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第⼆章:⼈間になった夜凪

お婆さんとの出会いから数⽇が経った。

夜凪の⼼はあの夜からずっと温かいままだった。お婆さんにもらったカルパス、優しい⾔葉、そして

「夜凪」という名前、その全てが宝物だった。

「いつか絶対にお礼を⾔うんだ」

夜凪はその想いを胸に毎⽇を過ごしていた。

村での⽣活は相変わらずだった。誰も夜凪の話を聞かず、⼀緒に遊んでくれる仲間もいない。でも夜

凪にはお婆さんと再会する⽬標ができたのでそれほど寂しくはなかった。

ある満⽉の夜。

夜凪は村の中央にある猫神⽯の前に⽴っていた。

⽉の光を受けて⽯はいつもより強く輝いている。その光を⾒つめながら夜凪は考えていた。

「お婆さんに会いたい...あの時のお礼を伝えたい!でもどうやって探せばいいんだろう?」

⾝なりや容姿以外の⼿がかりは「温泉の帰り」だったということだけ。この辺りにはいくつかの温泉

があるため、⼀つ⼀つ探していくには時間がかかりすぎる。

それに猫の姿のままではお婆さんにお礼を伝えられない。

「......そうだ」

夜凪の⽬が猫神⽯を⾒つめる。

「⼈間になればもっと探しやすくなるし、ちゃんとお礼も伝えられるんじゃないかな...」

猫神⽯の⼒を使えば⼈間の姿になれる。⼈間になれば温泉を訪ね歩くこともできるし、お婆さんを探

すこともできる。

でも村の掟では猫神⽯を使うことは禁じられている。

夜凪は少し迷った。

⻑⽼や村の仲間たちの顔が浮かぶ。みんな⼈間を恐れて⼈間になることを拒んでいる。

「んー......うん!」

夜凪は決⼼する。

「私が⼈間になって村のみんなに⼈間の優しさを証明する!」

「そしてお婆さんにも⼈間の⾔葉でお礼するんだ!」

夜凪は猫神⽯にそっと触れた。

⽯が温かく輝く。

その光が夜凪の体を包み込んでいく...体がふわりと浮き上がるような感覚。そして——

光が消えた時、そこには⼀⼈の少⼥が⽴っていた。

⾦⾊の髪をポニーテールにまとめた、猫⽿のある少⼥。⽩く輝く⽑並みは美しい⾦髪になり、ピンク

⾊の⽿は頭の上でぴょこんと⽴っている。

「わぁ...これが......⼈間の姿!」

夜凪は⾃分の⼿を⾒つめる。猫の時とは違う⼈間の⼿...不思議な感覚だった。

「うん!これならお婆さんを探しに⾏ける!」

夜凪は嬉しくなってぴょんぴょん跳ねる。でもすぐに我に返った。

「あっ...温泉を回ってる間にお婆さんと⼊れ違いになる可能性もあるよね...?うーん...」

考えているうちに夜凪の頭に⼀つのアイデアが浮かんだ。

「そうだ!温泉旅館を作ろう!」

お婆さんは温泉の帰りだった...ということは温泉が好きなのかもしれない。それなら⾃分で温泉旅館

を作って、お婆さんが来るのを待てばいい。

「温泉旅館を作って...ん〜⼥将になる!えへへ!そしてお婆さんが来てくれるのを待つんだ!」

夜凪の⽬がきらきらと輝く。

でもすぐに不安も浮かんでくる。

「旅館ってどうやって作るんだろう……それに⼥将って何をするんだろう……」

夜凪はわからないことだらけだったが諦めなかった。

「⼤丈夫!きっと何とかなる!」

夜凪は村を出る決⼼をした。

村の仲間たちには何も⾔わずに...もちろん⻑⽼にも内緒で。

「みんなごめんね。私にはやりたいことがあるんだ...」

満⽉の光が夜凪を照らしている。

夜凪は深い森を抜けて⼈間の世界へと向かった。

⼈間の姿になった夜凪の新しい冒険が始まろうとしていた。

数ヶ⽉後——

⼭の奥深く、⾃然に囲まれた場所に⼀軒の温泉旅館が建っていた。

まだ⼩さな旅館だったけれど夜凪が⼈間と⼀緒に⼀⽣懸命作り上げたものだった。⼈間たちに建て⽅

を教えてもらい、温泉の掘り⽅を学び、少しずつ形にしていった。

夜凪は旅館の⼊り⼝に⽴って笑顔を浮かべる。

「よ〜し!これならお婆さんもいろんなお客さんもお迎えできる!」

この数か⽉で夜凪は沢⼭の⼈間の優しさに触れていたのである。

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