表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

エピローグ:家族のしるし

新しい温泉旅館「夜凪の家」が再建されて数日が過ぎた。

女将、らこ、こころ、そして灯真は開業に向けて最終準備を進めていた。

「女将!お部屋の準備が整いました!」

こころが嬉しそうに報告する。

「温泉の清掃も完璧だ」

灯真も自信を持って言った。

女将はみんなの顔を見て微笑んだ。

「ありがとう!みんなさちさんに教えてもらったこと全部活かせてそうだね!」

みんな元気な顔をしているなか、らこが神妙な顔で言った。

「ねぇ女将。猫神石はどうするの?」

女将は大切に保管していた猫神石を取り出した。

火事の時に汚れてしまったがそれでも美しく光っている。

「うーん…このまま保管しておくのも勿体ないし…」

女将は猫神石を見つめながら考えた。

「そうだ!」

女将はぱっと顔を上げた。

「これでみんなでお揃いのものを作らない?」

「お揃いのもの?」

らことこころが首を傾げた。

「うん!猫神石を加工してアクセサリーを作るの!」

女将は目を輝かせた。

「何にするの?」

こころが尋ねた。

女将は少し考えてから言った。

「アヒル!!!」

「えっ!?アヒル!?」

らことこころが同時に声を上げた。

「うん。黄色くて、丸くて、可愛いアヒル笑」

女将は微笑んだ。

「アヒルって実は家族愛が強いの知ってた?」

女将は窓の外を見た。

「私たちはこれからもずっと大事な家族でいたいし、この旅館は温かい家のような旅館を目指してるからね!」

らこが少し考えてから頷いた。

「いいね!可愛いし!」

こころも嬉しそうに言った。

「私も賛成!アヒル可愛い!」

その後、女将は猫人族の村に行き長老に相談した。

「長老、猫神石を加工したいんですけど…」

長老は優しく微笑んだ。

「構わんよ。お前たちが命をかけて守った石じゃ。好きにしなさい。」

「ありがとうございます!」

女将は深々と頭を下げた。

すると長老は村の石工を呼んでくれた。

「すまんが、この石を三つのアヒルの形にしてほしいんじゃ」

石工は猫神石を手に取ってじっくりと観察した。

「なるほど…美しい石だな。任せてくれ!」


***


数日後、石工が三つの黄色いアヒルのアクセサリーを持ってきた。

「できたぞ」

石工が差し出したのは小さくて可愛らしい黄色いアヒルたち。

「わぁ……可愛い!」

こころが目を輝かせた。

「すごい……」

らこも感心した顔で見つめている。

女将は一つ一つを手に取った。

「完璧です!ありがとうございます!」

石工は照れくさそうに頭を掻いた。

「いやいや。良い素材だったからな」

女将はアヒルをらことこころに渡した。

「これが私たちが家族である『しるし』だよ!」

女将は自分の頭にアヒルを載せた。

らことこころもそれぞれ頭にアヒルを載せる。

「どう?似合ってる?」

女将が聞くと、らこが笑った。

「女将らしくて可愛いよ笑」

こころも嬉しそうに頷いた。

「みんなお揃いだよ!」

三人は鏡の前に並んだ。

頭の上で黄色いアヒルが揺れている。

「これからはこのアヒルに込めた思いを胸に頑張ろう!」

女将が言うと、らことこころが力強く頷いた。

「うん!」


***


そして「夜凪の家」の開業の日が来た。

温泉旅館「夜凪の家」の前には人間の村からたくさんの人が集まっていた。

町長のこだまが前に出て声を上げた。

「それでは、温泉旅館『夜凪の家』の再開業式を始めます!」

拍手が湧き起こった。

女将、らこ、こころが旅館の前に並んだ。

三人の頭の上では黄色いアヒルが風に揺れている。

「女将さん!そのアヒル可愛いね!」

「それはなに??」

村人たちが興味津々に見ている。

女将は微笑んで答えた。

「これは私たちの大切なしるしです!そしてこの旅館のトレードマークです!」

さちが女将のそばに寄り添った。

「素敵ね。あなたたちらしいわ」

女将はさちに深々と頭を下げた。

「さちさん...本当にありがとうございました!」

さちは女将の頭を優しく撫でた。

「これからも頑張ってね!」

温泉旅館「夜凪の家」はその日から大盛況だった。

人間の村の人々が次々と訪れてくれた。

「女将さん、久しぶり!」

「また美味しい料理が食べられるのね!」

女将は一人一人に笑顔で応えた。

らことこころも、さちに教わった接客でお客様に完璧な対応をしていた。

そして灯真も番頭として、裏からしっかり旅館を支えていた。

「予約状況は順調です!」

「食材の発注も問題ありません!」

灯真の仕事ぶりに女将は感心した。

「灯真さんは本当に頼りになりますね」

灯真は照れくさそうに笑った。

「俺も娘のために頑張らないとだから」

大忙しの開業初日の夜、すべてのお客様が部屋に戻った後に女将、らこ、こころの三人は旅館の屋上に集まった。

満月が空に浮かんでいる。

「ねぇ、女将」

らこが夜空を見上げながら言った。

「いま私凄く幸せだよ」

「うん」

女将は微笑んだ。

「色々なことがあったけど...みんなのおかげでまたここに戻って来れて良かった...」

涙を浮かべる女将の手をこころが握った。

「女将...私たち三人これからもずっと一緒だよね?」

「もちろん!」

女将は二人の手を握り返した。

「私たちは大切な家族だから。」

三人の頭の上で黄色いアヒルが月の光を受けて優しく輝いていた。

翌朝、女将は早起きして旅館の庭を歩いていた。

朝露に濡れた草花がキラキラと輝いている。

「おはよう、夜凪ちゃん」

振り向くとさちが立っていた。

「さちさん!おはようございます!」

さちはにっこりと微笑んだ。

「実はそろそろ全国の温泉旅館調査に行かないといけないの。でもその前にあなたの顔を見たくてね」

女将はこれまでとは違い、寂しい表情を見せないように我慢し笑顔で頷いた。

さちは安堵の顔を浮かべ女将に言った。

「そのアヒル、本当に可愛いわね」

「はい!私も凄く気に入ってます!」

女将はアヒルを優しく触った。

「これからもみんなで楽しく旅館を盛り上げていきます!」

さちは女将を抱きしめた。

「あなたならきっと大丈夫!」

さちは女将の目を見つめた。

「でも困ったことがあったらいつでも連絡してね」

「はい...」

女将は耐えきれず目から涙がこぼれた。

「さちさん…本当にありがとうございました...」

さちは最後にもう一度女将の頭を撫でた。

「じゃあ行ってくるわね!夜凪ちゃん。また会いましょう」

「はい!お気をつけていってらっしゃいませ!」

女将はさちに教わった通り、笑顔でお見送りした。


***


女将が旅館に戻ると、らことこころが朝食の準備をしていた。

灯真は今日の予約を確認している。

女将は窓の外を見た。

青い空、緑の山、そして遠くに見える人間の村。

「ここが私の居場所。」

女将は微笑んだ。

あの日、浜辺でお婆さん——さちに出会った時からすべてが始まった。

たくさんの出来事があったけど、そのすべてが今の自分を作ってくれた。

女将は頭のアヒルを手に取って少し目を瞑った。

「うん!これからはどんなことがあっても大丈夫!」

女将は力強く頷いた。

「だって私には…大切な家族がいるから」

その日も温泉旅館「夜凪の家」にはたくさんのお客様が訪れた。

女将、らこ、こころは、笑顔でお客様を迎えた。

「いらっしゃいませ!」

三人の明るい声が旅館に響く。

頭の上では黄色いアヒルが陽の光を受けてキラキラと輝いていた。

それは三人が共に歩んできた証。

そしてこれから家族として共に歩んでいく希望のしるし。

温泉旅館「夜凪の家」の物語は、これからも続いていく——

三人の女将と共に。


〈完〉


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ