ミッション∞ 愛と光の存在に
翌日の深夜0時ジャスト、菅原エリカのラジオ番組の放送が始まった。
すぐに昴くんは、ゲストで登場した。
「『今このときを愛してる』の映画で、ご一緒している、天宮昴くんがゲストで来てくれました」
菅原エリカのラジオは初めて聞いたが、声まで大人な女の人で色っぽい。
「こんばんは。よろしくお願いします」
昴くんの声だ。なんだか、緊張しているようだ。
「こんばんは~~。今日も撮影あったけど、お疲れ様でした」
「はい。お疲れ様です。エリカさん、すごいですね。撮影の合間に、この時間にラジオしてるんですもんね」
「週一回だし。そんなに大変じゃないのよ」
ああ、なんだか確かに、話し方がお姉さんっぽい感じだ。
「そうかな。俺、撮影終わったら、すぐ家に帰って寝ちゃいますよ。バッタンキュ~~って」
あ、それは本当だ。ハードな撮影だと、昴くんはお風呂に入って出て、即行寝てしまう。ただし、夢の中ではめちゃ元気で、抱きついてくるけど…。
「バッタンキュ~?あはは…。それはきっと、若い証拠ね」
「ええ?そうですか?」
昴くんは、ちょっと返答に困ってるようだった。
「昴くんは、どう?今度の役…。圭介と昴くんって、どうなの?似ているの?」
「そうですね。似ているところもあります。ちょっと能天気っていうか、おちゃらけちゃうところとか」
「え?そう?現場では、そんなでもないよね。けっこう真剣で、いつも静かで」
「あ…、初めだからまだ、猫かぶってます」
「あら、そうなの~~?ふふふ。じゃ、本性が出るのが楽しみね」
「エリカさんはどうなんですか?瑞希と似てますか?」
「まったく正反対かも」
「え?そうなんですか?でも見た感じは、ぴったりかなって思いますけど」
「性格は全然違う。私、人見知りもしないし、いつでも強気だし、好きな人が出来たら、どんどんアプローチしちゃうし」
「肉食女子ですか?」
「そうね。そうかもしれない」
「意外ですね」
「そう?大人しく見えた?」
「いえ。でも、自分からどんどんいくタイプには見えませんでした」
「そう?あの瑞希って私が思うに、作者の空野いのりさんに似ているんじゃないかしらね?」
「え?どうしてそう思うんですか?」
「空野いのりさんが、今書いてる小説も読んでるんだけど、その主人公の女性も瑞希に似ている。きっと、自分がモデルなんじゃない?」
『うん。するどい』
昴くんの心の声がした。
「昴くんは、瑞希みたいな女性タイプ?」
「え?俺っすか?はい、そうですね」
「年上の彼女いるんだよね~~。私とあまり年、変わらないんじゃない?」
「はい」
「そんな年上だと、甘えさせてくれるのかな?」
「ああ…。はい」
「あら?間があったけど…」
「いや、あの…。俺、いや僕は、なんか相当な甘えん坊らしくて」
「あら、そうなの?」
「いつも子どもっぽいとか、ガキだって言われてます」
『言ってる?私…!?』
「そういうところが、その人は好きなんじゃないの?私は、ちょっと年下の人苦手だけど」
「え?」
「自分が甘えたい方だから」
「あ。ああ、そうなんすか」
「じゃ、昴くんは甘えてきたりされるのが、苦手なんだ」
「いいえ。甘えてきてくれたら、嬉しいっす。すごく」
「え?そうなの?」
「あ…。たまになんすけど、甘えてくるから…。そういうとき、けっこう嬉しくて」
「そうなの。彼女甘えたりするんだ」
「たまにです」
「ふうん。でもいつもは、大人な感じなのね?」
「いいえ。まったく」
「え?」
『え?!!何を言う気?』
「子どもっぽいですよ、たまに俺よりも…。やきもちやきだし、すねるし…。そういうところが可愛いんですけど」
『昴くん~~~~!何を言い出すのよ~~~!!!!!!』
「わあ。そうなの?聞いててこっちが赤面だわ」
「あ、すみません。つい…」
「そろそろ、映画の話に戻るけど…。もし、昴くんがこの圭介みたいに、自分がもうすぐ死ぬかもしれないってなったら、どうする?」
「そうですね。う~~ん、一緒かな?」
「え?」
「俺も、愛してる人と、今っていう時を思い切り生きますね」
「別れるよりも、共に生きるほうを選ぶ?」
「はい」
「もし、逆だったら?」
「立場がですか?それでも一緒です。共に生きます。愛してる人と絶対に、離れたりしません。一緒に喜びも、悲しみも、苦しみも全部を、共有して、愛して生きていくと思います」
そう昴くんが言うと、ラジオからものすごい光が飛び出してきた。それはすごい勢いで、辺り1面を包み込んだ。
「昴くんって、すごいのね」
「え?何がですか?」
「そういうのを言い切ってしまうところがよ」
「そうですか?え?エリカさんは違うんですか?」
「私は苦しんだり、悲しんだりは嫌かな…」
「だけど本当に愛してたら、どんな相手も愛すと思うし…、共にいたい、ずっといたいって思いますよ、きっと…」
「そんな相手に会ってないんだわね、きっとまだ…」
「うん、そうかも」
「昴くんは会ってるんだね」
「はい」
「それじゃ、圭介の思いは、昴くん思い切りわかるんだ」
「そうですね。だけど一回圭介は、瑞希のもとを去ろうとするじゃないですか」
「うん。自分の命が短いと知ってね」
「俺、あれはしないと思います」
「え?どうして?」
「う~~ん。きっと、そうだったら、素直に言うと思うんですよね。自分の命がもう長くないって」
「それで?」
「それでも相手を愛してて、ずっと愛してて…。ただ、もし、俺が一緒にいることが相手を不幸にすることなら、離れます」
「え?」
「でも、相手も俺と一緒にいることを選んでくれるなら、一緒にいます」
「……」
「相手に何も言わず、相手の思いも聞かず、勝手に別れるようなことはきっとしません」
「どうして?好きな人を苦しめるかもしれないのに?」
「もし、逆の立場だったら、俺、絶対に打ち明けて欲しいって思うんですよね」
「……」
「俺、命が短いってことを知っても、それでもそばにいて愛していくと思います。相手が黙って去ったりしたら、そっちの方がつらいですよ、きっと」
昴くんがそう言うと、すごい光が飛び出した。私は、なんだか感動してしまった。涙が思わず溢れ出てきた。
「きっと、相手もそう思うんじゃないかって、そんな気がします。黙って去ったりしたら、きっとつらいですよ」
「そうか。すごいね。すごい信頼関係って言うか…」
「はい。すんげえ、愛し合ってるから、俺ら…」
また、昴くんからものすごい光が飛び出した。
「それ、今お付き合いしてる人とってことよね?」
「え?はい…。あ、すみません。また話がそっちにそれた…。えっと、映画ですね!今、撮影進んでて、夏に公開になります。あ、主題歌も決まったんですよね?」
「そうそう。素敵な曲。挿入歌は小説の中にも出てくる、HANABI」
「はい。いい歌ですよね」
「じゃあ、その曲を今、かけましょうか?」
「はい。お願いします」
「では、ミスターチルドレンで、HANABI。お聞きください」
HANABIが流れた。この曲を聴いてたときに、ちょうど小説を書いてて、ぴったりだなって思ったんだよね…。
『ひかり?俺の声聞こえる?』
『聞こえるよ』
『ごめん、なんか思い切り、すごいこと俺言ってたよね?』
『顔から火、出たよ』
『俺も!思い出して、今、顔あっつい…』
『あはは!昴くんでも照れるの?』
『う…。そりゃ、まあ。その…。あ、エリカさん話しかけてきたから、またね』
歌が終わるとCMになった。CMあけに、すぐまた昴くんが紹介された。
「今日のゲストは、天宮昴くんです」
「こんばんは」
「ここらか聞いた方、もう大変ですよ!昴くんは、ずっと彼女とのこと、のろけっぱなしなんです」
「ああ!すみません。もうしません」
「あはは…。いいんだけどね。一人身の人にはつらいかな」
「え?そうなんですか?」
「彼女が羨ましいわ」
「えっと…」
昴くんは困った感じで黙ったが、その間にも光を思い切り出し、エリカさんから出た黒い霧を一気に消した。
「そうだ。空野いのりさんは、実名も顔もふせてて、私たちも会ったことがないんだけど、昴くんの好みのタイプなんじゃない?どうする?もし会っちゃったら」
「え?そうですね。多分、俺の好みかもしれないですよね」
「そうしたら、どうする?好きになったりしない?」
「う、う~~~ん。どうするかな?わからないっす」
昴くんは、心の中では、
『ひかりだもん。好きに決まってるじゃん』
って言ってたけど、困った振りをしていた。
「あれれ~~?そんなことで動揺してたら、これ、もし彼女が聞いてたら、妬くんじゃないの?」
「ああ…。あはは…」
昴くんは笑ってごまかしていた。
「さて…、あんまりのろけてばかりだから、ちょっといじめてみました。でも、これで喧嘩はしないでね。それも私のせいにはしないでね」
「あはは。大丈夫っす。喧嘩したことないから」
「え?」
「あ…。喧嘩っていうか、すねたりってのはありますけど、どっちかが、すぐに折れる…。あ、違うか。どっちかがすねると、それも可愛いって言って、喧嘩にならない…」
「わかった!ストップ!もういい。のろけはたくさんです。さ、もう帰ってもらいましょうか!ファンの人も、たまらないかもよ。そののろけ…」
「あ…。すみません」
昴くんは本当に、申し訳なさそうにそう言ってた。
「今日のゲストは、天宮昴くんでした。まだまだ彼女とアツアツの…。まだ、撮影始まったばかりだし、これからもよろしくね」
「はい」
「頑張っていい映画にしていきましょう」
「はい、よろしくお願いします。あと、ぜひ、すごくいい映画なので、楽しみにしていてください」
「そうよね、昴くん一押しの小説だったんだものね。台本読んだけど、泣ける感動の映画です。楽しみにしててくださいね。では、天宮昴くんでした~」
そしてまた、CMにいった。そのあともずっと、ラジオは続いたけど、昴くんが心で話しかけてきた。
『ひかり~。今からタクシーで帰る』
『うん。お疲れ様』
『帰ったら即行、風呂はいる』
『あっためておくね』
『そうしたら、即行、寝る』
『ふふ。バタンキュ~でしょ?』
『で、寝たらひかりとめっちゃ、愛し合う』
『……』
ほんとにもう~~…。そういうことろが、子どもっぽい?甘えん坊なところ…?まあ、いいんだけど、そういうところも、可愛いから。
『でしょ?』
『でしょって何?自分で言うかな、もう~~』
ふ…。昴くんの声が消えた。エネルギーを集中すると寝てた。タクシーに乗り、寝てしまったようだった。
『ひかり~…。ただいま~』
30分して、すごい眠そうな声が聞こえた。
『おかえり』
そう言って、私はドアを開けに行った。昴くんは眠そうな目をこすりながら、玄関に入った。
「風呂、入ってくる」
昴くんはそう言うと、お風呂に入りに行った。あまり長いときには、気をつけてないと寝てるときがある。この前も、バスタブの中で、ぐーすか寝ていたことがあった。
よく今まで一人暮らしで、大丈夫だったねって心で言ったら、一人だったから、その辺は気をつけていたって返答があった。どうやら、私と一緒に暮らすようになり、ものすごい安心感があるらしい。
お風呂からあがると、いつものように歯ブラシを口につっこみ、バスタオルで頭をゴシゴシしながら部屋に来て、ぼけ~~ってしながらしばらく歯を磨いていた。何を考えてるんだろうと思って、意識を集中したら、まったく真っ白けだった。
あ、なんにも考えてないんだ…。少しして、
『ね、眠い…』
って声と、それから、
『ああ。俺、ラジオですごいこと言ってたよね…』
って声がした。
「うん、赤面ものだったよ」
って言うと、昴くんはすっくと立ち上がり、口をゆすいで戻ってきて、
「おやすみ」
と、ベッドにうつ伏せで倒れこんだ。
「髪、全然乾いてないよ!風邪ひいちゃうよ」
「乾かして~~」
しょうがないな~~。
ドライヤーを持ってきて、昴くんをベッドに座らせ乾かしてあげると、半分くらい乾いたところで、
「も、駄目…」
と言って、倒れこんだ。そして、すぐにグ~~って寝てしまった。相当、疲れてるようだ。撮影、ハードなのかな…。半乾きだと、翌日、本当に髪がすごいことになってるんだけどな~。
私も、昴くんの隣に潜り込み、眠りに着いた。
「ひかり。今寝たの?」
夢の中で昴くんは、海を見ていた。
「うん。ここ、江ノ島?」
「うん。高校1年の時にね、来たんだ。撮影でさ」
「観たよ、その映画。サーフィンの映画だよね」
「うん。また、ここで撮影があるんだ」
「『今このときを愛してる』の撮影でしょ?」
「そう、圭介と瑞希が、デートする場面」
「ふうん」
「俺、この撮影終わったら免許取るから、そうしたらドライブに来ようね」
「うん」
「あ~~。なんか潮の香りがする。それに、風も気持ちいいね。夢なのにね」
「うん」
「ひかり」
昴くんが抱きついてきて、キスをした。
「わ!こんなところで…」
「え?でも、夢じゃん」
ああ…。そうか…。
「あれ?昴くん、髪の毛濡れてない?」
「あ。半分しか乾かしてないから」
「でも、これ夢だよ」
「あ~~、そうか。なんで夢なのに、髪濡れてるかな?」
「ふふ…。変だよね~~」
昴くんはそのまま、私を押し倒してきた。
「あれ?部屋じゃないの?」
「え?」
「だって、いつもこういう時は昴くんの部屋にならない?」
「うん、でも今日は海、気持ちいいからここでいいや」
えええ~~?!思わず、私は慌ててしまった。
でもその時、どこからともなく、ボーダーコリーが走ってきて、それを見た昴くんが、
「あ!クロ!」
って言って、追いかけていった。「今このときを愛してる」に出てくる犬だ…。ああ、また、映画と夢と、ごっちゃになってるなあ…。
昴くんは思い切り早く犬と走り回り、楽しそうだった。そして、息をまったく切らすこともなく戻ってきて、
「犬もいいね。猫も可愛いけどさ」
って満足そうに笑った。
3月28日、本が出版されると同時に、すごい売れ行きであっという間に1万部を超えた。
その後、「2012年 愛と光の地球」も出版が決まり、担当者がつき、早速ゲラ刷りが送られてきた。
「これ、けっこう苦手…」
何度もチェックをするんだけど、たまに寝ちゃう時がある。
昴くんは、その頃撮影に追われていた。私の小説は、桜だったり、若葉だったり、初夏の海だったり、そんな場面があって、桜の時期や若葉の公園の場面を先に撮影したり、そのあとに海の場面を撮ったりして、順番が逆転していることもあり、けっこう昴くんは大変なようだった。
出会いのシーンや、はじめにデートをするシーンを撮る前に、出産や出産目前のシーンを撮らないとならない。気持ちの持ちようだったり、入れ方だったり、そういうのがすごく難しいようだった。
でもそういうのも、すごい集中力でこなしていくようで、その集中するパワーを使い果たし、疲れきって家に帰ってくるのだ。そんな時には、もうヘロヘロで甘えてくる。
「ひ~~か~~り~~~~。一緒に風呂入って~~」
疲れてるんだから、一人でゆっくりと入りたくないのかなって思っていると、
「髪、洗って」
と甘えてくる。もう、3歳児か!君は~~って思いつつも、洗ってあげてしまう。それから、爪を切ってあげたり、耳掃除をしてあげたり。
昴くんは、気持ちよさそうにして眠気眼だけど、台詞を覚えないとならない日は別だった。お風呂に入って出てくると、顔を思い切り洗い、苦そうな濃いコーヒーを飲んで、
「お、ぼ、え、る、ぞ!」
と気合を入れ、リビングにどっかと座り込んで黙り込む。
声もかけられない…。その集中力はすさまじく、こりゃ、こんな集中力で撮影してたら、力使い果たすのも無理はないって、本当にそう思う。だけど、そんな昴くんを見ているのも幸せで、その横で私はしばらく、ぼ~~ってしている。
眺めていても、みとれていても、まったく昴くんの目には映らないようで、私に関係なく台詞を覚えている。
でもしばらくして、伸びをしたりコーヒーを飲むと、私のことを見て光を送ってくる。
「ひかり、俺といちゃつけなくて、寂しい?」
「え?ううん。なんで?」
「なんだ~~。ちぇ。嘘でもそこは、寂しい、昴くんのばかばかばかって言ってくれなきゃ」
と笑って言う。
「え~~。もう、いいから、続き覚えたら?」
「なんだよ、せっかくひかりとの会話を楽しもうと思ってたのに」
「それは嬉しいけど、でも、私は昴くんのこと、見ていられるだけで幸せだから」
そう本心を言うと、昴くんは少し顔を赤くして、
「そっか…。そうだよね」
って言って、また台本の方に集中し出した。
昴くんのオーラを感じて、昴くんの匂いを感じて、昴くんの息遣いを感じられたら、それだけで、本当に満足だ。昴くんといるその空間は、めちゃくちゃ、幸せな空間だった。
7月、梅雨が明ける前、映画が公開になった。
公開前に試写会があり、昴くんはその日、舞台挨拶をした。その日私と葉月ちゃん、それに珠代ちゃんも、昴くんが試写会に招待してくれて見に行った。
昴くんが登場すると、会場からものすごい声援。挨拶をしても、ものすごい黄色い声…。
「すごい人気だよね」
と葉月ちゃんが言うと、
「本当だね。でもわかるよ。昴くん、めっちゃかっこいいもの」
と珠代ちゃんが言った。
確かに…。舞台で挨拶をして、手を振る昴くんは、今日おしゃれなスーツ姿。もう年齢も20歳になり、大人っぽくなっていた。いつもの子どもらしさがなく、セクシーさも出てかっこよかった。
その横で、菅原エリカもまた色っぽかった。
「菅原エリカも奇麗だよね~~」
葉月ちゃんがそう言うと、
「でも、絶対に星野さんと昴くんの方が、お似合いです」
と珠代ちゃんが言った。
舞台挨拶はあっという間に終わり、それから映画が始まった。昴くんたち出演者も、1番前の席に座り、試写会を見ていた。
途中から、鼻をすする音が聞こえ出した。隣に座ってる葉月ちゃんや、珠代ちゃんも泣いていて、目にハンカチを当てていた。私も我慢していたけど、途中からボロボロ泣いてしまった。ああ。私が書いたストーリーだと言うのに…。
だけど、俳優陣の演技も脚本もすばらしく、特に昴くんの自分の死を知って、がくぜんとするところや、瑞希に嘘をついて、あとで苦しむ姿は胸が痛くなった。
菅原エリカの演技も素晴らしくて、何度も何度も涙を誘われた。
ラブシーンはさすがに、直視できなかったけど、嫉妬ではなくて、こんなふうにいつも昴くんにキスされてるのかなって思ったら、思い切り恥ずかしくなって見れなくなった。
映画が終わると、ものすごい拍手。なかなかなりやまなかった。私も思い切り、拍手をした。
出演者が、舞台の前でこちらを向き頭を下げて、監督からまたお礼の言葉があり、それから主演の昴くんからも一言と言われて、
「あの、実は映画全部を見たのは、僕も初めてです。感動しました。泣いちゃいました…。皆さん、拍手をありがとうございます。もし良かったらまた、映画館に足を運んで観て下さい」
と、笑いながらそう言った。すると、また会場中から拍手と黄色い声。
「昴くん、かっこよかった~」
とか、
「感動して泣いたよ~~」
とか、そんな声援が飛んだ。
昴くんは、もう一回ぺこって深くお辞儀をして顔を上げると、にこにこしながらみんなに手を振った。ものすごい光も飛び出してて、会場が光で覆われていた。
映画からもすごい光が飛び出していた。昴くん、いつでも光を出して、すべてを包み込んでいるんだな。私も見習わないとな…。って思っていると、
『ひかりもすごい光、出してるよ』
って声がした。昴くんの方を見ると、私の方を見てにこって笑った。
「ひかりさん、今、心で会話してたでしょ?」
と隣で、葉月ちゃんがつついてきた。
「え?なんでわかるの?」
「見つめあって笑ってたら、わかりますって」
葉月ちゃんにそう言われて、なんだか照れくさくなった。
「今度、映画館にも悟くんと観にいきますね」
「え?悟くんと?」
「今日は仕事でどうしても、来れなかったって。すごくこの映画、悟くんも楽しみにしてるんですよ」
葉月ちゃんが、そう言ってくれて嬉しかった。
会場を出ると、試写会を観た人たちが、
「良かったね~~。私、また観にいこう」
なんて会話をしていた。みんな、映画感動したんだな…。嬉しいな…。
映画が公開されるとすぐに、薫や、美里がメールをくれた。
>観たよ。素晴らしい映画だね。本も買って読んだけど、ひかり、すごいわ。
>昴くん、いい演技してたね。映画、泣いちゃったよ。
それに兄からも、徹郎からも、緒方さんからもメールが来て、映画、素晴らしかったと書いてあった。
ノエルさんから電話も来た。あの映画は、ものすごい光を出していて、多くの闇のエネルギーを浄化していますね…。そんなことを言ってくれた。
昴くんは、映画のキャンペーンで、日本中を回ったりテレビで宣伝したり、しばらく忙しかった。でも、どこでも昴くんは光を出していて、それが画面から飛び出し辺りを包み込んでいた。きっと映画館もいつも、光で満たされているんだろうな…。
映画はものすごいヒットをして、あっという間に、ランキングの1位になっていた。テレビでもCMが流れ、ポスターも貼られてて、どこにいてもいつでも、昴くんの顔を見れるほどだった。
公開から1週間して落ち着いてきて、昴くんは1日オフが取れた。前々から、白河さんが本山の瞑想の会に、参加しませんかって誘ってくれていたので、その日、二人で行くことにした。
久しぶりに、みんなと会う。昴くんと私は、漆原さんの車に乗せてもらい、流音さんも一緒に本山に行った。途中、漆原さんと流音さんも映画を観たという話になり、車中は盛り上がった。
「すごいね、あの映画は。昴からの光がとにかくすごい」
漆原さんは、すごいを連発していた。
「あの映画を観た人も、ひかりさんの本を読んだ人も、あっという間に闇を浄化できちゃうんじゃない?ひかりさんの本も、すごい光が出てるわよね」
流音さんがそう言ってくれた。
「感想が俺のブログにも、ひかりの小説のサイトにも書かれてるんですけど、けっこう今に生きるようにしていますっていうコメント、多いんですよね」
昴くんがそう言った。
「今に生きる…。それが大事だもんな。あの小説も映画も、そのメッセージが強い」
漆原さんがそう言うと、
「それに、無償の愛よね。相手のすべてを受け入れ愛す…」
流音さんがそう付け加えた。
「あ、そういったコメントも多いです。圭介と瑞希のような、恋愛がしたい。すべてを愛し、受け入れられるような、そんな相手と出会いたいって…」
私がそう言うと、
「俺のブログには、昴くんと彼女みたいな恋愛がしたいって、コメント書かれてるよ」
と、昴くんはちょっと嬉しそうに言った。
「ああ、菅原エリカのラジオ番組、聞いてたよ。昴がゲストで出てたやつ。お前思い切り、のろけてたよな~。あはは…」
漆原さんが笑いながらそう言った。
「でもね、そのたびにすごい光が飛び出てたわよね」
流音さんもそう言うと、笑っていた。
「う~~ん。なんで、のろけちゃうのかな。俺…。でも、光が出てるんだから、いいよね?」
昴くんが少し照れくさそうにそう言って、私の手を握ってきた。
『のろけてるつもりはないんだよね。ただ、本当のこと言ってるだけなんだけどさ』
昴くんは心で私に話しかけてきた。
『ふふ…。そうだよね。でも、やっぱり聞いてて、恥ずかしかったよ~』
『そう?』
『でも、ああいうこと、普通にみんなが話すような、そんな時代になるんだよね』
『ああ、そうそう。そうなるって思うよ、俺も』
昴くんはにこって微笑んで、私を見た。
本山に着き広間に行くと、たくさんの知った人がいて、私たちは喜んだ。夏樹くん、春彦くん、それに冬美さんもいた。珠代ちゃんと、陽平くんも来ていた。白河さんやノエルさんとも久々の再会だった。
「いらっしゃい。待っていましたよ」
白河さんが優しく出迎えてくれた。
「ひかりさん、昴くん、映画観ましたよ」
夏樹くんが、話しかけてきた。
「すごいですね、あれは…。ものすごい光が出てて、観てる人の闇を包み込んでしまう」
「うん。僕も観たけど、感動しました」
春彦くんも大きくうなづきながら、そう言った。
「ありがとうございます」
昴くんはぺこって頭を下げた。
「ひかりさんの『2012年 愛と光の地球』も、もうすぐ出版されるんだそうだね」
白河さんが聞いてきた。
「はい。今、印刷しています。8月頭には出る予定です」
「そうか…。楽しみだね」
「白河さんも、瞑想の本出版されるんですよね?」
昴くんがそう聞くと、
「うん。前に瞑想の本に、ここが紹介されてね…。それから、大手の出版社が本を出さないかと言ってきた。瞑想の会に来る人も、目覚める人も、本当に増えたんだよ」
と白河さんが答えた。
「白河さんのブログもすごいですよね。毎日、1万以上のアクセスがあって」
「今日も、多くの人が来ているよ。さあ、そろそろ中庭に移動しようか」
白河さんにそう言われて、私たちは中庭へと移動した。
板の間には、もうすでに数十人の人が座っていた。私たちも、板の間にあがりみんなで座った。白河さんが何かを唱え、それからしばらくすると、ものすごい光に包まれた。
私はその光と同化して、そのうちに自分という意識が消えてなくなった。そこには、ただ広がる世界…。
辺りはしんと静まり返っていて、その空間のすべてを同時に感じていた。ものすごく冴えていて、空の色、辺りの匂い、中庭にある木の緑、空を飛んでいく鳥、隣の人の呼吸、自分の心臓の音、すべてが感じ取れた。
私はいなかった。でもすべてが私だった。そう…、分離感がなくなり大いなるひとつになっていた。
その時、どこからともなく声が聞こえてきた。
『地球の波動が変わりましたね』
私の声だった。
『あなたには、選択することが出来ますよ。高い次元に戻り私と同化して光になることも出来ます。そして、そのまま地球で、ひかりとして、生きていくこともできます』
『…あなたは、高い次元の、私?』
『はい。そうです』
私のこの次元よりも、もっと高い次元の私からの呼びかけだった。驚いた。初めてだ…。
『ひかり。あなたが感じたこと、体験したことを、私も一緒に体験し、感じていました』
『え?』
『素晴らしい愛の体験でしたね。その愛を知るために、あなたは、地球に行きました。そして、愛をすべてに送り、包み込み、地球を愛の星へと変化させていきました』
『はい。それが私と昴くんのミッションでした。あ、じゃあ、もうミッションクリアですか?』
『いいえ』
『まだなんですね?』
『まだでもないし、クリアでもありません』
『どういうこと?』
『あなたは、もともと愛と光の存在で、愛と光を送り出していました。つねに』
『え?』
『いまここで、つねに、そして永遠に…。はじめからミッションが遂行されていたといえば、遂行されていましたし、そんなミッションはなかったといえば、なかったのです』
『え?』
『あなたは、もともとそれをしていたのですから。そしてこれからも、ずっと』
『……』
『あなたは、本来のあなたに戻っただけですよ。ひかり…』
『本来の私に?』
『ええ。そしてこれからも、ずっとあなたでい続けるでしょう』
『愛と光の私?』
『ええ』
『……』
ミッションはつねに遂行されてる。これからもずっと。ううん。ミッションも何も、私がその愛と光そのものなんだ。だから、もともとミッションなんてない…。
『そうです、ひかり』
『地球も愛と光そのもので、宇宙も愛と光そのもので、今まで変わったこともなければ、これからも永遠に愛と光なんですね』
『そうです。つねにいまここで、あなたも、すべての存在も愛と光です。それ以上もない、それ以下もない。すべてが愛と光です』
「……」
そうか…。ずっと、幻想を見ていたんだ。今までの苦しみも、悲しみも、出来事も、すべてが幻想だった。
今この時に、創り上げた幻想の中にいた。だけど、本当の真実の私たちの姿は、愛と光だった。そうじゃない存在など、いないのだ。
一回も苦しみの中や、哀しみの中にいたこともない。そんな存在になったこともない。それはすべてが、幻想だったんだ。
『そうです。ひかり。すべてが幻想です。夢の中にいたのです。すっかり目覚めましたね』
『はい』
『目覚めたうえで、もう1度聞きますよ。あなたは、地球で生きることを選択しますか?』
『はい。目覚めた意識で、愛と光の存在として、愛と光の星で生きます』
『どうぞ、新しい波動の地球で、生きることを楽しんでください。私は、あなたと共に、それを体験します』
『はい…』
ストン…。意識が完全に戻ってきた。目を開けると、隣にいた昴くんが同時に私の方を向いた。
『今、高い次元の俺の声がして』
『私も』
『ひかりも?』
『うん。地球で生きることを選択しますかって聞かれた』
『それで?』
『新しい波動の地球で生きるって答えたよ』
『俺もだ』
『ミッションも、はじめからなかったって言われた』
『俺もだよ。もともと愛と光の存在で、もともと俺らは、愛と光を送っていた。そういう存在なんだって』
『幻想だったんだね。すべてが…』
『うん』
『これからは、目を覚ました状態で、この地球で楽しもうね』
『愛と光の存在、そのものでね』
『うん…』
私たちは、宇宙そのものだ…。愛そのものだ…。光そのものだ…。
それはどの存在もそうだ。例外などどこにもいない。
すべてが私で、すべてが愛だ…。
それを感じたら、私も昴くんも泣いていた。
今までも、宇宙だと感じた。すべてが私だって感じたけど、この地球で起きていたことはすべてが幻想であり、私たちがみんなで見ていた、夢だったと知った。
そして、リアルな、真実の世界は…。無限に広がる、宇宙……。それが私たち……。
大きな意識。愛の意識…。それが、私たち……。
さあ、これからもまた、新しい波動の地球で、素敵な夢を紡いでいく…。
大きな愛の意識のままで、素敵な愛を体験していこう…。
愛を体験することが、宇宙の望みなのだから……。