第4話 "失われた言葉"が目を覚ますとき
「……これ、何語?」
翌朝、ミサキが村の倉庫裏で発見した焦げた文書の断片を手に、レントは祠に戻っていた。
昨夜の夢の残響が、胸の奥でまだくすぶっている。
それは、村の祠の裏に隠された、石壁の裂け目に落ちていた。誰かが慌てて捨てたように見えた。
文字は古く、今のどの言語にも該当しない――はずだった。
だが、レントが手をかざすと、紙片がかすかに震えた。
「……?」
文字のひとつが、ゆっくりと淡く光り出す。
《選ばれし“外”の者に告ぐ》
目の前で意味が自然に頭の中に入ってくる。読めるはずのない文字が、まるで彼の脳に直接語りかけてくるようだった。
《“門”が開かれるとき、真実はすべてを焼き尽くす》
「門……? 真実……?」
レントはその言葉を反芻する。そこには具体的な場所も名前も書かれていない。だが、ただの警告ではない何か――重大な預言のような気配があった。
「……これが、“ステータスが見えない”理由と関係あるのか?」
紙片の裏側には、円形の図形と奇妙な3つのシンボルが描かれていた。
そのうちのひとつは、あの祠で見た“紋章”と同じものだった。
ぞわり、と背中を何かが撫でる感覚。
“自分が何か、とてつもないものの中心にいる”。
そう、はっきりと確信した。
その時、祠の扉が突然軋みながら開いた。
そこにいたのは、見慣れた村人ではなかった。
「その文書……見たのか、お前」
全身を黒いフードで覆った男が、無表情でレントを見下ろしていた。
まるで、それを“監視”していたかのように――