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ミッション7 高い次元に戻る

1月6日。私は、無事退院した。遺症はやはり、残ってしまった。左足を引きずるようになったことと、運動をするのは困難になるだろうと言われた。


早く歩くことも難しい。だが、昴くんがいつも手をつないで、隣で歩く速さをあわせてくれて、私をつねに守ってくれていた。


退院するときに、両親と兄が来てくれた。それから、昴くんとこれからは、人のために何かをしていきたいから、白河さんの娘さんのいるお屋敷に行くと言うと賛成をしてくれた。


「ひかりのことを頼んだよ、昴くん」


父に言われて、昴くんは真剣な顔つきで、


「はい」


と答えていた。


「それから、昴くんの家族のことは心配しないでもいい。経済的な援助はさせてもらうよ」


「え?でも…」


「償わせてくれ…。な?」


「…はい。ありがとうございます」


父の顔は、本当に穏やかだった。


「ひかり、たまには顔を見せに来てね」


母に言われた。


「うん。お母さん、体に気をつけてね」


私は、母を優しく抱きしめてそう言った。私と昴くんは、その間ずっと、この次元の私たちになっていた。


「じゃあ、行くね」


私が言うと、昴くんが私の手を引いて歩き出した。この次元の昴くんもまた、すごく優しくて、あったかいエネルギーを手から送ってくれていた。


退院するときには、お世話になった医師、看護士さんがみんなで見送りに来てくれた。そして、花束をくれた。その場面を写真に撮られたり、テレビ局も映しに来ていたが、そんなに騒動にもならず、終始私も昴くんも、一緒にいてくれた白河さんや、漆原さんも光を出していた。


その後テレビや、週刊誌にずっと昴くんが寄り添っている写真が写っていたが、どのコメントも、


「愛が奇跡を起こした」


と書いてあった。昴くんはどの写真でも映像でも、優しい表情で私を見ていて、私はすっかり昴くんを信頼しきっているそんな表情だった。あとで、それを見て、二人して照れてしまったんだけど…。


退院してすぐに漆原さんに、車で本山まで送ってもらった。本山に到着すると、ノエルさんと珠代ちゃんがお屋敷から出てきた。


「ひかりさん」


ノエルさんは優しく微笑んで、出迎えてくれた。


「良かったわ、回復して。本当に良かったわ」


ノエルさんの目は、潤んでいた。


「星野さん!すごく元気になったんでんすね」


珠代ちゃんも喜んでいた。


「ありがとう。みんなで光を送ってくれてたでしょう?ずっと、感じてたよ」


私が珠代ちゃんに言うと、珠代ちゃんは嬉しそうにうなづいた。


悟くん、葉月ちゃん、そして陽平くんもお屋敷から出てきた。


「おう!一足先に来てたよ」


と、悟くんが昴くんに言った。昴くんは、にこっと微笑んで答えたが、でもずっと私の手を取り、私が歩くのを支えてくれていた。


お屋敷に入り、大広間に行くと多くの人がいて、


「ひかりさん、退院おめでとうございます」


と声を揃えて言ってくれた。


「え?!」


私も昴くんも驚いてしまった。


「みんな、仲間よ」


ノエルさんが優しく微笑みながら、そう言った。漆原さん、流音さんもいた。記者の人、会見で司会をしてくれた人、他にも知った顔が何人かいた。こんなに多くの人が、仲間なんだ。


「高い次元でどんどん目覚めて、こっちの次元の応援に来てくれた人もいれば、この次元で目覚めた人もいるの」


「すごい…」


私も昴くんも、なんだか感動してしまった。


「会見、すばらしかったです。見てて感動して、泣いちゃいました」


珠代ちゃんがそう言った。周りのみんなも、うなづいた。


「さあ、車に乗って疲れたでしょう?ひかりさん、少し休んで。夜はみんなで、退院祝いしましょうね」


ノエルさんがそう言うと、


「はい、じゃ、俺、ひかりを部屋に連れて行きます」


と昴くんは、私の手を引き歩き出した。


「昴くん、ひかりさん、明日の朝、父が戻ってくるわ。そうしたら、高い次元に帰りましょうね」


ノエルさんが私たちの背中に向かって、そう言ってきた。


「はい」


私も昴くんも立ち止まって、ノエルさんの方を振り返ってうなづいた。それから、ゆっくりと階段を登り、部屋に行った。


部屋に入ると、ベッドに私は座った。


「ひかり、疲れたでしょ?」


「うん…」


「少し寝ようか?夕飯までにはまだまだ、時間があるし」


「うん。そうする」


私はベッドに潜り込んだ。昴くんは隣のベッドに座って、私の顔を見ていた。


「なあに?」


「うん…。なんか、いろいろとあったなって思って」


「そうだね。この次元に来て、10日くらいしか経ってないのにね」


「うん」


「昴くんも疲れた?」


「うん…。あ、いや、俺は平気だけど」


昴くんは少し、ぼんやりとしていた。昴くんに集中すると、お父さんのことを考えていた。


『この次元の父さんのエネルギーっていうか、存在を感じるんだ』


『え?』


『すごく穏やかで、すごく優しくて、すごく喜んでいるような気がする』


『…良かったね』


『うん…。きっと、ひかりのお父さんのこと許して、ひかりのお父さんもすごく穏やかになって…。それに俺の家族を援助してくれるって言ってたでしょ?あれで、父さんすごく安心したみたいな気がする』


『うん、きっとそうだね』


「俺さ、ひかり…」


昴くんは私を見ながら、ぼそって話し出した。


「え?」


「今回のことで、本当に思ったことがある」


「何?」


「どんな大変なことも、辛いと思うことも、苦しいと思うことも、やっぱり、心配しなくても大丈夫だってこと」


「…うん」


「すべてが、愛につながってた」


「そうだね…」


「みんな、みんな、どんな存在も愛だった」


「うん」


「ひかり…」


昴くんは私のベッドの方に来て、私にキスをした。それから優しく頬をなぜながら心の中でつぶやいた。


『すんげえ、ひかりが愛しいよ』


『私も…』


そしてもう一回、キスをした。


『じゃあ、もう寝てね。ゆっくり休んで。ひかり…』


昴くんはそう心で言って、あったかいエネルギーを送ってくれた。ほんわかあったかくなり、私はすぐに眠りに着いた。


昴くんと出会ってから、まだ7ヶ月しかたっていない。不思議だ。もっと長い間、昴くんと一緒にいる気がする。


「そりゃそうだよ、ひかり。だって俺ら、地球に来る前から一緒にいるし、もともと同じ魂だもん」


昴くんが夢に現れてそう言った。


「あ、そうか。そうだよね」


「うん」


それからなんとなく、5月の幽体離脱をしたときからのことを、私は思い出していて、それがビジョンで現れていた。


「俺がひかりのことを知ったのは、もっと前だよ」


「私が、離婚してから3ヶ月家にこもってた頃でしょ?」


「うん」


「体に変化もあったの?」


「うん。ぐったりしたり、やる気なくしてたり、変な夢見てうなされてたり…」


「そうだったんだね…」


「鬱になったかと思ったんだ。ちょっとその頃、仕事もハードだったしね…。それである日、本当に具合が悪くなって、体も思うように動かなくなって寝込んでたら、急に魂が抜けちゃって…」


「幽体離脱したの?」


「そう。光に包まれたと思ったら、あの宇宙船にいた」


「そうだったんだ」


「あ、そういえば俺、思い出したんだ。あのとき、俺だけだったように感じてたけど、ひかりいたんだよね」


「宇宙船に?」


「うん。光の人型にはなってなかったけど、俺と同化してたんだ」


「私が?私の魂がってこと?」


「いや…。高い次元のひかりが…。つまり、プレアデス星人のひかりっていってもいいかな」


「……」


「ほら、どの次元にも俺はいて、ひかりもいるから」


「じゃ、宇宙船にいるときの私たちは、あの次元の私たちと同化してるのね?」


「うん」


「そうか…」


「そこで自分のミッションも、ひかりのことも思い出した。そしてひかりのエネルギーを感じて、ひかりの夢の中にいったり、魂になってひかりのそばにいったりしていたんだ」


「その頃、私は昴くんのファンになってて、昴くんのことを画面や、写真で見ていたのね?」


「うん」


「昴くんにあの頃から癒されてた…」


「そりゃそうだよ。だってあの頃から俺、ずっとひかりに光を送ってたんだから」


「ありがとう、昴くん…」


「いいよ…。俺、あの頃からひかりのこと、すごく愛しかったんだよね。ひかりって存在そのものが、嬉しくて…。だから光を送ることは、歓びになっていたよ」


「昴くん…」


夢の中で昴くんを抱きしめた。


「あ、やばいっす。俺、その気になりました」


くす…。


「あれ?今、笑った?」


「だって…、なんか昴くんらしいなって思って」


「何?それ!」


「あはは…」


私が笑うと、一気に場面が昴くんのマンションになり、


「いいよ。そうやって笑ってても、俺、勝手に押し倒しちゃうからさ」


と、昴くんはすねた顔でそう言った。


「昴くん!」


私は思い切り、昴くんの首に手を回して引き寄せると、


「私も、その気になっちゃった」


と言って、キスをした。


「え?え?」


昴くんは少し焦っていた。


『ひかり、夢の中だから?』


「え?」


「なんか、積極的で、俺、ちょっと焦る…」


くす…。


「あ、なんで笑うの?」


「だって…」


昴くん、すんごく可愛いんだもん…。


そして昴くんと、夢の中で抱き合った。夢の中で抱き合ったあと、そのままベッドで昴くんの腕枕で寝ていた。夢の中なのに、昴くんのぬくもりや匂いを感じて、すごく幸せだった。


突然、電話のベルが鳴って、夢の中で驚いてそして目が覚めた。


「あ。電話鳴ってる…」


そう言うと、昴くんは隣のベッドで寝ぼけながら起きて、


「はい…」


と電話に出た。


「あ、夕飯の時間?あれ、ほんとだ。はい…。今ひかりと行きます」


昴くんはそう言うと、受話器を置いた。


「は~~。なんか、夢の中でも俺ら、寝てなかった?」


「うん…」


「あ、そうだそうだ。激しく抱き合っちゃったから、夢の中でも疲れちゃって」


「ええ?そんな激しくなんて…」


私が真っ赤になると、


「あはは!ひかり、真っ赤だ!」


と昴くんは思い切り笑った。


それから私がベッドから出ると、また、手をつないでくれた。


「じゃ、下に行く?」


「うん」


昴くんに手を引かれて、ゆっくりと階段を下りて、私たちは食堂に行った。食堂には、大勢の人がいて、私たちが入り口を入るといっせいに、


「おめでとう!」


と拍手で出迎えてくれた。


「さ、ここに座って」


と流音さんに言われて、席に着いた。各テーブルには、鍋が用意されていて、もう、コップにビールやジュースが入れられていた。


「ひかりさんと昴くんは、ジュースでいいのかしら?」


「はい」


私たちがコップを手に持つと、みんなもコップを手にした。


「さあ、ひかりさんが無事に退院できたことを祝して、乾杯しましょう。乾杯!」


ノエルさんがそう言うと、みんなが、


「乾杯!」


といっせいに、声をあげた。私は嬉しくて、涙がこみ上げて来た。


思えば、本当にこっちの次元に来てからハードだったな…。


一口、ジュースを飲むと、


「俺、腹ぺこぺこ!ひかり、食おう、食おう!」


と、昴くんは嬉しそうにそう言った。


周りを見ると、みんな嬉しそうだった。葉月ちゃんと悟くんも、珠代ちゃんと陽平くんも、流音さんと漆原さんも…。みんなから光が飛び出し、きらきらとダンスをしていた。


『奇麗…』


その光を見て、そう思っていたら昴くんが、


『本当だ…。すごく奇麗な光だね』


と、心で言ってきた。


『これから、こんな光ばかりを見ることになるのかな』


『そうだね。だんだんと黒い霧よりも、光を見るようになるんだろうね』


『うん…』


食堂全体が光に覆われ、あったかくて、優しくて、そして楽しい気持ちになった。


きっと、地球全体がこうなっていくんだ…。どんどんこんな空間が、こんな場が広がっていくんだろうな…。そう思うと、嬉しくて、涙がこみ上げて来た。


『昴くん、これからも地球を光で包もうね』


『うん、そうだね。ひかり』


私たちはその日、心ゆくまで楽しんだ。


翌朝、太陽が昇る前に起きて、外の板の間にみんなで集まった。


「おはようございます」


板の間にはもう、白装束姿の白河さんがいた。


「おはよう。さて、これから少し高い次元へと帰って行きましょうか」


「白河さんもですか?」


昴くんが聞いた。


「そうです。ノエルも一緒にですよ」


「こちらでのミッションは、すべて完了ですか?」


「この次元の我々が、あとのことはしていきますよ。この次元のあなたたちと共にね」


白河さんは優しくそう言った。


「もうすぐ、日が昇る…。では、みんな、光をお互いに出し合いましょう」


白河さんは、なにやら唱え出した。同時にノエルさんも唱え出した。そして、辺り1面光に包まれ、朝日も浴びると、私たちは一回光と同化した。


す~~……。だんだんと体に魂が戻り、床の冷たさを感じ、自分の体重や、冷たい空気も感じた。


「戻ってきましたね…」


目を開けると、そこに夏樹くんがいて、私たちはびっくりした。


「夏樹くん?もっと高い次元に行ったんじゃないの?」


流音さんが聞くと、


「はい。戻りましたよ。俺はこの次元の夏樹です。高い次元の俺から、みなさんのことを迎えに行って欲しいといわれ、ここに来たんです」


「なんで、今日戻ってくると知ってたの?」


私が聞くと、


「私が、低い次元の夏樹くんに連絡しておいたのよ」


とノエルさんが言った。


「そうです。もっと高い次元でもあなたたちが戻ってくるのを、待っていますよ。すぐに戻りますか?」


「…ええ」


ノエルさんがそう答えた。


「あの!」


昴くんが夏樹くんの方を向いて、


「この次元の夏樹さんのお父さんは、どうしているんですか?」


と質問をした。


「はい…。すっかり穏やかになりました。白河さんのことをたたいていましたが、自ら、2012年に地球は破滅しないと発言して、白河さんの言うことの方が正しいのではないかと、そう思いなおしたと、メディアでも発表し、みんなを怖がらせるような本を出したことを詫びて、白河さんをたたいたことも詫びたんです」


「じゃ、もう白河さんの教団は…」


「はい、もうここも静かになりました。カメラマンも、レポーターももう来ていないですよ」


「そうだったんだ。良かった」


「夏樹くん、私たちが不在の間、教団を守っててくれてありがとう」


白河さんがそう言うと、


「いいえ。とんでもないです。みなさんのおかげで、父の体も回復したのですから、このくらい当然のことです」


と夏樹くんは答えた。


「え?」


私たちが、聞き返すと、


「高い次元の父の病気、すっかりよくなったんです。いきなり元気になって、医者たちも驚いてるようですよ」


夏樹くんはすごく嬉しそうに言った。


「そうだったの。よかった…」


私は心底、ほっとした。


「この次元の父も、本当に変わりました。低い次元で父が変わると、こんなにも違う次元の父も、変わるんですね」


「良かったわね、本当に」


ノエルさんは、優しく微笑みながらそう言った。


「さあ、夏樹くん、もうお父さんや兄弟のもとに、戻ってくれたまえ。私たちが戻ったから、教団の方はもう、大丈夫だ」


白河さんがそう言うと、夏樹くんは首を横に振った。


「いいえ…。俺もここで、手伝わせてください」


「え?」


「高い次元の俺も、白河さんのお屋敷で、瞑想の会のお手伝いしています。この次元でも、何か手伝いたいんです」


「そうか。ありがとう、夏樹くん」


白河さんが、穏やかにそう言った。


「この次元ではそろそろ、教団を解散しようと思っている。そして瞑想の会を開いていこうかと思っているんだよ。それを手伝ってくれるか?」


「はい。もちろん、喜んでお手伝いします」


夏樹くんがそう言うと、ノエルさんも白河さんも優しく微笑み返した。


「では、そろそろ、高い次元に戻るとするか?」


「はい…」


また、白河さんとノエルさんが、唱え出し、光を思い切り出した。私たちもお互いが光を出し合って、光で包み込んだ。


朝日もその光と同化した。一瞬、その光になった。それからまた、すっと体に戻ってきて、重力を感じた。


「おはようございます。待っていましたよ」


夏樹くんの声がまたした。目を開けると、そこには、夏樹くん、春彦くん、冬美さん、そして、海藤玄さんの姿があった。


「玄さん!」


白河さんが海藤玄さんのもとに歩み寄り、


「元気になったそうだね。良かった」


と手を握りしめていた。


「ああ。君や、子どもたちのおかげだよ…」


海藤玄さんはそう言うと、深く頭を下げた。


「良かった…。本当に良かった…」


白河さんは、目に涙を浮かべていた。その隣で、冬美さんも涙を流していた。


「話は全部、夏樹たちから聞いた。ひかりさん…」


海藤玄さんが私に、声をかけてきた。


「はい?」


「すまなかったね…。低い次元の私は、とんでもないことをして、あなたを苦しませたようだ」


「いいえ。大丈夫です」


私はそう言って、昴くんの手を掴み立ち上がった。


「体に、後遺症が残ったと聞いたが…」


海藤玄さんは、すまなさそうな顔でそう聞いてきた。


「ちょっと足をひきずるくらいなんです」


と私が言うと、


「ひかりさん、ちょっと一人で歩いてみない?」


とノエルさんがそう言った。


「え?はい」


私は昴くんの手を離し、歩き出だした。


「あ、あれ?」


すごく足が軽い。普通に歩ける。


「やっぱり…」


ノエルさんは、微笑みながらそう言った。


「え?どういうことですか?」


昴くんが、ノエルさんに聞くと、


「低い次元では後遺症が残ってしまったけど、この次元では関係ないと思うわ」


「え?」


「さっきの、ここよりも少し低い次元でも大丈夫だと思う」


ノエルさんはそう付け加えた。


「じゃ、この次元のひかりには、まったく後遺症は残ってない?」


昴くんがノエルさんにまた、聞き返した。


「そうよ。ね?ひかりさん、普通に歩けるでしょう?走ることもできるんじゃないかしら」


「……」


私はその場でジャンプをしてみたり、屈伸をしたりした。そして板の間から階段をおり、靴をはくと、辺りを軽く走ってみた。


「全然大丈夫です!ノエルさん!」


と私が大きな声で言うと、板の間にいたみんながいっせいに、


「ひかりさん、良かった!」


と声をあげた。昴くんは走って寄って来て、私に抱きついた。


「ひかり!」


「昴くん…」


嬉しかった。でもどこかで、低い次元で後遺症が残った私のことを思うと、心底喜ぶことはできなかった。それは昴くんも、同じように感じていたようだ。


「ひかり、低い次元のひかりのことは、その次元の俺が、全身全霊込めて守っていくから…。ね?」


「うん…」


抱きしめながら、昴くんがそう言ってくれた。


私たちは、食堂に移動した。そこにはもう、朝食の用意がされていた。みんなで朝食をとった。それから、夏樹くんや、春彦くんの車に乗り込み、みんなそれぞれの家に帰っていった。


私は、私の家まで送ってもらった。私が車を降りる時、


「ひかり、あとでまた会おうね」


と昴くんが言った。


「うん。それと、夏樹くん、送ってくれてありがとう」


「はい。また本山に方に来てください。いつでも待ってますから」


と夏樹くんはにっこりと微笑みながら、頭を下げた。車は発進した。車を見送ってから、私は家に入っていった。


「おかえり!」


母が玄関まで走って、出迎えてくれた。


「ただいま」


母の笑顔を見たら、すごくほっとした。低い次元の母は、少し顔色も悪く痩せていた。でもこの次元の母は、ふっくらとしてて顔色もいい。後ろから父も顔を出し、


「おお、ひかり、おかえり。旅行はどうだった?」


とにっこりと笑いながら、聞いてきた。


「あ、おみやげ、忘れた」


と言うと、


「ははは。まあいいさ。ひかりが無事に元気に帰って来たんだ。それだけで…」


と父は、笑った。ああ…。私は思わず、涙がこぼれそうになった。


もし、私が低い次元で死んでたら、この次元の私もいなくなってたんだ。帰ってくることはできなかったんだ。そうしたら、父も母もどれだけ、悲しんだだろうか…。そう思ったら、胸がいっぱいになった。


私、本当に元気に生きて、戻ってくることが出来てよかった…。ごめんね、そしてありがとうね、お父さん、お母さん…。心で私は二人に、そう言って、光を放った。父からも母からも、奇麗な光が出て、私を包み込んでいた。


それから自分の部屋にいき、パソコンを開いた。私の小説はすごいことになっていた。「今このときを愛してる」も、「2012年愛と光の地球」も、毎日何万という、アクセスがある。


>本が出版されると聞きました。楽しみにしています。


とか、


>映画化されるんですね。天宮昴くんが主演なんですね。すごく楽しみ。圭介役にぴったりですよね。

など、そんな感想が多かった。


この次元でも、すごいことが起きているんだな…。


『ひかり、今日、午後会えない?』


昴くんが心で聞いてきた。


『うん、会えるよ。何もないもの』


『俺、明日から仕事なんだ。夜だけなんだけどさ…。だから、泊まっていかない?』


『え?


『駄目?』


『旅行から帰って来たのに、いきなりもう泊まってきたりしたら…』


『怒られちゃう?』


『怒られないけど…。今日は家にいて、こっちの両親といたいな…』


『そっか…。わかった』


『でもこれから、行くよ?』


『うん。待ってるよ』


私は、着替えをして一階に下り、母が淹れてくれたコーヒーをゆっくりと飲んだ。それから、


「ちょっと出かけてくるね」


と言うと、

「あら、疲れてないの?大丈夫?」


母が私にそう聞いてきた。


「うん、大丈夫…」


私はそう答えて、昴くんのマンションへと急いだ。


ちょうど、昴くんの家に着いたのは12時頃。玄関を入ると、いい匂いがした。


「和風スパ。作ったんだ」


昴くんがそう言って、にこって笑った。


「あ、覚えててくれたの?私が食べたがってたのを…」


「もちろん」


昴くんはそう言うと、私をダイニングの椅子に座らせた。それから、スパゲッティとサラダを持って、テーブルに並べだした。


「ひかり…。あのさ…」


昴くんも椅子に座って一緒に食べだすと、昴くんが話しかけてきた。


「何?」


「一緒に暮らさない?」


「……」


私は何も答えなかったが、昴くんは私の気持ちを察していた。


「うん。俺も…。俺も、ひかりといつも一緒にいたいって思ってた。だから、一緒に暮らそうって言ったんだ…」


そうだ。私も同じ気持ちだった。だからなんだか、すごくそう言ってくれて嬉しかった。


「昴くん…」


「うん?」


「愛してるよ」


「俺もだよ」


「昴くんと、新しい地球でも生きていきたい」


「愛と光になった地球で、でしょ?」


「うん」


「それまで、まだ少しあるよ。その間は俺ら、ミッションがあるんだよ」


「うん。光で闇を包む…」


「そう。それにはさ、俺ら一緒にいていちゃついてるのが、1番なんだから。ね?」


「うん」


私は、にこって笑ってうなづいた。


その日の夜は、家に兄も戻ってきて、親子みずいらずでご飯を食べた。


「私ね、昴くんと一緒に暮らそうかと思ってるの」


私は唐突に、そう言い出した。でも、父も母も兄も驚かなかった。


「そうか…。籍はいいのか?」


「え?」


「結婚は考えてはいないのか?」


父がそう聞いてきた。


「うん。まだ…」


「そうか…」


父は、うなづいた。そして何も言わずに、お酒をくいっと飲むと、


「ひかりが幸せでいるのが、1番だから…」


と優しいまなざしでそう言ってくれた。母も兄も、反対しなかった。そして、


「さあ、ひかりも飲む?」


とお酒をついでくれた。私もおちょこに一杯だけ、もらって飲んだ。


ひさしぶりの我が家と家族…。ものすごく心があったかくなり、私は幸せをかみしめていた。


低い次元の両親も兄も、私を愛してくれてた。そして私も、家族を愛していた。どんな次元にいても、愛しくて大事な存在だ。感謝の気持ちもいっぱいになり、私は思わず泣いてしまった。


「あら、やだわ、この子ったら泣き上戸なの?」


母は笑ってそう言ったが、目には涙が浮かんでいた。


お風呂に入り、昴くんを呼んでみた。


『ひかり?』


『あのね…。昴くんと一緒に暮らしたいってそう言ってみた』


『ご両親に?』


『うん。そしたらね…』


『うん…』


『思い返すね…』


私はその時の記憶を思い返した。


『そっか…。なんか、嬉しいね。俺まで感動しちゃった』


『うん…』


『あ、そうだ。さっきさ、母さんから電話があって…』


『え?』


『正月に家に帰ってきもしないでって怒られた。で、明日仕事行く前に、顔見せてくる』


『うん』


『ひかりも来ない?』


『え?私?』


『両親に紹介しておきたくて…』


『う、うん』

ちょっと、どきまぎしてしまった。


『あはは、大丈夫だよ。うちの両親だって、ひかりと付き合ってるのは知ってるよ』


『でも、10歳も年上だよ?』


『関係ないよ。そういうことあまり、気にしない親だからっていうかさ、うちも母さんの方が年上だよ?』


『え?そうなの?』


『うん。4歳上だったかな』


『たったの?』


『だけど、年上は上だから、同じだよ』


そうかな…。


『大丈夫だから!じゃ、新宿駅で待ち合わせね。わかった?朝早いよ。8時の電車だよ』


『うん。場所はまた教えて』


『うん。それじゃおやすみ』


『おやすみなさい』


わあ…。いきなり昴くんのご両親に会うことになった。わあ。ドキドキする。


そして、思い出した…。ああ、低い次元では、昴くんのお父さん亡くなったんだ…。昴くんはどんな気持ちなんだろうか…。


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