、
発電機だ。
一台、
二台、
三台……
いや、
もう数える気にもならない。
金属の塊が、
整然と並ぶ光景を前にして、
俺は、
思わず、
ニヤリと笑った。
……rってやつは、
こういう顔をしているらしい。
次に、
どこで電気が止まるか。
俺は、
地図を広げる。
エネルギーの流れ。
戦闘の履歴。
送電網の分岐。
――次に出るのは、
ここだな。
予想は、
外れなかった。
やはり、
そこだった。
最初に大口で食いついてきたのは、
証券会社だった。
「一秒止まるだけで、
数億飛ぶ」
その言葉に、
すべてが詰まっている。
ヒーローが戦っている間も、
市場は止まらない。
いや、
止められない。
正義より、
電気の方が強い世界。
俺は、
そこに、
電気を売る。
利益が増えているのを、
はっきりと実感できるようになった。
通帳の数字。
契約書の枚数。
倉庫に並ぶ発電機。
どれも、
嘘をつかない。
……ウハウハだな。
心の中で、
そう呟いて、
少しだけ笑った。
現場では、
いつもヒーローと会う。
「またお前か!」
マントを翻しながら、
ヒーローが叫ぶ。
「いつもありがとう!」
俺は、
発電機のスイッチを入れながら、
手を振る。
「当たり前だ。
ヴィランを倒してもらわなきゃ、
商売が終わる」
ヒーローは、
一瞬、
呆れた顔をしてから、
笑った。
「相変わらずだな」
「そっちこそ」
本音を言えば、
感謝している。
ヒーローがいるから、
俺は稼げる。
ヒーローが戦ってくれるから、
俺は電気を通せる。
だから、
本気で、
頑張れよ、って思ってる。
皮肉じゃない。
事実だ。
夜、
自宅で、
シャンパンを開ける。
ニュースでは、
今日もヒーローが
ヴィランを倒している。
グラスを傾けながら、
画面を見る。
……いい戦いっぷりだな。
俺は、
小さく乾杯した。
さて。
次は、
どう儲けようか。
発電機の数は、
まだ足りる。
だが、
街の止まり方は、
もっと複雑になる。
電気だけじゃない。
通信。
冷却。
データ。
時間。
止まった瞬間に、
価値が生まれるものは、
いくらでもある。
……まだ、
やれる。
いや、
これからだ。
倉庫の発電機たちは、
静かに、
唸っている。
まるで、
次の戦場を、
待つかのように。




