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ステータスが見えない僕は、最弱で最強らしい  作者: ZEN-O
第1章 ステータスが見えない?!
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第5話 観測者

祠の扉が開いた瞬間、空気が一変した。


黒いフードに身を包んだ男は、無言のままレントを見つめていた。

その視線は、まるで心の奥を覗き込むような冷たさを持っている。


「……誰だ、お前」


レントの声は自然と低くなった。敵意というより、本能的な警戒が先に立つ。

男は静かに一歩踏み込むと、祠の中に目をやった。そこにはまだ、光を帯びた古文書の紙片が落ちている。


「君がそれを見たなら、本来ここにいる資格はないはずだ」


男の声は驚くほど淡々としていた。抑揚がなく、まるで機械のようだ。


「その意味、知ってるのか?」

レントは紙片を拾い上げる。まだ微かに温かく光っている。


男はうなずいた。「あれは、“門”の記録。そして、君は――“観測外”の存在だ」


「観測外……?」


「この世界は、すべてが神の視線――“観測”の中にある。生まれた瞬間から、死ぬ瞬間まで、すべてが記録され、管理される。

だが君だけは、それを外れている。ステータスが見えないのも、その証拠だ」


言葉の意味は難解だったが、レントの心にひとつだけ確信が生まれる。


“俺はこの世界の枠組みに属していない”


「それが……どうした」

レントは一歩、男ににじり寄る。


その瞬間、男の手が素早く動いた。黒い布の袖口から、光を帯びた刃のようなものが伸びる。

「その記録は、神の領域に触れるもの。生きて返すことはできない」


祠の中に、青白い閃光が走った。


反射的にレントが腕をかざしたその瞬間、彼の周囲に――無色の風が、吹き上がった。

まるで空間そのものが拒絶するような、異質な“圧”。

刃はレントに届かず、何かに弾かれるように軌道を逸れた。


男の目が、初めて驚きに揺れる。


「……やはり。すでに“門”に触れ始めているか」


男はすっと身を引き、霧のようにその場から姿を消した。


残されたのは、再び静けさを取り戻した祠と、風の余韻。

そして、レントの腕に浮かんだ光の痕跡――


紋章の一部と同じ、奇妙な模様だった。


「……力が目覚めてきてる?」


レントは恐怖と同時に、強烈な予感を覚えていた。


“世界は、俺が思ってるよりずっと深いところで動いている”


そして、その中心に自分がいることも――もう、否応なく知ってしまった。

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