あなたは正しい日本語を使うことができますか?
「かしこまりました」
最近、よく耳にします。とても美しい日本語ですけれど、以前はそんなに使われていなかったと思います。私見ですがヲタク界隈でメイドや執事の「かしこまりました」が流行った結果、一般に流布したのではないかとニラんでおります。ヲタク文化はあなどれません♪
昨日スーパーへ行ったら、レジに20代と思われる男性のバイト君がいました。
ソウ:(カゴを置きながら)お願いします♪ それから3円の袋を一枚ください♪
バイ:かしこまりました。
おぉ~、お若いのに美しい日本語をお使いで! 君、すごいねぇ~!
バイ:袋はご入用ですか?
ソウ:へ? さっき一枚くださいって言いました……。
バイ:……失礼しました。
もしかして君はマニュアル君なの? さっきわたしが袋をお願いして君が「かしこまりました」って言ったから、わざわざ聞く必要ないよね? マニュアル通りにやりたいタイプなの??
首をひねりながら会計を終えて袋に品を詰めようとしたら、やわらかいパンの上に玉ねぎ(大・3個)が乗って、パンが凹んでた! カゴの中はスカスカやぞ! なんでわざわざフワフワパンの上に重い玉ねぎを置くんだ!? あえて置く意味がわからん! 「かしこまりました」なんて大仰な言葉は使わなくていいから、基本的なことをしてくれ! かしこまられても、これじゃ困る!!
いっしょにいた彼氏さんも「どうしてでしょうね? 彼になにがあったのでしょうね?」そう不思議がっています。わたしは心が狭いのですぐ怒るのですけれど、彼は心が広いので不思議がる程度です。尊敬します☆
彼の尊敬すべきところは、他にもたくさんあります。彼は僧侶です。彼とお付き合いするまで僧侶といえば「坊主丸もうけ、やらずぼったくり」というイメージでした。坊主は楽して儲けてると思ってた。ところが付き合いだしてみたら、ぜんぜん違った! 仏教の歴史や法要、お作法の知識を深めるために、ものすごい量のお勉強をなさっている! 全国各地で開かれる講習会や研修会へ自費で出かけていって、おうちでもリモートで勉強している! (下世話な話ですけれど、受講しても手当は発生しません。彼のもうけはゼロです。それどころか交通費や滞在費は自腹なのでマイナスです)やらない方はやらないらしいですけれど、彼はものすごくやるタイプです! どうしてそんなにお勉強するのか聞いてみると「自分が理解していないと教えられないから」そう言われました。ご自身が理解するだけでなく、人様に教えるのを前提に勉強しているらしい……。なんつーか、目標が高いな……。すげぇ……!
彼に聞けばお経の意味や、梵字なども教えてもらえます。仏教辞典と付き合っているようなもんです。ものすごく有益な情報を教えてもらえるのはわかっているのですけれど、ぜんぜん活用できません。なぜならわたしはアホなので、何を聞いたらいいかわからない。もったいないなぁ~!
そんな彼を見て僧侶の良くないイメージは誤解だったと反省していた矢先、福岡県に住む実母から電話がかかってきました。いつもご機嫌さんな母なのに、珍しくプンプンしています。
母親:マチちゃん聞いて!
ソウ:どうなさいましたか?
母親:今度パパの十五回忌があるから、お寺さんへ行ったんよ!
ソウ:もう十五年もたちますか? 時間がたつのは早いですねぇ!
母親:お寺さんから「今年は十五回忌です。法要の前にお寺へ来てください」ってハガキが来たんよ。やけん行ってみたら最初に「お布施は最低〇〇万円ですから、それ以上の金額を包んでください」やって!(怒)
ソウ:いきなり金額を言われるのは、生々しいですねぇ……。
母親:それだけじゃないとよ! 本堂にある大きなおおきな花瓶を2つを指して「この花瓶に花を活けます。お花は寺が契約しているお店で注文してください」とか「日本酒は一升瓶で最低〇〇本持ってきてください」そんなことばっかり言われたとよ!
ソウ:お花屋さんと契約してると、お寺へ報酬があるらしいですよ。使ったお花はお花屋さんへ戻して、お礼がもらえたらお寺さんはウハウハですねぇ……。(余談ですが、彼のお寺は契約していません)
母親:ほかにもあるとよ! お菓子を持ってこいだの、盛り籠を持ってこいだの、果物を供えろだの! 「すべて故人の方へのお供えです」って言われたけど、けっきょくお寺さんが受け取るんやろ!? パパは日本酒は飲まんし、果物なんて食べんかったのに、なんでお供えせんといけんの!?
ソウ:まぁ、まぁ。納得いかない気持ちはわかりますけれど、パパへの供養と思って穏便にお願いします。
なんとか母親をなだめて電話を終えました。あとで彼に話すと驚いていたので、やはり一般的なことではないらしい……。そして数週間後、激怒した母親から電話がありました!
母親:もうこりごりばい! 二度と頼まんけんね!
ソウ:まぁまぁ、落ち着いてください。どうなさいましたか?
母親:マチちゃんに言われたから、法事は穏便に済ますつもりやったんよ! 言われた通りにお金を包んでお供えを準備したとよ!
ソウ:それはお疲れ様でございました。
母親:重たい荷物を抱えて当日お寺へ行ったら、住職じゃなくて副住職が出てきた! 住職の車はあったから、ぜったいいるのに一度も出てこんかった!
ソウ:ご住職も決まったお休みが必要でしょうし、お身体の調子が思わしくなかったのかも……。
母親:それだけでも腹が立つのに、副住職はダラダラした態度でずっと咳ばっかりして、ぜんぜんお経が読めんとよ! あんなんで〇〇万円の価値はない! ぼったくられた!
ソウ:支払った金額に見合うサービスは欲しかったですねぇ……。
母親:来年はおばあちゃんの十五回忌やけど、もう寺に頼まん!
ソウ:お寺さんに頼まなくて、どうなさるのですか?
母親:わたしが法事をする!
ソウ:ええええええ!?
そして1年が経過して、法事の日が近くなってきました。いくらなんでも母親が自分で法事をするというのは……。心配になって聞いてみると、本気で自分でやるつもりらしい。家の仏壇の前にお供え物を並べて、自分でお経を読むらしい……。ふだん彼の勉強する姿をそばで見ているので、得度もしていない母がそれをやるのは、ちがうと思う。でも言い出したら聞かない母だし……。わたしは遠くて行けないし、お金を出すわけでもないから口を出すのは筋がちがうが……。でも……。
ソウ:僧侶の資格も持ってないお母さんが法要をするのは、ちょっとちがう気がするのですけれど……。
母親:あんなお寺に頼みたくないばい! 自分でする! それにお経を読むくらい、わたしだってできる!
カチンときました。彼氏さんはありがたいお経を、ひいては仏の教えを広めるために、日々すごく努力しています。お経を理解するため梵字やサンスクリット語(っていうのですか? わたしはイマイチわかっていませんけれど、インド方面の言語)を勉強し、漢文を学び、先人の教えを紐解いて理解しようと努め、上人たちの軌跡を辿ってその苦難の道に思いを馳せ、正しい仏教を後の世に遺すため法要や作法なども一生懸命に学んでいる。母がその苦労を知らないとはいえ「お経を読むくらい」ってカンタンに言うのは、どうよ?
ソウ:お母さんの気持ちはわかるけど、そんなに簡単なことじゃないと思いますよ。それに追善供養と言って、生きている者が故人のために供養をすると、故人の罪が軽くなるといいます。もし法事をすることでおばあちゃんがお浄土へ行けるのなら、してあげたほうが良いと思うのですけれど……。
母親:はっ!(←鼻で笑った) 天国なんてないよ!
ソウ:はぁ?(怒。じゃあ彼氏さんが一生懸命にやってることは、なんなんだ?)
母親:死んだら無になるんよ! 天国も地獄もぜんぶウソばい!
ソウ:おい、お前、ちょっと待て。その言いぐさはなんや?
母親:パパが死んでから、一回だって夢に出てこん! パパは死んで無になったんよ!
父はわたしの夢にちょくちょく出てきます。父親はわたしを溺愛していたので、いまでもそばにいたいらしい。夢の中で父親は、何をするでもなくわたしの近くでテレビを見たり、新聞を読んでいます。早く生まれ変われよと思うのですけれど、わたしが気になって生まれ変われないのでしょうか? それにダラダラするのが大好きな父でしたから、死後の世界で働かずにダラダラできるとしたら、父にとって天国だと思う。そりゃあ、生まれ変わりたくないよなぁ……なんて言うと話がゴチャゴチャになるので、ここは黙っておこう。
母親:だから法事なんてするだけムダ! あんなのにン十万円も払えん!
ソウ:そうは言ってもお母さんは死んだことがないやろう? もし死んで浄土とか地獄があったらどうするん? 死んでから「供養してもらえば浄土に行けたのに!」ってことになったら困るやろう?
母親:ないない! 天国も地獄もぜんぶウソばい! そんなものないし、神も仏も全部ウソばい!!
彼氏さんの苦労を全否定しやがった! 彼の苦労だけでなく、宗教までも全否定! わたしは特定の宗教を信じているわけではありませんけれど、神や仏はいると信じています! 人には想像もつかない大きな力で、人を守ってくれる存在を信じている! それを全否定とは! ふざけんな! どんだけ驕り高ぶってんだ!? お前、いったい何様なんだっっ!? どんだけ偉いと思ってんだっっ!?
ソウ:お前、ふざけんなよ!
母親:死んだら無になるだけばい! なんも残らん!
ソウ:お前なんか、お前なんか………………、
地獄へ堕ちろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!(絶叫)
罵倒の意味で使われる「しね」「ころす」などの慣用句とともに「地獄へ堕ちろ」という言葉がありますけれど、こんなに適切な状況とタイミングでこの言葉を使うとは思わなかった! まさに「言い得て妙」です!! まさに正しい日本語! 罵倒するだけでなく、本気で地獄へ堕ちてほしいという気持ちをきっちり表現している!! 母が死んで地獄へ堕ちて「なんてこったい! 本当に地獄があった! ちゃんと法事をしとけばよかった!」そう思って、死ぬほど(すでに死んでるけど)後悔するがいい!!
この電話をしたのが1年くらい前かなぁ? それとも2年くらいたつのかなぁ? 以後は一度も話していません。普段からクレイジーな言動が多い母でしたけれど、ずっと我慢していました。育ててくれた恩もあるし、理路整然と責めて母を凹ませるのもかわいそうなので、ずっと我慢していた。けれどこの一件は理論でなく、気持ちで許せませんでした。いくら彼の苦労を知らないとは言え真面目に信心している彼を全否定して、お経なんて自分で読めると言い切った高慢さが許せなかった。
産んで育ててくれた母親に「地獄へ堕ちろ」と言うのはアレだと自覚はあるのですけれど、後悔はしておりません。同じ場面に戻ったとしても、同じセリフを繰り返すと思います。いや、繰り返すだけじゃないな「しね」くらいは足すだろうな……。
親子だから仲良くとか、親子だから縁は切れないというのはわかるのですけれど、
すみません。急に思い出しました。「親子だから縁は切れない」についてマメ知識です。市役所に勤務していた頃、わりとひんぱんに「法的に親子の縁を切りたい」というお尋ねがありました。わりと多いです。繰り返します。親子の縁を切りたい方は、わりと多いです。多いですけれど法的な側面から申し上げますと「不可能」です。義理の親子(婚姻等で親子になった)であれば「わたしたち、縁は切れてますよね? 法的な義務や権利はない他人ですよね?」というのがある(すみません。正式名称は忘れました。そういう手続きがあって、書類を書いて提出すれば認められます。レアな手続きなので職員でも知らない人がいますけれど、実在します。※ ご感想欄で幻邏さんがご教示くださってので、急ぎ加筆します「姻族関係終了届」です)のですけれど、実の親子が法的に縁を切るのは、今の日本の法律ではできないそうです。裏ワザや抜け道があるのかもしれませんけれど、そういうのは知らないです。
閑話休題。
親子だから仲良く、親子の縁は切れないから穏便に……言ってることはごもっともですけれど、実の親子だからってムリなものはムリです。仲良くしたい気持ちがあるから我慢していましたけれど、限界を超えたのでムリでした。冷たいかもしれませんけれど、ムリなものはムリです。そしてお付き合いのない今は、すごく楽です。我慢する必要もないし、平和に暮らしております。
今日の結論:親子だからといって、仲良くするのは無理な場合もある。
ご自身の親子関係で悩んでいる方がいらしたら、ぜひご参考になさってください。ムリなものは、ムリです。