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ミッション∞ 愛と光の存在に

翌日の深夜0時ジャスト、菅原エリカのラジオ番組の放送が始まった。


すぐに昴くんは、ゲストで登場した。


「『今このときを愛してる』の映画で、ご一緒している、天宮昴くんがゲストで来てくれました」


菅原エリカのラジオは初めて聞いたが、声まで大人な女の人で色っぽい。


「こんばんは。よろしくお願いします」


昴くんの声だ。なんだか、緊張しているようだ。


「こんばんは~~。今日も撮影あったけど、お疲れ様でした」


「はい。お疲れ様です。エリカさん、すごいですね。撮影の合間に、この時間にラジオしてるんですもんね」


「週一回だし。そんなに大変じゃないのよ」


ああ、なんだか確かに、話し方がお姉さんっぽい感じだ。


「そうかな。俺、撮影終わったら、すぐ家に帰って寝ちゃいますよ。バッタンキュ~~って」


あ、それは本当だ。ハードな撮影だと、昴くんはお風呂に入って出て、即行寝てしまう。ただし、夢の中ではめちゃ元気で、抱きついてくるけど…。


「バッタンキュ~?あはは…。それはきっと、若い証拠ね」


「ええ?そうですか?」


昴くんは、ちょっと返答に困ってるようだった。


「昴くんは、どう?今度の役…。圭介と昴くんって、どうなの?似ているの?」


「そうですね。似ているところもあります。ちょっと能天気っていうか、おちゃらけちゃうところとか」


「え?そう?現場では、そんなでもないよね。けっこう真剣で、いつも静かで」


「あ…、初めだからまだ、猫かぶってます」


「あら、そうなの~~?ふふふ。じゃ、本性が出るのが楽しみね」


「エリカさんはどうなんですか?瑞希と似てますか?」


「まったく正反対かも」


「え?そうなんですか?でも見た感じは、ぴったりかなって思いますけど」


「性格は全然違う。私、人見知りもしないし、いつでも強気だし、好きな人が出来たら、どんどんアプローチしちゃうし」


「肉食女子ですか?」


「そうね。そうかもしれない」


「意外ですね」


「そう?大人しく見えた?」


「いえ。でも、自分からどんどんいくタイプには見えませんでした」


「そう?あの瑞希って私が思うに、作者の空野いのりさんに似ているんじゃないかしらね?」


「え?どうしてそう思うんですか?」


「空野いのりさんが、今書いてる小説も読んでるんだけど、その主人公の女性も瑞希に似ている。きっと、自分がモデルなんじゃない?」


『うん。するどい』


昴くんの心の声がした。


「昴くんは、瑞希みたいな女性タイプ?」


「え?俺っすか?はい、そうですね」


「年上の彼女いるんだよね~~。私とあまり年、変わらないんじゃない?」


「はい」


「そんな年上だと、甘えさせてくれるのかな?」


「ああ…。はい」


「あら?間があったけど…」


「いや、あの…。俺、いや僕は、なんか相当な甘えん坊らしくて」


「あら、そうなの?」


「いつも子どもっぽいとか、ガキだって言われてます」


『言ってる?私…!?』


「そういうところが、その人は好きなんじゃないの?私は、ちょっと年下の人苦手だけど」


「え?」


「自分が甘えたい方だから」


「あ。ああ、そうなんすか」


「じゃ、昴くんは甘えてきたりされるのが、苦手なんだ」


「いいえ。甘えてきてくれたら、嬉しいっす。すごく」


「え?そうなの?」


「あ…。たまになんすけど、甘えてくるから…。そういうとき、けっこう嬉しくて」


「そうなの。彼女甘えたりするんだ」


「たまにです」


「ふうん。でもいつもは、大人な感じなのね?」


「いいえ。まったく」


「え?」


『え?!!何を言う気?』


「子どもっぽいですよ、たまに俺よりも…。やきもちやきだし、すねるし…。そういうところが可愛いんですけど」


『昴くん~~~~!何を言い出すのよ~~~!!!!!!』


「わあ。そうなの?聞いててこっちが赤面だわ」


「あ、すみません。つい…」


「そろそろ、映画の話に戻るけど…。もし、昴くんがこの圭介みたいに、自分がもうすぐ死ぬかもしれないってなったら、どうする?」


「そうですね。う~~ん、一緒かな?」


「え?」


「俺も、愛してる人と、今っていう時を思い切り生きますね」


「別れるよりも、共に生きるほうを選ぶ?」


「はい」


「もし、逆だったら?」


「立場がですか?それでも一緒です。共に生きます。愛してる人と絶対に、離れたりしません。一緒に喜びも、悲しみも、苦しみも全部を、共有して、愛して生きていくと思います」


そう昴くんが言うと、ラジオからものすごい光が飛び出してきた。それはすごい勢いで、辺り1面を包み込んだ。


「昴くんって、すごいのね」


「え?何がですか?」


「そういうのを言い切ってしまうところがよ」


「そうですか?え?エリカさんは違うんですか?」


「私は苦しんだり、悲しんだりは嫌かな…」


「だけど本当に愛してたら、どんな相手も愛すと思うし…、共にいたい、ずっといたいって思いますよ、きっと…」


「そんな相手に会ってないんだわね、きっとまだ…」


「うん、そうかも」


「昴くんは会ってるんだね」


「はい」


「それじゃ、圭介の思いは、昴くん思い切りわかるんだ」


「そうですね。だけど一回圭介は、瑞希のもとを去ろうとするじゃないですか」


「うん。自分の命が短いと知ってね」


「俺、あれはしないと思います」


「え?どうして?」


「う~~ん。きっと、そうだったら、素直に言うと思うんですよね。自分の命がもう長くないって」


「それで?」


「それでも相手を愛してて、ずっと愛してて…。ただ、もし、俺が一緒にいることが相手を不幸にすることなら、離れます」


「え?」


「でも、相手も俺と一緒にいることを選んでくれるなら、一緒にいます」


「……」


「相手に何も言わず、相手の思いも聞かず、勝手に別れるようなことはきっとしません」


「どうして?好きな人を苦しめるかもしれないのに?」


「もし、逆の立場だったら、俺、絶対に打ち明けて欲しいって思うんですよね」


「……」


「俺、命が短いってことを知っても、それでもそばにいて愛していくと思います。相手が黙って去ったりしたら、そっちの方がつらいですよ、きっと」


昴くんがそう言うと、すごい光が飛び出した。私は、なんだか感動してしまった。涙が思わず溢れ出てきた。


「きっと、相手もそう思うんじゃないかって、そんな気がします。黙って去ったりしたら、きっとつらいですよ」


「そうか。すごいね。すごい信頼関係って言うか…」


「はい。すんげえ、愛し合ってるから、俺ら…」


また、昴くんからものすごい光が飛び出した。


「それ、今お付き合いしてる人とってことよね?」


「え?はい…。あ、すみません。また話がそっちにそれた…。えっと、映画ですね!今、撮影進んでて、夏に公開になります。あ、主題歌も決まったんですよね?」


「そうそう。素敵な曲。挿入歌は小説の中にも出てくる、HANABI」


「はい。いい歌ですよね」


「じゃあ、その曲を今、かけましょうか?」


「はい。お願いします」


「では、ミスターチルドレンで、HANABI。お聞きください」


HANABIが流れた。この曲を聴いてたときに、ちょうど小説を書いてて、ぴったりだなって思ったんだよね…。


『ひかり?俺の声聞こえる?』


『聞こえるよ』


『ごめん、なんか思い切り、すごいこと俺言ってたよね?』


『顔から火、出たよ』


『俺も!思い出して、今、顔あっつい…』


『あはは!昴くんでも照れるの?』


『う…。そりゃ、まあ。その…。あ、エリカさん話しかけてきたから、またね』


歌が終わるとCMになった。CMあけに、すぐまた昴くんが紹介された。


「今日のゲストは、天宮昴くんです」


「こんばんは」


「ここらか聞いた方、もう大変ですよ!昴くんは、ずっと彼女とのこと、のろけっぱなしなんです」


「ああ!すみません。もうしません」


「あはは…。いいんだけどね。一人身の人にはつらいかな」


「え?そうなんですか?」


「彼女が羨ましいわ」


「えっと…」


昴くんは困った感じで黙ったが、その間にも光を思い切り出し、エリカさんから出た黒い霧を一気に消した。


「そうだ。空野いのりさんは、実名も顔もふせてて、私たちも会ったことがないんだけど、昴くんの好みのタイプなんじゃない?どうする?もし会っちゃったら」


「え?そうですね。多分、俺の好みかもしれないですよね」


「そうしたら、どうする?好きになったりしない?」


「う、う~~~ん。どうするかな?わからないっす」


昴くんは、心の中では、


『ひかりだもん。好きに決まってるじゃん』


って言ってたけど、困った振りをしていた。


「あれれ~~?そんなことで動揺してたら、これ、もし彼女が聞いてたら、妬くんじゃないの?」


「ああ…。あはは…」


昴くんは笑ってごまかしていた。


「さて…、あんまりのろけてばかりだから、ちょっといじめてみました。でも、これで喧嘩はしないでね。それも私のせいにはしないでね」


「あはは。大丈夫っす。喧嘩したことないから」


「え?」


「あ…。喧嘩っていうか、すねたりってのはありますけど、どっちかが、すぐに折れる…。あ、違うか。どっちかがすねると、それも可愛いって言って、喧嘩にならない…」


「わかった!ストップ!もういい。のろけはたくさんです。さ、もう帰ってもらいましょうか!ファンの人も、たまらないかもよ。そののろけ…」


「あ…。すみません」


昴くんは本当に、申し訳なさそうにそう言ってた。


「今日のゲストは、天宮昴くんでした。まだまだ彼女とアツアツの…。まだ、撮影始まったばかりだし、これからもよろしくね」


「はい」


「頑張っていい映画にしていきましょう」


「はい、よろしくお願いします。あと、ぜひ、すごくいい映画なので、楽しみにしていてください」


「そうよね、昴くん一押しの小説だったんだものね。台本読んだけど、泣ける感動の映画です。楽しみにしててくださいね。では、天宮昴くんでした~」


そしてまた、CMにいった。そのあともずっと、ラジオは続いたけど、昴くんが心で話しかけてきた。


『ひかり~。今からタクシーで帰る』


『うん。お疲れ様』


『帰ったら即行、風呂はいる』


『あっためておくね』


『そうしたら、即行、寝る』


『ふふ。バタンキュ~でしょ?』


『で、寝たらひかりとめっちゃ、愛し合う』


『……』


ほんとにもう~~…。そういうことろが、子どもっぽい?甘えん坊なところ…?まあ、いいんだけど、そういうところも、可愛いから。


『でしょ?』


『でしょって何?自分で言うかな、もう~~』


ふ…。昴くんの声が消えた。エネルギーを集中すると寝てた。タクシーに乗り、寝てしまったようだった。


『ひかり~…。ただいま~』


30分して、すごい眠そうな声が聞こえた。


『おかえり』


そう言って、私はドアを開けに行った。昴くんは眠そうな目をこすりながら、玄関に入った。


「風呂、入ってくる」


昴くんはそう言うと、お風呂に入りに行った。あまり長いときには、気をつけてないと寝てるときがある。この前も、バスタブの中で、ぐーすか寝ていたことがあった。


よく今まで一人暮らしで、大丈夫だったねって心で言ったら、一人だったから、その辺は気をつけていたって返答があった。どうやら、私と一緒に暮らすようになり、ものすごい安心感があるらしい。


お風呂からあがると、いつものように歯ブラシを口につっこみ、バスタオルで頭をゴシゴシしながら部屋に来て、ぼけ~~ってしながらしばらく歯を磨いていた。何を考えてるんだろうと思って、意識を集中したら、まったく真っ白けだった。


あ、なんにも考えてないんだ…。少しして、


『ね、眠い…』


って声と、それから、


『ああ。俺、ラジオですごいこと言ってたよね…』


って声がした。


「うん、赤面ものだったよ」


って言うと、昴くんはすっくと立ち上がり、口をゆすいで戻ってきて、


「おやすみ」


と、ベッドにうつ伏せで倒れこんだ。


「髪、全然乾いてないよ!風邪ひいちゃうよ」


「乾かして~~」


しょうがないな~~。


ドライヤーを持ってきて、昴くんをベッドに座らせ乾かしてあげると、半分くらい乾いたところで、


「も、駄目…」


と言って、倒れこんだ。そして、すぐにグ~~って寝てしまった。相当、疲れてるようだ。撮影、ハードなのかな…。半乾きだと、翌日、本当に髪がすごいことになってるんだけどな~。


私も、昴くんの隣に潜り込み、眠りに着いた。


「ひかり。今寝たの?」


夢の中で昴くんは、海を見ていた。


「うん。ここ、江ノ島?」


「うん。高校1年の時にね、来たんだ。撮影でさ」


「観たよ、その映画。サーフィンの映画だよね」


「うん。また、ここで撮影があるんだ」


「『今このときを愛してる』の撮影でしょ?」


「そう、圭介と瑞希が、デートする場面」


「ふうん」


「俺、この撮影終わったら免許取るから、そうしたらドライブに来ようね」


「うん」


「あ~~。なんか潮の香りがする。それに、風も気持ちいいね。夢なのにね」


「うん」


「ひかり」


昴くんが抱きついてきて、キスをした。


「わ!こんなところで…」


「え?でも、夢じゃん」


ああ…。そうか…。


「あれ?昴くん、髪の毛濡れてない?」


「あ。半分しか乾かしてないから」


「でも、これ夢だよ」


「あ~~、そうか。なんで夢なのに、髪濡れてるかな?」


「ふふ…。変だよね~~」


昴くんはそのまま、私を押し倒してきた。


「あれ?部屋じゃないの?」


「え?」


「だって、いつもこういう時は昴くんの部屋にならない?」


「うん、でも今日は海、気持ちいいからここでいいや」


えええ~~?!思わず、私は慌ててしまった。


でもその時、どこからともなく、ボーダーコリーが走ってきて、それを見た昴くんが、


「あ!クロ!」


って言って、追いかけていった。「今このときを愛してる」に出てくる犬だ…。ああ、また、映画と夢と、ごっちゃになってるなあ…。


昴くんは思い切り早く犬と走り回り、楽しそうだった。そして、息をまったく切らすこともなく戻ってきて、


「犬もいいね。猫も可愛いけどさ」


って満足そうに笑った。



3月28日、本が出版されると同時に、すごい売れ行きであっという間に1万部を超えた。


その後、「2012年 愛と光の地球」も出版が決まり、担当者がつき、早速ゲラ刷りが送られてきた。


「これ、けっこう苦手…」


何度もチェックをするんだけど、たまに寝ちゃう時がある。


昴くんは、その頃撮影に追われていた。私の小説は、桜だったり、若葉だったり、初夏の海だったり、そんな場面があって、桜の時期や若葉の公園の場面を先に撮影したり、そのあとに海の場面を撮ったりして、順番が逆転していることもあり、けっこう昴くんは大変なようだった。


出会いのシーンや、はじめにデートをするシーンを撮る前に、出産や出産目前のシーンを撮らないとならない。気持ちの持ちようだったり、入れ方だったり、そういうのがすごく難しいようだった。


でもそういうのも、すごい集中力でこなしていくようで、その集中するパワーを使い果たし、疲れきって家に帰ってくるのだ。そんな時には、もうヘロヘロで甘えてくる。


「ひ~~か~~り~~~~。一緒に風呂入って~~」


疲れてるんだから、一人でゆっくりと入りたくないのかなって思っていると、


「髪、洗って」


と甘えてくる。もう、3歳児か!君は~~って思いつつも、洗ってあげてしまう。それから、爪を切ってあげたり、耳掃除をしてあげたり。


昴くんは、気持ちよさそうにして眠気眼だけど、台詞を覚えないとならない日は別だった。お風呂に入って出てくると、顔を思い切り洗い、苦そうな濃いコーヒーを飲んで、


「お、ぼ、え、る、ぞ!」


と気合を入れ、リビングにどっかと座り込んで黙り込む。


声もかけられない…。その集中力はすさまじく、こりゃ、こんな集中力で撮影してたら、力使い果たすのも無理はないって、本当にそう思う。だけど、そんな昴くんを見ているのも幸せで、その横で私はしばらく、ぼ~~ってしている。


眺めていても、みとれていても、まったく昴くんの目には映らないようで、私に関係なく台詞を覚えている。


でもしばらくして、伸びをしたりコーヒーを飲むと、私のことを見て光を送ってくる。


「ひかり、俺といちゃつけなくて、寂しい?」


「え?ううん。なんで?」


「なんだ~~。ちぇ。嘘でもそこは、寂しい、昴くんのばかばかばかって言ってくれなきゃ」


と笑って言う。


「え~~。もう、いいから、続き覚えたら?」


「なんだよ、せっかくひかりとの会話を楽しもうと思ってたのに」


「それは嬉しいけど、でも、私は昴くんのこと、見ていられるだけで幸せだから」


そう本心を言うと、昴くんは少し顔を赤くして、


「そっか…。そうだよね」


って言って、また台本の方に集中し出した。


昴くんのオーラを感じて、昴くんの匂いを感じて、昴くんの息遣いを感じられたら、それだけで、本当に満足だ。昴くんといるその空間は、めちゃくちゃ、幸せな空間だった。



7月、梅雨が明ける前、映画が公開になった。


公開前に試写会があり、昴くんはその日、舞台挨拶をした。その日私と葉月ちゃん、それに珠代ちゃんも、昴くんが試写会に招待してくれて見に行った。


昴くんが登場すると、会場からものすごい声援。挨拶をしても、ものすごい黄色い声…。


「すごい人気だよね」


と葉月ちゃんが言うと、


「本当だね。でもわかるよ。昴くん、めっちゃかっこいいもの」


と珠代ちゃんが言った。


確かに…。舞台で挨拶をして、手を振る昴くんは、今日おしゃれなスーツ姿。もう年齢も20歳になり、大人っぽくなっていた。いつもの子どもらしさがなく、セクシーさも出てかっこよかった。


その横で、菅原エリカもまた色っぽかった。


「菅原エリカも奇麗だよね~~」


葉月ちゃんがそう言うと、


「でも、絶対に星野さんと昴くんの方が、お似合いです」


と珠代ちゃんが言った。


舞台挨拶はあっという間に終わり、それから映画が始まった。昴くんたち出演者も、1番前の席に座り、試写会を見ていた。


途中から、鼻をすする音が聞こえ出した。隣に座ってる葉月ちゃんや、珠代ちゃんも泣いていて、目にハンカチを当てていた。私も我慢していたけど、途中からボロボロ泣いてしまった。ああ。私が書いたストーリーだと言うのに…。


だけど、俳優陣の演技も脚本もすばらしく、特に昴くんの自分の死を知って、がくぜんとするところや、瑞希に嘘をついて、あとで苦しむ姿は胸が痛くなった。


菅原エリカの演技も素晴らしくて、何度も何度も涙を誘われた。


ラブシーンはさすがに、直視できなかったけど、嫉妬ではなくて、こんなふうにいつも昴くんにキスされてるのかなって思ったら、思い切り恥ずかしくなって見れなくなった。


映画が終わると、ものすごい拍手。なかなかなりやまなかった。私も思い切り、拍手をした。


出演者が、舞台の前でこちらを向き頭を下げて、監督からまたお礼の言葉があり、それから主演の昴くんからも一言と言われて、


「あの、実は映画全部を見たのは、僕も初めてです。感動しました。泣いちゃいました…。皆さん、拍手をありがとうございます。もし良かったらまた、映画館に足を運んで観て下さい」


と、笑いながらそう言った。すると、また会場中から拍手と黄色い声。


「昴くん、かっこよかった~」


とか、


「感動して泣いたよ~~」


とか、そんな声援が飛んだ。


昴くんは、もう一回ぺこって深くお辞儀をして顔を上げると、にこにこしながらみんなに手を振った。ものすごい光も飛び出してて、会場が光で覆われていた。


映画からもすごい光が飛び出していた。昴くん、いつでも光を出して、すべてを包み込んでいるんだな。私も見習わないとな…。って思っていると、


『ひかりもすごい光、出してるよ』


って声がした。昴くんの方を見ると、私の方を見てにこって笑った。


「ひかりさん、今、心で会話してたでしょ?」


と隣で、葉月ちゃんがつついてきた。


「え?なんでわかるの?」


「見つめあって笑ってたら、わかりますって」


葉月ちゃんにそう言われて、なんだか照れくさくなった。


「今度、映画館にも悟くんと観にいきますね」


「え?悟くんと?」


「今日は仕事でどうしても、来れなかったって。すごくこの映画、悟くんも楽しみにしてるんですよ」


葉月ちゃんが、そう言ってくれて嬉しかった。


会場を出ると、試写会を観た人たちが、


「良かったね~~。私、また観にいこう」


なんて会話をしていた。みんな、映画感動したんだな…。嬉しいな…。


映画が公開されるとすぐに、薫や、美里がメールをくれた。


>観たよ。素晴らしい映画だね。本も買って読んだけど、ひかり、すごいわ。


>昴くん、いい演技してたね。映画、泣いちゃったよ。


それに兄からも、徹郎からも、緒方さんからもメールが来て、映画、素晴らしかったと書いてあった。


ノエルさんから電話も来た。あの映画は、ものすごい光を出していて、多くの闇のエネルギーを浄化していますね…。そんなことを言ってくれた。


昴くんは、映画のキャンペーンで、日本中を回ったりテレビで宣伝したり、しばらく忙しかった。でも、どこでも昴くんは光を出していて、それが画面から飛び出し辺りを包み込んでいた。きっと映画館もいつも、光で満たされているんだろうな…。


映画はものすごいヒットをして、あっという間に、ランキングの1位になっていた。テレビでもCMが流れ、ポスターも貼られてて、どこにいてもいつでも、昴くんの顔を見れるほどだった。


公開から1週間して落ち着いてきて、昴くんは1日オフが取れた。前々から、白河さんが本山の瞑想の会に、参加しませんかって誘ってくれていたので、その日、二人で行くことにした。


久しぶりに、みんなと会う。昴くんと私は、漆原さんの車に乗せてもらい、流音さんも一緒に本山に行った。途中、漆原さんと流音さんも映画を観たという話になり、車中は盛り上がった。


「すごいね、あの映画は。昴からの光がとにかくすごい」


漆原さんは、すごいを連発していた。


「あの映画を観た人も、ひかりさんの本を読んだ人も、あっという間に闇を浄化できちゃうんじゃない?ひかりさんの本も、すごい光が出てるわよね」


流音さんがそう言ってくれた。


「感想が俺のブログにも、ひかりの小説のサイトにも書かれてるんですけど、けっこう今に生きるようにしていますっていうコメント、多いんですよね」


昴くんがそう言った。


「今に生きる…。それが大事だもんな。あの小説も映画も、そのメッセージが強い」


漆原さんがそう言うと、


「それに、無償の愛よね。相手のすべてを受け入れ愛す…」


流音さんがそう付け加えた。


「あ、そういったコメントも多いです。圭介と瑞希のような、恋愛がしたい。すべてを愛し、受け入れられるような、そんな相手と出会いたいって…」


私がそう言うと、


「俺のブログには、昴くんと彼女みたいな恋愛がしたいって、コメント書かれてるよ」


と、昴くんはちょっと嬉しそうに言った。


「ああ、菅原エリカのラジオ番組、聞いてたよ。昴がゲストで出てたやつ。お前思い切り、のろけてたよな~。あはは…」


漆原さんが笑いながらそう言った。


「でもね、そのたびにすごい光が飛び出てたわよね」


流音さんもそう言うと、笑っていた。


「う~~ん。なんで、のろけちゃうのかな。俺…。でも、光が出てるんだから、いいよね?」


昴くんが少し照れくさそうにそう言って、私の手を握ってきた。


『のろけてるつもりはないんだよね。ただ、本当のこと言ってるだけなんだけどさ』


昴くんは心で私に話しかけてきた。


『ふふ…。そうだよね。でも、やっぱり聞いてて、恥ずかしかったよ~』


『そう?』


『でも、ああいうこと、普通にみんなが話すような、そんな時代になるんだよね』


『ああ、そうそう。そうなるって思うよ、俺も』


昴くんはにこって微笑んで、私を見た。


本山に着き広間に行くと、たくさんの知った人がいて、私たちは喜んだ。夏樹くん、春彦くん、それに冬美さんもいた。珠代ちゃんと、陽平くんも来ていた。白河さんやノエルさんとも久々の再会だった。


「いらっしゃい。待っていましたよ」


白河さんが優しく出迎えてくれた。


「ひかりさん、昴くん、映画観ましたよ」


夏樹くんが、話しかけてきた。


「すごいですね、あれは…。ものすごい光が出てて、観てる人の闇を包み込んでしまう」


「うん。僕も観たけど、感動しました」


春彦くんも大きくうなづきながら、そう言った。


「ありがとうございます」


昴くんはぺこって頭を下げた。


「ひかりさんの『2012年 愛と光の地球』も、もうすぐ出版されるんだそうだね」


白河さんが聞いてきた。


「はい。今、印刷しています。8月頭には出る予定です」


「そうか…。楽しみだね」


「白河さんも、瞑想の本出版されるんですよね?」


昴くんがそう聞くと、


「うん。前に瞑想の本に、ここが紹介されてね…。それから、大手の出版社が本を出さないかと言ってきた。瞑想の会に来る人も、目覚める人も、本当に増えたんだよ」


と白河さんが答えた。


「白河さんのブログもすごいですよね。毎日、1万以上のアクセスがあって」


「今日も、多くの人が来ているよ。さあ、そろそろ中庭に移動しようか」


白河さんにそう言われて、私たちは中庭へと移動した。


板の間には、もうすでに数十人の人が座っていた。私たちも、板の間にあがりみんなで座った。白河さんが何かを唱え、それからしばらくすると、ものすごい光に包まれた。


私はその光と同化して、そのうちに自分という意識が消えてなくなった。そこには、ただ広がる世界…。


辺りはしんと静まり返っていて、その空間のすべてを同時に感じていた。ものすごく冴えていて、空の色、辺りの匂い、中庭にある木の緑、空を飛んでいく鳥、隣の人の呼吸、自分の心臓の音、すべてが感じ取れた。


私はいなかった。でもすべてが私だった。そう…、分離感がなくなり大いなるひとつになっていた。


その時、どこからともなく声が聞こえてきた。


『地球の波動が変わりましたね』


私の声だった。


『あなたには、選択することが出来ますよ。高い次元に戻り私と同化して光になることも出来ます。そして、そのまま地球で、ひかりとして、生きていくこともできます』


『…あなたは、高い次元の、私?』


『はい。そうです』


私のこの次元よりも、もっと高い次元の私からの呼びかけだった。驚いた。初めてだ…。


『ひかり。あなたが感じたこと、体験したことを、私も一緒に体験し、感じていました』


『え?』


『素晴らしい愛の体験でしたね。その愛を知るために、あなたは、地球に行きました。そして、愛をすべてに送り、包み込み、地球を愛の星へと変化させていきました』


『はい。それが私と昴くんのミッションでした。あ、じゃあ、もうミッションクリアですか?』


『いいえ』


『まだなんですね?』


『まだでもないし、クリアでもありません』


『どういうこと?』


『あなたは、もともと愛と光の存在で、愛と光を送り出していました。つねに』


『え?』


『いまここで、つねに、そして永遠に…。はじめからミッションが遂行されていたといえば、遂行されていましたし、そんなミッションはなかったといえば、なかったのです』


『え?』


『あなたは、もともとそれをしていたのですから。そしてこれからも、ずっと』


『……』


『あなたは、本来のあなたに戻っただけですよ。ひかり…』


『本来の私に?』


『ええ。そしてこれからも、ずっとあなたでい続けるでしょう』


『愛と光の私?』


『ええ』


『……』


ミッションはつねに遂行されてる。これからもずっと。ううん。ミッションも何も、私がその愛と光そのものなんだ。だから、もともとミッションなんてない…。


『そうです、ひかり』


『地球も愛と光そのもので、宇宙も愛と光そのもので、今まで変わったこともなければ、これからも永遠に愛と光なんですね』


『そうです。つねにいまここで、あなたも、すべての存在も愛と光です。それ以上もない、それ以下もない。すべてが愛と光です』


「……」


そうか…。ずっと、幻想を見ていたんだ。今までの苦しみも、悲しみも、出来事も、すべてが幻想だった。


今この時に、創り上げた幻想の中にいた。だけど、本当の真実の私たちの姿は、愛と光だった。そうじゃない存在など、いないのだ。


一回も苦しみの中や、哀しみの中にいたこともない。そんな存在になったこともない。それはすべてが、幻想だったんだ。


『そうです。ひかり。すべてが幻想です。夢の中にいたのです。すっかり目覚めましたね』


『はい』


『目覚めたうえで、もう1度聞きますよ。あなたは、地球で生きることを選択しますか?』


『はい。目覚めた意識で、愛と光の存在として、愛と光の星で生きます』


『どうぞ、新しい波動の地球で、生きることを楽しんでください。私は、あなたと共に、それを体験します』


『はい…』


ストン…。意識が完全に戻ってきた。目を開けると、隣にいた昴くんが同時に私の方を向いた。


『今、高い次元の俺の声がして』


『私も』


『ひかりも?』


『うん。地球で生きることを選択しますかって聞かれた』


『それで?』


『新しい波動の地球で生きるって答えたよ』


『俺もだ』


『ミッションも、はじめからなかったって言われた』


『俺もだよ。もともと愛と光の存在で、もともと俺らは、愛と光を送っていた。そういう存在なんだって』


『幻想だったんだね。すべてが…』


『うん』


『これからは、目を覚ました状態で、この地球で楽しもうね』


『愛と光の存在、そのものでね』


『うん…』


私たちは、宇宙そのものだ…。愛そのものだ…。光そのものだ…。


それはどの存在もそうだ。例外などどこにもいない。


すべてが私で、すべてが愛だ…。


それを感じたら、私も昴くんも泣いていた。


今までも、宇宙だと感じた。すべてが私だって感じたけど、この地球で起きていたことはすべてが幻想であり、私たちがみんなで見ていた、夢だったと知った。


そして、リアルな、真実の世界は…。無限に広がる、宇宙……。それが私たち……。


大きな意識。愛の意識…。それが、私たち……。


さあ、これからもまた、新しい波動の地球で、素敵な夢を紡いでいく…。


大きな愛の意識のままで、素敵な愛を体験していこう…。


愛を体験することが、宇宙の望みなのだから……。                  

                                



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