かつての始まり、すべての終わり
未来はただそこあった。しかしその時まで見ることも触れることも出来ない。
アレンやロスローを創造した者がいる。とてつもない永遠でさえ御する高精度大規模の模擬実験環境を用意した者がいる。
始まりの二柱でさえ、呪いにとっては自身の宿り木に過ぎなかった。
呪いはロスローを選び、彼の子が創造した力の全てを我がものとした。最後に彼の子自体に手を掛けようとして、かつての自分が用意した刃によって殺された。
彼は死の間際後悔していなかった。その刃の目的は自殺だったから。絶望したまま生き、救われて消失した。
アレンは何も知らなかった。愛する男の亡骸を抱え、愛する子を罰した。彼女は子よりも夫を愛したのだろう。記憶と能力の一切を捨てさせ、地上へ追放した。
意志が朽ちた。アレンはアラクアにさらなる罰を与えるべく不死者を地上へ送り続けた。愛する男の亡骸の一部を時折与えながら。今やアレンが抱えるのはボロ切れ一枚だけ。
彼の血肉も骨も何もかも世界に散った。空っぽだった。
始まりの悲劇だった。
最後の修正を始めよう。
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呪いを継いだ。力を継いだ。かつて声を交わした彼らは存在しない。ただ俺の記憶の中に情報としてのみ残る。世界に人が溢れ、やがて俺は忘れられる。
俺は自分自身を呪いと共に封印した。両親の死を経て、空間と時間の力を使用し世界をもう一つ用意した。カルとシャルマが用意した隣接する可能性なんて危ういものではなく、完全なもう一つの世界。
その片方には俺だけが眠る。何もない世界だ。だからこそ封印として機能している。
願わくば永遠に、この滅びが掘り返されぬよう。
眠る。
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「あー。あー。テスト。テスト。次元間掘削の用意。対象を発見。繰り返す、対象を発見。」
金髪に青い瞳。レクテナと呼ばれた彼女はその船外活動着の中から計器を片手に基地の人間に報告する。
「イツキがいたか。よし、各部隊潜航開始。装備に異変を感じた者から撤退して構わん。」
茶髪の大男。レキオラはレクテナにより用意された装備を纏った部隊を率い、潜航ポイントから次元を渡った。
何もない世界に一人の女がいた。彼女を中心に闇が広がる。
レクテナは過去改変による未来の変化をある程度予測していた。浮遊都市は恒星間航行艦ではなく、疑似的な次元間航行艦として拡張され、いずれ選ばれるであろう世界線に自分たちの情報の複製をばら撒いた。過去改変で自身が消滅したとしても、他の枝への情報的干渉は無かったことにならない。
その先々で真に全てを救うため活動を開始する。
これはその一つの成果だった。
「イツキさん。私は確かに言いましたよ。再び逢いましょうと。」
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自室の床で寝転がりながらゲームをしていた。
外は雨で薄暗く、時折雷が鳴る。一階では母が夕飯の用意をしている。父が野球を観戦しており時折叫ぶのが鬱陶しい。
俺は数時間の死闘を経てもなおこの相手に勝てず、諦めた俺は尿意を感じて離席する。
部屋に戻ると大学の講義のスケジュールを再確認し、作業の進捗に少し焦りを感じながらもまたゲームに戻った。
夏休みはとても長い。時折大学に行くと見たこともないような美しい金髪の女性や、異常に体格のいい外国人講師や留学生を目にして驚くが俺には関係のない話だ。
それにしても魔術科学概論のレポート締め切りが怖い。明日にでも取り掛かるとする。
すると母が夕飯が出来たと一階から声をかけてくる。魚の焼けたいい匂いだ。
終わりです。ありがとうございました。




