エピローグ
もうすぐ、2012年になる。
私と昴くんは、宇宙船に来ていた。そんな私たちに、声が聞こえた。
『高い次元のひかりと昴…』
私と昴くんの声があわさって聞こえてきた。
『はい…』
私たちは一つの光になり、そう答えた。
『この宇宙船もまた、幻想ですよ』
『え?』
『高い次元のあなたたちが、創りだしたものなのです』
『……』
私たちは、それを思い出していた。今この時に、私たちは、たくさんの次元で、多くのものを生み出す。
そしてそれは瞬時に消えていく。
泡のようなものだ。とてもはかない。瞬時に創り、瞬時に消える。
だけど、創り出すものは常に完璧だ。最高の今を創りだし、最高の今を体験している。
それがどれだけ、素晴らしいことで、どれだけの奇跡で、どれだけの価値があるもので、どれだけ愛に包まれ、どれだけ感動することか…。
それを私たちは、つねにしているのだ。愛しきものをつねに創造し慈しみ、愛で包み込む。
すぐに消えるはかないものだからこそ、丹精こめて創り上げ、命を吹き込み、慈しむ。それが宇宙の意識なんだ。
そして、地球で生きている私は、その宇宙の意識が、命を瞬時瞬時に吹き込んでくれている、とても、とても、価値のある存在なんだ。
宇宙に愛され、慈しまれ、尊きもの、愛すべきものとして、つねに生まれている。今この時に、今、ここに…。
だから、私は、愛さずにはいられない。この世界にあるすべての存在を…。すべての意識を…。命を…。
だって、それは私であり、私という大きな宇宙意識が創り出した、愛しきものたちなのだから。
それをすべての存在が思い出したら、私たちはどうなるのか…。
地球は本当に愛と光の星になるだろう。
そこで、紡いでいく夢の世界は、がらりと変わるだろう。戦争も、争いも、飢えもない。差別も、憎悪、嫉妬、苦しみ、悲しみもなくなるだろう。
だってすべてが、愛しきものなのだから。すべてを愛して、慈しむ…。その意識で、創り出して行くものだから。
すべての意識が、神の意識に変わるのだから…。
新しい地球…。愛と光の星……。
波動は上昇する…。アセンションする…。
今ここで、いつもいつも、愛と光で、素晴らしい今を体験しよう…。
『ね、昴くん』
『うん。ひかり』
自分の体に戻った。急に窮屈な感じがした。それは変わらない。
だけど、何かが違う…。そう、街を歩いてても、みんなが光を出し合っている。
笑顔がそこら中にあふれていて、空は輝き、太陽は光り…。木々は青々と茂り、小鳥たちがさえずる。
子どもたちが笑いながら走っていき、空の雲は悠々と流れていく。
私と昴くんは、腕を組んで、街中を歩いていた。時々、振り返る人がいる。
「あ、昴くんだ」
昴くんはにこって微笑む。そうすると相手の人も、微笑み返す。
「昴くん、すごく幸せそう…」
「うん、そりゃもう、いつでも幸せだよ。君は?」
まったく知らない人に、昴くんがそう聞いた。
「私も、すごく幸せ」
その人はそう言って、お辞儀をして、そのまま嬉しそうに歩いていった。
テレビのニュースががらりと変わった。笑顔があふれる画像ばかりだ。そして画面からいつでも、光が飛び出していた。
地球は、変わった。すべての人、すべての存在が今ここで、幸せで満たされていた。
今日は昴くんの車で、ドライブに行こう。江ノ島へ。最近マンションで飼っている、犬を連れて…。
昴くんは思い切り犬と走った。すごい速さで…。
「こんな夢、前に見たっけ」
昴くんは息を切らして私の方に、やってきた。
「でも、夢では息切れしてなかった気がする」
「ふふ…。夢だもん」
「ひかり…」
昴くんは、キスをしてきた。浜辺には、家族連れがいた。離れたところには、カップルもいた。だが、誰も私たちを見ることもなく、それぞれがその時を、楽しんでいる。
キスをしていても、誰にも見られることもなかった。ただ、私たちの足元で、犬がキャンキャン鳴いていた。
「ああ。うるさいよ、ミーちゃん。やきもち妬くなよ」
昴くんがそう言って、
「しょうがないな~~」
ってミーちゃんを抱き上げた。あ、ミーちゃんって言うのは、犬、ミニチュアダックスフンドの名前。昴くんが命名した。
昴くんが実家で飼っている猫は、にぼしで、にー坊。かつおぶしでかっちゃんという愛称だが、ミーちゃんは本当の名前は、「ミート」つまり、肉…。愛称が「ミーちゃん」
「え?そんなネーミングで、いいの?」
「いいの、いいの。呼び名がかわいけりゃ、それでいいの」
「……」
ちょっと呆れたけど…、ミーちゃんはやっぱり、お肉が好きな犬になった。
「さ。家に帰ろうか?」
昴くんはミーちゃんを片手で抱っこして、もう片方の手で私と手をつないだ。
ミーちゃんがいたとしても、やっぱり私と昴くんは、べったり、いつもいちゃついてる。これは、きっと、ずっと、一生変わらないんだろうな。
この高い波動に生まれ変わった地球で、もっともっと愛を育み、光を出して地球を包んでいくんだろうな…。
「だって、愛と光の存在だもん、俺らって…」
昴くんがすごい光を出しながら、そう笑った。
さあ…。これからも、愛と光の星で、よろしくね、昴くん。
いつかまた、一つの光になる瞬間まで…。
~終わり~
長い間、読んでいただき、ありがとうございました。
書き直しもようやく、最後まで出来ました。
番外編もありますので、そちらもお楽しみくださいね。