人生を売った報酬を手に入れて
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金が振り込まれていた。通帳には今までバイトをして貯めたというべきか、貯まっていたというか。とにかく、230,000と書かれていた数字に、500,000,000という数が足されていた。
この先、僕が汗水たらして、人に馬鹿にされながら働いても決して手に入れることのできない金が、いとも簡単に手に入った。
こうして見たこともないような数字が記載された通帳を眺めていると、世の中はやっぱり金なんだと思う。人生において一番大切なのは金だ。金が一番じゃないというやつらは、いつも一緒。既に金を持っている奴らだ。親もそうだ。結局金があるから、偉そうなことが言える。金を持っていなかった時のことを忘れているに違いない。
過去は時間が経つにつれて美化されていく、それが世の常だ。だからこそほんの数日前まで金がない状態だった僕が高らかに宣言しよう。金は人生の中で最も大切なものであると。
さて、これからどうしよう。意気揚々と考えていたら電話が机の上で震えているのに気が付いた。
「もしもし、Ahtylでございます」
その声は、売買が成立した時に横にいた担当者のものだった。
「はい、なんでしょうか」
うざい。もう関わりたくないんだよ。何も考えたくないんだよ。
「本日、お客様の口座に、お客様が売却された人生の代金が振り込まれていたと思います。それに伴いまして、今日から一週間以内に、お店に来ていただいて、確認のための書類にサインしてもらう必要があります」
確かにあの日、そんなことを言っていたような。どうでもいいのに。あと一年でいなくなる人間に対しても書類が必要になるなんて、本当にめんどくさいんだな、生きるのって。
「分かりました。いつ頃空いてますか」
「はい、営業時間は朝の九時から夕方の五時までとなっておりまして、その時間の間ならいつでも、ご都合の良い時に来ていただいて構いません」
「分かりました」
「ありがとうございます。ではお忙しいところとは思いますが、何卒宜しくお願い致します。」
「はい」
電話はこっちから切った。
「何がはい、だよ。なにも忙しくなんかないだろ」
自嘲気味に笑い、椅子に座ったまま首を後ろに折って、真っ白な天井を眺めた。
あっ、あそこ汚れてる。
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